お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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絆に結ばれて 1

渾身のイチャ甘ジノザキになる予定。「仲良く遊ぼう」はゲス顔で書いた「沢山遊ぼう」と対。ジーノ長いトンネルを抜けた結果、中からぴょこんと子供が出てきてしまいますが、心を痛めた人は回復期に悪化→赤ちゃん返りすることがあるそうで一応それを踏襲しています。ジーノの回復とザッキーの成長はまだ始まったばかりです。

一緒に眠るという事

 それを初めて見た時、確かに俺は面食らった。王子が独り寝に固執する理由がこんなところにあるだなんて。

「落ち着いてください王子、王子」
「う……」
「ベッド、戻りましょう。歩けますか?怪我とかしてませんか?」
「……」

 床に落ちた王子をベッドに誘導しながら見ると、その目はぼんやりながら開いていたのだが、それでも、全く意識はないように見えた。

   *  *  *

 俺が夜中に起きたこの事象について彼の口から説明を受けたのは、就寝前の戯れの時間のことだった。

「おやすみザッキー」
「はい」

 キスをして、抱き合いながら眠る。今日は二人とても疲れていて、でもその疲労が心地よく、いつもより少し早いこの就寝を微笑みながら迎えていた。

「王子?」

 何か言いたげなその姿に俺が問うと、彼はポツリとこう言った。

「その……今日は、ここで……眠っちゃってもいいかな、一緒に」

 たどたどしい口ぶりでそれを伝える王子に、その緊張と照れが簡単に伝播して、俺は思わず声を荒げる。

「あ……あんた、今更……何言ってんですか!当たり前でしょ?」
「でも……」
「でもじゃなくて」
「ホント?いいの?」
「いいに決まってるでしょう?あんたのベッドなんですよ?」
「だって、ちょっと迷惑かけちゃうかもだから……」

 同衾するようになって1年。目覚める俺の隣に王子がいなかったのは、彼の目覚めが早いものだからだと思っていた。だが、今、彼の説明を聞きながら、実は彼が一切このベッドで一緒に眠っていなかったのだという事実を知り仰天する。本当に寝耳に水の、今更の話。

「たかがそんなことで?馬鹿でしょ、王子」
「やだ、言わないで」

 一緒に眠らなかったその理由。

――ボク、どうやら寝相が悪いらしくって

 呆れ返る俺に恥ずかしそうに王子は口を尖らせる。

「だって、キミみたいなガサツなタイプなら平気かもしれないけどさぁ。ボクにとってはイメージダウンもいいとこの……」
「つか、今まで彼女とはどうしてたんですか?無理だろ、別々にとか」
「そんなのクラブの時と一緒さ。ボクは誰とも同室で眠ることなんて殆ど許してこなかった」
「駄目なのは男だけじゃなかったのか……」
「通常は用が終わったら帰ってもらうか、朝になって一緒に寝てたフリするか……あ、でも付き合いが長い子はみんな毎回何かを言わなくても最初に一緒になるのは嫌だって伝えてればちゃんと弁えてくれていたよ」

 まるで子供みたいなちっぽけなプライドと我がままをかます。色男なのは見かけ倒し。本当はあまりに可愛い俺の王子は、セックスが終わった後の冷たい自分の仕打ちをさも当たり前のように告げた。どっかこの人、ピントがずれてる。でもきっと周りの女性もそんなこと、王子と傍にいられるなら些細な話だったんだろう。

「意識が……なくて。最初の頃はボクも自分の癖、知らなくて。時々寝相が悪いどころか盛大に暴れたりもするみたいでクレームが」
「夢の中でサッカーでもしてるんですかね?」
「フフ、そうかも。でも、キミとはずっと別々とかそんな生活、続けていけないし、長期間ベッドで寝れなかったらボクも辛いし。もうあんな醜態晒すのなんて二度と御免だとは思ってたんだけどしょうがないもの」
「そりゃそうだ」
「だから、明日も練習だしもしかしたらキミにも迷惑を……とは思うんだけど。でも、いい?」
「しつこい。あんたが暴れだしたら鼻つまんで起こしてやりますよ」
「……」
「さ、寝ましょう。大丈夫。学生時代遠征とかでよく雑魚寝してたけどそりゃあもうひでぇ奴ら沢山いたし、寝言歯ぎしりバッチこいッスよ。体育会系舐めんな」

 つまらないことに吃驚するくらいの遠慮がある。ホッとしたのかさも嬉しそうに抱き付いてくる王子を抱き返しながら、俺は笑いながら眠ることにしたのだった。

   *  *  *

 夜中、トイレに目が覚めて、スヤスヤと穏やかに眠る王子を眺めながらまた眠ろうと部屋に入ると、呻きながらびっしょりと全身汗で濡らし、寝悶える姿の彼がいた。

「王子?」

 ぼそぼそと何か寝言を口にしているようだったが小さくて聞こえない。誰か、誰か?そんな風にも聞こえるのだけれど。

「う……」

 ガタガタと震えてうなされているので、悪夢でも見ているのだろうかと体を揺すって起こそうと試みる。するとガバリと突然起き上がり肩で息するその様子に、ようやく目が覚めたかとホッとして、俺はこんな風に王子に声をかけた。

