お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

*

鎖に繋がれて 11

やっとこジノザキ仲直りして、チュッチュしながらおしまいです。と言いつつ、エピローグ的な話もチラチラUP予定です。よろしければそちらも。ザッキー無双!ってやってたらなんだかどうにも……一応ジノザキですよ?

必然

「愛してる、王子……ねぇ、早く」
「駄目、だよ……」
「あんたの手からは愛しか感じられない……ホントだ、俺が一番よく知ってる」
「聞きたくない、これ以上。キミは錯覚を続けたいだけなんだ、もう目が覚めたはずなのに!」
「違う!あんたのわかってないことを知ってるんだ。王子、オレは知ってる」

 星降るキスに力づくで引き寄せられて、フラフラとジーノの体がベッドの中へと。そして熱を帯びたままのその人形の体はあっという間に赤崎に組み伏せられる。悲しい、悲しい、情けない顔を晒し、哀願するように赤崎に言う。

「それなら……ボクを思うなら、ボクを理解してくれるなら、じゃあボクのために、もうやめてよ、こんなの嫌だ……苦しくて、本当に……凄く辛いんだ……だから、お願い、お願いだから……もう勘弁して、ザッキー……やめ……」

 ようやくだ王子。赤崎は思う。

「こんな……抱くなんて、嫌……もう、限界……本当に……あぁッ、したくな……これ以上キミのこと……」
「うん、俺のことを?」
「ザッキー……ザッキー、お願い、もうすぐにでもボクは……キミを殺……、死ん……だから、だから、もう、お願い、お願い……ザッキー、」

――嫌だ、助け、て、ザッキー、助けて……!

 今ジーノが初めて自分自身の苦しみのために、助けてくれと赤崎に。赤崎はずっとこの言葉が聞きたかった。この人の苦しみ、そして叫び。自分が気持ちのけりをつけるために、この一言を長い間ずっとずっと求めていた。引き寄せる腕で引き剥がしにかかる男の悲鳴を、その理由を、いつも、いつも、この耳で実際にキチンと聞いてみたくて。

 でも今、赤崎が求める最もジーノから聞きたい一言はこれではなかった。だって、こんなにももう二人の体が惹き合ってしまっている。ジーノの虚ろだったその目は殺す、嫌だ、と言いながらウルウルと官能に潤み、燃える様な獰猛の肉欲の先にはっきりと――――のそれが見え隠れ。
 だから。そのやめろと助けを乞う言葉の奥にあるものを引き摺り出して、言葉にさせる。そしてその奥の、先の先。もっと向こうの彼の秘密を彼自身の口から、全部全部、吐き出させてやる。ジーノの苦しみ、その辛さ、心に積もった汚泥の全てを、からっぽになるまで自分は全部かっさらう。今、行く、とそんな気持ちで。

