鎖に繋がれて 11
やっとこジノザキ仲直りして、チュッチュしながらおしまいです。と言いつつ、エピローグ的な話もチラチラUP予定です。よろしければそちらも。ザッキー無双!ってやってたらなんだかどうにも……一応ジノザキですよ?
辺境
なるほど。ジーノは思う。
捻じ曲がってしまった、グルグルグルグル輪となる人生。ジーノはこれまで、ずっとこの堂々巡りの世界から自分は抜け出したがっているのだと思っていた。でも今、なんだ違ったのか、と虚ろに思う。出て行きたかったわけじゃない。自分はこの不毛な地への、生贄をずっと欲していたのだ。
そうか自分は、この惨めで、憐れで、苦しいだけの何もない辺境のような世界に、誰か、誰かと、いつも、ずっと、そんな思いで彷徨い続けて。その馬鹿馬鹿しさに厭きれるジーノは、今一度自分の行為を振り返る。目的を喪失して行為の愉悦に埋没した今、喪失したその、見えなくなった、その原点に立ち返る。
そもそも、孤独を癒す、いわゆる歓迎会なんかでは……
そう、これは、二人の、盛大な、お別れ会
そろそろお開き。仕上げの時間。ジーノは一度時計を見ては、静かに一つ深呼吸。遊びが過ぎた。寄り道おしまい。少し笑う。
麻痺したジーノの心は今その傷の重さも厭わぬままに淡々と、やると決めたやるべきことをやり遂げることだけ考えていた。
* * *
ジーノは、貞操観念と倫理観を破壊されたキミが泣きながら男達の固いそれを求め縋る未来が楽しみだと語る。もうそれはキミであってキミでない。追っていたキミの愛であるはずのものが偽物と知り、その正体が醜い肉欲の退廃であることに気付いて、穢れ薄汚れ、キミは今、本当の意味で純潔を失ったのだと大いに笑う。欲していたのが心でなく、空いた体を埋める肉そのものであったという事実を、キミは今どう受け止める?と詰問する。そして、その陰で
これで二度とキミはボクを追えない
そんな風に心は悲痛に。人知れず、自分が意志を持ってズタズタに切り裂いた、見えない赤崎の心の傷にそっと幻のキスをする。崩壊した心の奥底、自身の自覚のないままに、これ以上ない思いを込めながら赤崎を見つめている。
キミを傷つけるボクの醜悪にもっともっとショックを受けて欲しい。繊細なキミの心とキミの大事な優しい王子の夢を、こうして見る影もなく粉砕するボクを、憎み、恨んで、泣いて、激怒して。とんだペテン師のペテンに乗せられてしまったと、王子の夢も、今のこの残虐な本当のボクも、全部否定して、削除して。そうして、今あるそのキミの悲喜こもごもな思いの全てを更地に返して再生を。壊れた夢に傷つくよりも、夢が幻であったその錯覚の事実をよく知って、そうしてまたキミはキミらしく、再び真っ直ぐ世界のあの中央を目指して欲しい。ボクの与えた裏切りと喪失に囚われることなく、キミは前へ、前へ、中心に輝く未来の、誰も見たことすらないその先の先へ。
そんな風に、光を失ったジーノの虚ろなその目がじっと、精で汚れた赤崎の裸体を見下ろしている。
どうか、どうか、幸せに、ザッキー
そうしてすぐにでもこの痛みの全てを忘れ癒されるような
そんな素晴らしい素敵な恋に巡り合えますように
ジーノは知っていた。赤崎ならきっと大丈夫だと。可愛い飼い犬の心は本当に健やかで強靭で、自分が悪意を以ってどれだけ穢そうと試みても、一切その輝きを失うことなどない。彼とボクの世界は別世界、仲間たりうるわけもない。そのことだけは確かだと、そう確信した上での行動だった。
自分の持つこの残虐の牙、抉る様に噛みつき殺そうとした相手が、強靭でしなやかな心を持つキミで本当に良かったとジーノは思う。赤崎が痛むのは一瞬だけ。己の牙など屁でもない。繋ぎとめた鎖を外し、無理に曲げた道を戻して、再び元の世界に帰るだけ。出会った前に戻るだけ。
そうなのだ。つけた傷をこの先抱え、引き摺りながら生きていくのは自分のほう。この世界から姿を消して、この2年の記憶を残して一生その傷に苛まれるのは自分だけでいい。そんな風にジーノは思う。
キミが心からボクを好いてくれていたことは、
紛れもなく、汚らしいこのボクの、自分を誇れる唯一の……
嘘でも、幻でも、楽しかったよ
終わるなら始まらなきゃよかったなんて、
今のボクは思わない
そうして、己がつけた赤崎の傷を、そっと包み込んで癒す様な祈りを込めてもう一度。誰にも見えない惜別のキスをひっそりと赤崎の心にもう一度。
今度こそ、やっと、ちゃんと出来た。ジーノは今、自身のもつ醜さのありったけをぶつけることで完全に縁が切れたと満足していた。本当はこんなことをしてしまっては自分が死んでしまうのではないか、耐えられないのではないかと思ってた。でも死んでも大丈夫だった。耐えられなかったけれど大丈夫だった。そう思った。
想定以上に自分は汚れていたけれど、それなら尚更良かった話。可愛い飼い犬は己の間違いに気付いて違う道を歩き始める。愚かな飼い主に見切りをつけて、間違いなくもう二度と振り向くこともない。
不思議となんの喪失も、空虚もそこにはなかった。大丈夫、平気、ザッキーなら。こんなにも今、あの子のその背が頼もしい。今度こそ本当に、ジーノは心の底から満足だった。これが何度も何度も思いながらも失敗し続けてきた、本当に可愛いあの子にやりたかったことだったから。
つまり、やっと自分を追うあの子の足を折るのと同時に、あの子の崩壊を求め続ける自身の呪いのこの腕を、いっそ根元からバッサリと切り落としてしまいたかった。ずっとずっと、何度も何度も躊躇しながら、そんなことをやりたかった。そして今、ようやくそれがやれたのだ。
惹き合う手足を失ってようやく、ボク達は
結局、こうでもしないと自分達は駄目だった……ってことだね
繋がりあいたい不幸な縁。
切れたことに未練はない。
……つもりだった。