「大丈夫ですか?随分うなされて……」

 顔に張り付いた彼の汗でしとった濡れ髪に手を伸ばすと、王子はペシリと俺の手を払いのけて、よろよろと起き上がってベッドを降りようとする。ただ、それはとても性急な動きで、案の定四肢に力のこもらぬ寝起きの彼は俺に乗りかかる形で床に倒れ込んでしまう。目は開いている。でも、呼びかけても返事はなく、焦点が合っていない。つまり、彼は今、意識がない。

「誰か……」

 動かぬ体で、どこを見ているのかわからないその目で、必死に人を探しているようだった。目の前に俺がいることに気が付かない。
 ベッドに手をかけて立ち上がろうとしても、上掛けがズルリと引き摺り下ろされて再びその身を倒してしまう。体に絡みついたそれを踏みながら無理に立ち上がろうとしてまたガタガタと崩れ落ちるように勢いよく転ぶ。方向が悪ければサイドテーブルで額を割る大怪我をしかねない程の、ちょっとしたパニック状態だ。寝相が悪い?これはそんなレベルのものでは。

 ともかく落ち着かせなければと、ふらつく体で無為な徘徊を続けようと試みる王子を抱きしめ声をかけ続けていると、暫くして落ち着いたのか、ふっと全身の力を抜いてその場にしゃがみ込む形で俺にしな垂れかかり、パタリと動きを止めた。

「ベッド、戻りましょう。歩けますか?怪我とかしてませんか?」

   *  *  *

 横になり、いつもとは逆に俺が彼に寄り添い腕枕。どこも見ていない虚ろな目が重くのしかかるような彼の瞼に少しずつ隠されていく頃、王子は不思議そうに俺の名を小さく呼び、今にも泣きそうな顔をしながら俺の胸に顔を埋め、そして再び引きずり込まれるように深い眠りに落ちていった。

   *  *  *

 翌朝、穏やかな目覚めを迎えた王子のその表情が昨日の出来事を夢にする。

「おはようザッキー」
「おはようございます、王子」
「……」
「どうしました?」
「昨日……大丈夫、だった?」
「大丈夫じゃないですよ」
「え?」
「ボカボカ俺のこと蹴ってくるから、俺も蹴り返してやりました」
「嘘」
「夢ん中であんたは勝ったんですか?負けたんですか?」
「そんな、覚えてないよ、ていうか、蹴ったってザッキー……」
「んなの嘘に決まってるでしょ?いびきはうるさかったけど」
「え?」
「色男形無しだな。グースカうるさいッたら。あんなの女に聞かせたら100年の恋も醒める」

 記憶がないであろう王子は、恥ずかしそうに、参ったな、と眉をしかめて俺に目覚めのキスをする。

「そんなのどうでもいいんだけど、でも……キミの恋は?醒めちゃったかい?」
「……」
「幻滅、しちゃった?」

 馬鹿なことを呟く男に、俺もまたそっとキスを返す。

「スイマセン、実はなんも覚えてないんですよ、王子。俺もぐっすり寝てたから」
「やだな、やめてよザッキーったら」
「あれ?ゆっくり眠れたんだから喜んでくださいよ王子。昨日あんなに心配してくれてたじゃないですか」
「そんなこと言っちゃう?なんかさー、ザッキーちょっと根性悪になってない?」

 口調はふてくされていながらもその笑顔はとても明るく、長い間王子の中の一つの課題であったろうそれを乗り越え、彼本人とても喜んでいたのは明らかだった。

   *  *  *

 その後も時々目にすることになった王子の悪夢の夜。うなされ、何かを追うように徘徊し、俺に気づいて泣きそうな顔をしながら彼は眠る。
 自覚なき彼の苦しみの時間は、うなされ始めた時に気が付けば短くなることを俺は知った。痛がるほど彼を抱き締め、沢山名を呼べば大丈夫なようだ。取りあえず、夜中にトイレに立つのはやめたほうがいいらしい。戻ってきた時、かなり高確率で彼は悪夢に囚われているので。

 同室で寝るなんて許さない、そう喝破した王子。自らの強い意志で独り寝を続けてきた彼は、もしかすると毎夜毎夜、あんな感じで独り悪夢と闘ってきたのだろうか?そんなことを思う。彼が俺と二人の生活の中で、ようやく安眠の夜を手に入れることが出来たのだとすれば、大変嬉しいかぎりだ。