「俺にも、もっと愛させてよ、王子。あんたがするように、俺もあんたを愛したい」
「違……駄目……」
「一人でどっかにいかないで一緒にいさせてよ。どこでもいい、ちゃんとついていく。それだけでいいんだ。俺、あんたがいれば他になんにもいらない」
「ザッキー……」
「さっきまであんたにサッカーを取り戻して欲しいって思ってた。けど……そんなことも、もう、いい」
「……」
「あんた一生懸命、愛してくれた。だからもう、そんなことも心底どうでもよくなった」
「あぁ……キミは、なんで?……してくれた?……そうじゃない、でしょう?ボクがキミにしたのは、そんな、違う、キミにしたのは酷い事だ、ボクは……」
「俺を思って、心から……それをしたんだ。あんたは辛かったのに、やりたくなかったのに、何度もそう言ったのに、俺が我儘言うからあんなに……沢山……してくれた。そうでしょう?やだったよね?今みたいに苦しくて苦しくて、そうだろ?王子?でも、あんたはそれをしたんだ」
「……言ったじゃないか、ボクは残酷を……やりた、くて……、キミを、貶めたくて……仕方、が……なかった、んだ、ずっと、ずっと……」
「王子、あんたは、やりたくないんだよ。でも、あんたの中には沢山の澱が……可哀想なくらい溜まってて。それが時々……あんたを、そんな風に……でも、もう……いつかきっと……もうそんなの必要なくなって、やらずに済むように、俺が絶対、……そうさせてやるから、信じて」
「あぁ、ザッキーもう触らな……もう……」
「言ったろ?好きに、すればいいんだ、気が済むまで。最後の最後まで付き合ってやるから、ねぇ……王子?やって、今みたいにまた辛くて……苦しくなるなら、それにも、ずっと……付き合ってやるから。まだまだ、苦しくて……苦しくて、全然足りないだろ?だからッ……!もっとだよ、王子、もっと」
「……わからない、言ってる意味が、ザッキー、そんな……ボクは」
「うん、いいよ王子そのまま……なんも考えないでいい。苦しくって、辛いなら、今みたいに苦しくて辛いって、それだけ……知って、言って、吐き出せばいい。なんでなんて、考えないで、言いたいこと、言いたいだけ言えばいい」
「苦しい、もう、嫌なんだ……こういうの……ザッキー、嫌だ……嫌だ……」
「うん、王子」
「もう、一歩も動けない……だから、ザッキーお願い……助けて、もう……嫌、嫌なんだ、ザッキー、どいて、お願い」
「うん、絶対助けるよ、王子。そうだよな、あんたはもうヘトヘトで……ねぇ、もう動けなくって、本当に……苦しいんだ。そうだろ?」
「苦しい……なんにも、もうボクは……王子じゃ、貴公子じゃ……そうだよ、もう……ボクはなんにも出来な……なんにも……だから、わかって」
「王子、ねぇ、聞いて?王子……苦しいなら今は俺はもうそれでもいいと思うんだよ。なんも出来なくってもそんでもいいかな、って」
「……」
「ずっと……苦しくって、苦しくって……そんなにも苦しくって。あんたはもう蹴ることすら出来なくなっちゃって」
「う……」
「そんでも。あんたがもうなんも出来ない人になっても、俺はそんでもいいから一緒に居させてよ」

 言葉すら失って、今ふるふると首を振るのはジーノになっていた。

「一番辛いのは王子なんだから、もうサッカーに触れることすらってあんたが言うなら、それなら俺もサッカーも家族も友達も全部捨てて、そんであんたについてくよ?のんびり二人、なんもないところで。終わらないバカンスみたいに。あんたそういうことしたいって前言ってたじゃん」
「そんなの駄目に……」
「駄目なら駄目で、それだっていいんだ、一緒なら。そう思わない?」
「ッ……」
「だからもう、なんにも考えないでいい。だろ?王子?必要なモノなんて、他になんにも、ねぇ?王子。ずっと一緒だ。もうわかった俺。あんただけでいい、もう俺それだけで。好きなんだ。だから、考えないで、何も……全部さ?からっぽになってよ、王子」

 そう言って、震えてちっともうまく動かない不器用な手で必死でジーノの羽織るバスローブを大きくはだけさせ、ぎくしゃくとしながら剥いでいく。体に残る快楽と苦痛と、ジーノを思う愛情と悲しみと、そういうものを全部ないまぜにした涙を目からドンドン溢れさせて、一心不乱になってジーノの心と体を求め続けた。

 嘗て赤崎は、今まで一度もサッカーを失う事など考えたこともないと笑っていた。よぼよぼのジジイになっても足が萎えても、生きている限りそれは自分の半身のように、当たり前に傍にあるものだと断言した。その情熱の力強さをジーノは愛し、自分も胸を張ってそう言える人間になりたいと願い続けていた。それが今。

 何をも顧みないと言う重い言葉。稀有なまでの熱いサッカーへの心を持つ男の、それを上回る重い情熱。誰が口にしたとしても、これほどまで重い愛を、ジーノに感じさせはしなかった。赤崎だからこそ。誰よりも美しい心根の持ち主の真摯な言葉だからこそ。
 まさしく命すら投げ出す無謀な心のままに、ジーノに愛を語る人間は他に誰もいなかった。それが出来るのは、それが正しくジーノの心を打つことが可能だったのは、この世で赤崎の他には誰もいはしなかった。ジーノが骨身を削る様に愛した、この男しか。

   *  *  *

 自身が現実から逃げ出すかのように大量に摂取したアルコールと、赤崎の甘い甘い吐息とキスと、繰り返しの“愛してる”と“考えないで”の言葉のせいで、いつの間にか暗示にかかったかのようにジーノは本当に何も考えられないように成り始めていた。

