絆に結ばれて 1
渾身のイチャ甘ジノザキになる予定。「仲良く遊ぼう」はゲス顔で書いた「沢山遊ぼう」と対。ジーノ長いトンネルを抜けた結果、中からぴょこんと子供が出てきてしまいますが、心を痛めた人は回復期に悪化→赤ちゃん返りすることがあるそうで一応それを踏襲しています。ジーノの回復とザッキーの成長はまだ始まったばかりです。
スターの訪問
練習帰り。夕飯をどこで食べようかという話の中で突然ジーノが赤崎に言った。
「ねぇ、今日はキミの家に行ってみない?」
「え?」
「そうしよう?ご飯はほら、なんか簡単に買ってさ」
二人はあれこれそれなりに長い付き合いになるけれど、実は一度も赤崎の家で過ごしたことはなかった。
あのことがあって以来、最近のジーノは、また少し変わった。元々ジーノには、多少強引なところがありつつも、いつもなんとなく相手の気持ちを組む部分があって、なんだか不思議とそうやって相手の思いを優先し本来の自分の願望を抑える癖のようなものがあったのだ。
けれどここ暫く、こうして赤崎と過ごす時間が増えるにつれて、極自然に甘えるが如く素直な自分の思いのままの話をしたり行動したりすることが増えてきていた。そして今日は家に行きたいなんてことを極自然な流れの中で口にしたわけだ。
多分こうしてワザワザ今まで無言で避けていたようなことを言い出すことには彼なりの思いがあってのことだろう、と赤崎は思う。自分がパーソナルスペースにジーノを入れる、そんなことに気後れを感じるであろうことを知りながら、今ワザワザそれを言う。相手の思いを先回りせずに、ありのままの気持ちを言葉で伝えてくる、そんな少し身軽になったジーノの姿が、赤崎にとってはとても美しいものに見えた。
それでも。やはりいくらなんでも俺の部屋は狭まくて、王子の家みたいに綺麗じゃなくて、などと赤崎は思ってしまう。ゴチャゴチャと変なものも置いてあるしなんだかとっても恥ずかしい。それに今はもう殆どあの家で過ごす生活をしていて、自宅はまるで着替えを取りに行くだけのトランクルームみたいな場所になっている。あそこに二人で行って過ごすとなっても、とても楽しめそうには思えないし、申し訳ないけれど出来れば勘弁してもらいたいと思うのが突然訪問を頼まれてしまった男の、正直な気持ちだった。
ジーノは自分が言いたいことを言うのと同時に、赤崎にもきちんと言いたいことを言うことを望んだ。高圧的なまでに押し切り半ば命令として従わせる自身の持つその力を、ジーノは是としていなかったのだ。
だから。
「いや、それはちょっと、やめときましょう!」
勇気を以って赤崎はこう伝えたのではあるのだが、
「……いや?」
結局ジーノのこの顔である。
ちょっと悲しそうで拗ねるような、大の大人がする顔ではない酷く子供っぽい可愛い顔をして。いつも何を考えているのかわからないような策略家のそれではなく、あけすけなジーノの裸の感情がこうして目の前に差し出されると、結局赤崎はついつい絆されてしまうのだった。
「…ったく。汚いッスよ?」
「フフフ、ありがと、ザッキー!」
クラブハウスの中の駐車場だというのに自然にキスをしようと近づくので、赤崎は驚いて慌てて避けた。本人も無意識な行動だったようで、あ、いけない、とジーノが少し肩を竦める。
赤崎は当初、ジーノのことをもっともっと完璧な人間だと思っていた。ちょっとした天然チックなところも寧ろわざとなんだろうとまで。けれど最近全部が全部そうなのではなく、ようやくそれが素であった部分も多分にあったのだなということがわかり始めていた。楽しそうに笑うジーノのその姿は、まるで変ってしまったかのように思いながらも、もう最初に話しかけられたあの日からずっと、全く同じような気もすることがあるからだ。本当にジーノはとてもよく笑う。目を細めるだけの時もあれば、お腹がよじれる助けてと笑い転げることもある。そんな時間を今まで二人随分昔から沢山過ごしてきたのだということを、赤崎に何度も思い出させたりもしていた。気が付かないままに、最初から二人はずっと、と。
* * *
「へぇー、結構近いとこに住んでるんだね」
「兎も角チャリ通できるくらい近くで!っていう条件で最初クラブに探してもらったんで」
クラブに入る時に物件を探してもらった時は、こんな日が来るなんてまるで思いもしなかった。なんだか、
(自分の家なのに王子と一緒にこうしてエレベーターに乗っているなんて……)
と日常と非日常が混在するような、変な気分。なんせ熱狂的なETUファミリーである赤崎にとって、ジーノという存在は入団が決まった直後から、そして実は今でもサインが欲しいくらいの尊敬すべき憧れの選手だったのだから。
だから今のこの一時が、テレビでよくある、素人自宅に突然有名人がやってきてキャーキャー騒ぐバラエティ番組の企画のような、なんだかとっても妙な気持ちになる状況に感じられた。何度もベッドを伴にする間柄ながら、全く奇妙な話だった。
* * *
「最近ほったらかしのまんまだし、ほんと汚いッスよ?」
といいながら赤崎が玄関の鍵を開けると、ドアを開けてジーノが開口一番。
「ああ、ここも……この部屋もザッキーの匂いがする」
なんだかこんなことが前にもあったような?
