鎖を解いて 2 【2部完】
おかえりなさい ちょっとした抱擁を終えて、二人立ち上がり談笑していると、チーム …
おかえりなさい
ちょっとした抱擁を終えて、二人立ち上がり談笑していると、チームメイトが続々とやってきた。
「あ!王子!?お久しぶりです、あの!先週負けちゃって……俺、あのッ」
「やあバッキー、留守してゴメンね?ボク試合見てなかったんだけど、大変だった?」
「実は……ハーフタイム、喧嘩になっちゃって……監督は喧嘩してでも摺合せすればいいとか言うんだけど、俺はどうしていのかわかんなくて、オロオロしちゃって」
「フフフ、わかるよ。キミが困ってたろうってこと。大変だったね」
ジーノは話をしていて、自分と似たような心の動きをしている椿が愛おしく感じた。自分がどうしようもない不安の中にいた時、椿もまた不安な日々を過ごしていたから。
不思議な心理の波の一致を見ながら、験担ぎかもしれないけれど彼のためにもボクももっと安定しなきゃな、などと考えた。
「よかった、なんか王子が来てくれたらほっとします。バカンス楽しかったですか?」
「まぁ、そこそこね。今回もお土産ないけど。ごめんね?また今度」
「いえ、そんな!王子がいるだけで頼もしいんで」
何も知らずに素直に帰りを喜んでくれている椿の存在はジーノにとってはある種の救いで、なにもかも知った上で連れ戻した赤崎の存在もまた救いそのものであった。
椿がバタバタと着替えはじめる姿に目を細めていると、ジーノは赤崎の目線を感じた。優しく笑って赤崎の頭を労わるように撫でた。ちょっとした赤崎のヤキモチを感じて、申し訳ない事にそれがまた可愛いなんて思ってしまったので。
* * *
「おいテメェ!こんな時にどこ行ってたんだよ!次の試合明後日だぞ!間に合わねぇだろうが!」
「にぎやかだねぇ、クロエ。休み明けにそのテンションはさすがのボクもちょっときついよ」
「なんだと!?この前負けたし、ボヤボヤのん気してっとまた残留争い地獄になんだよ!ちゃんとしろや!」
「ボクはこれ以上ないくらいにちゃんとしてるよ?色々やり残した宿題を進めてるところだしね。みんなは一体なにしてたの?ボクいないと勝てないとかそういうのは駄目だよ。精進が足りないんじゃないかい?」
「こいつ!!」
「まあまあ、その辺にしとけ。お前痩せたな、やっぱ。大丈夫か?」
「フフフ、コッシー優しいね。ちょっと今日試してみないとわからないけれど多分大丈夫だよ」
「そうか、ならよかった。最近調子悪そうだったから。元気出たならいい」
「……そう?……なんかゴメンね?」
「お前そういうの指摘されるの嫌だろうから黙ってたけどな。どうせバカンスだとか言って、体調でも崩してたんだろ?」
「……」
「ま、お前は調子落として大人しくしてるより、多少軽口叩いてるくらいのほうが丁度いいから」
「……ありがとう、コッシーそんな風に思ってくれてたんだ?」
「だから多少だぞ?あんま調子に乗ってやり過ぎるのは論外だ!」
「フフフ、どうかなぁ?」
「おい!」
ジーノの不穏な目線に黒田がまたジーノに噛みつきにかかろうとしているので、杉江がそれに割って入る。
「あれでクロも随分待ってたんだよ。お前が戻ってきてみんなホッとしてる」
「そう?」
「ホッとなんかしてねぇぞ!?てか、大体がこいつのは完全に職場放棄だろうが!論点が違う!土産一つ買ってこねぇでよ!」
「おや、お土産なくて機嫌損ねてたのか。ちっちゃい男だね」
「背の話はすんなよ!」
「別に背の話なんかしてないけど」
「って、なんだテメェ!ど……どこ見てんだよ!ああ?!」
ここにいるだけでかわるがわる話しかけてくるチームメイト達。自ら逃げ出して、すでに失われたと思っていた自分の居場所。ジーノは戻ってこれたと思ったと同時に、いや、今まで自分はここにいながら全くここにはいなかったのだ、とそんなことにふと気が付いた。人の心が、自分への暖かいその目線が、今確かに自分を包む。独りの気がしていた。でも、ちっとも独りではなかったのだ最初から。
赤崎にこじ開けられた、閉じ切る心の鎧の穴を見つめる。この鎧はなんのための?何を守るために?
熱風を吹き込む風穴が、こうしてたわいない会話を繰り返しているだけでドンドン心の風通しを良くしていく。染み透る。ジーノは、ようやく今初めてこのチームの一員になれたような気さえした。
嬉しかった。