 赤崎はジーノに、自分には絶対に逆らえはしないと言い放つ。絶対に俺を抱くと、しがみついている。

 どれだけ否定しても拒絶しても、彼には全くそんなもの通用しなくて、何をどう答えても真っ直ぐで真摯な愛しか跳ね返ってこなくて、繰り返しても、繰り返しても、赤崎はほんの少しでさえぶれたり一貫性を失ったりなどしなかった。

 ウサギのように小さく見えていた男は今、雄々しい一人の成人男性として、そうしていつまでも本当に何ひとつ変ることなく、ずっとジーノに愛を囁き、無骨に愛撫のようなものを繰り返す。

「あんとき、俺のために引き受けてくれたよな?だから、今度は俺があんたの罪を全部引き受ける。あんたがからっぽになるために」
「な……んで……」
「あんたが俺を好きなように、俺があんたを好きだからだよ、王子」
「ちが……」
「好きだから欲しいんだ王子。どうしようもなく好きだから。俺あんたみたいに上手く言えねぇけど……もう、あんた守らなくていい。あんたがかわりに汚れるなんてことはもう……だからいいんだ俺を思う存分汚せばいい。淫乱で、倒錯的なことが大好きな色狂いの俺だから、なぁ、もう全部あんたはそれを知ってるっていうんなら気にする必要もない。それが本質なら、ああ、そっかってだけで。なぁ、王子、今度は俺にくれよ、あんたの全部」
「……」
「あんたはあの日、あんなに俺を。欲しかったんだろ?どうしようもなく俺のこと、欲しくて欲しくて……全部欲しくて……罪も、汚れも、醜さも何もかも欲しいって、そんな風に。ねぇ、そういうのって、当たり前のことだよな?好きなら。王子、違う?そういう気付かないままに汚れてる俺がよかったんだって、あんたさっき俺に言ってくれた。最初っからあんたは俺の全部を、駄目なとこも丸ごと全部受け入れてくれてたんだ」

 ジーノはそれに身を任せているうちに、あらゆる思考が止まっていく。その中で次第に性的な快楽とは全く別の喜びに包まれ始めていた。

「ならわかるだろ?俺今、どうしようもなく、あんたが欲しいんだ。全部だよ?」

 赤崎への抑えきれない本能的な愛が、見ないで蓋した心の片隅からドンドン止めどもなく溢れ出てきて、もう何もかもそれ以外見えなくなり始めていた。

「好きなら別れるって、なんだよそれ。変だよ」

 一枚、一枚と、赤崎の真摯がジーノの何重も重ねた鎧をかいくぐり、あと少し、もう少しと、届くその瞬間の為に必死になって手を伸ばしてくる。

「俺、難しい事よくわかんねぇし……好きならやっぱ一緒がいい。それが普通じゃないのか?王子?」

 自分の言う本気の意味を、本当に伝えたいその思いをわかってもらうために、際限なく、その、彩のない不器用で、しかし真摯な言葉を重ね続ける。鋭く、深く、そしてその意志に比例するその強さで。

「一緒なら、そんでいい。俺がいないとあんたは生きていけない。だろ?俺もだ王子。離れられないんだよ、どうしようもなく。だから俺はあんたに何されても絶対死なないし……もし勢い余ってあんたが俺を殺すなら……あんたのことだから、やっぱ一緒にきてくれるんだ。そうだろ?多分。ならもう、そんでいいんじゃね?別に何の問題も。一緒にいられるなら、なんにもいらない。サッカーも、未来も、命も、なんにも、ねぇ?王子?」

 悪い遊びでまだ体に異常の残る赤崎を抱けば彼がどうなるか、そんなことをして自分も彼もどれだけ痛ましい思いをしなければならないか。いつしか、そんな配慮も思いも何もかも全て消え果てて、ただただ真っ白に何もない世界に二人、一人ではないとそんな思いばかりが幾重にも二人のその身を包んでいく。

「あんたが欲しい。全部。それが手に入るんだったらなんも怖くねぇよ俺……だからどこまでもついてく。本気なんだ、わかってくれよ!」

「王子は!?ねぇ、そんでも、そんでも俺の事いらないって言うの?」

「ねぇ!王子!!いらないって!?そんなの、俺、そんなの言われたらもう絶対生きていけな……」

 気が付くとそれが、あたかも必然であるかのように。

 孤独なジーノの心がパリンと割れて、自ら赤崎の心を追い求めて駆け寄るように。

 いつの間にかジーノは渾身の力を込めて、目の前にいる男の体を抱き寄せていた。