「なんスかそれ。くさいって意味ッスか?」
「いい匂いだよ」
「……なんていうか、やっぱあんたが犬みたいな気がする」
「フフ、もしかしたらそうなのかも?」
「あ、王子スイマセン。靴べらとかもなくて……」
「構わないよ、っていうかザッキーったら靴べらは履く時に使う道具だよ?脱ぐ前に履く心配されてもねぇ」
「あ」
「フフ、ホントそういう系のものに慣れてないんだねぇキミ」
なんだか落ち着かない気持ちで部屋に通したのだが、彼はなんともいえない嬉しい顔をしていた。
「素敵な部屋だね」
「また……嫌味ッスか?スイマセンね狭くて貧乏くさくて」
「もうキミは全くイチイチ!そんなわけないだろう?カルチョ坊やの部屋はやっぱり一面カルチョだらけだね?ってさ?思った通りだ、とってもキミらしい」
壁や棚の上には沢山のETUのグッズや本やポスター、部屋に転がる大きな大きなサッカーボールのビーズクッション。メタルラックとETUのシンボルカラーの赤黒のコントラストが硬質でシャープで、シンプルでいながら熱を感じさせる赤崎自身のイメージとぴったりとマッチしていた。
何かに目を止めて笑っているので、赤崎がジーノの視線の先に目をやるとそこにはジーノが中心になったデザインのETUのポスターが飾ってあった。
「あ!いや、これは……」
「懐かしい。これ、ボクが入ってすぐの頃のものだね。あんまり腕のいいカメラマンじゃなかったから時間がかかっちゃってヘソを曲げた覚えがある」
「あー、その話きいたことあるなぁー。でもヘソ曲げたとかそんな小さい次元のネタじゃなかったはずだけどなー?ねぇー?王子?」
「ハハハ」
「あの頃のあんたの話はホント色々凄くって。ちっとも退屈する暇がなかった」
「そう?ボク全然覚えてないな~?でも、取敢えずはあれって、こうしてキミの部屋に長く貼られることになるような貴重な仕事だったってわけだね?なんだかんだ言いながらも途中で帰らず我慢してよかったよ」
そう言ってさっきと同じようにジーノが自然にキスをしてくる。この男は本当にキスが大好きで、二人でいるときはこうしてまるで呼吸をするように自然に何回も何回もそれをする。きっと自分ではどれだけこうしてキスをしているかすら意識していないことだろう。
「あ、これは?サイン入りのボールだね?」
「ああ、ファン感の時にもらった景品で。その場にいた選手にサインしてもらったんです」
「ふ~ん」
「……一応言っとくけど」
「ん?」
「覚えてないだろうけど俺あんたにも貰いに行ったんだからな?」
「へー!確かに全く覚えがないよボク!」
「だろうなッ!!例の如く軽く断るあんたの性癖のせいでここに……変な空白が。くそッ」
「ホントだー、アハハぽっかり空いてるねぇ?変なのー」
「ったく今まであんた、サインしたことあんのかよ王子」
「……」
質問に返事はなかった。そのかわりにジーノはこんなことを赤崎に言う。
「キミ、ボクのサイン欲しかったの?」
質問に質問を返してくるあたり、ジーノにはよっぽどサインをしないことに関して意固地な理由があるんだろうなと赤崎は感じた。
「そりゃ……腐っても10番だしな、あんた」
「そうなんだ。へぇ~」
するとジーノは澄ました顔をして、棚に置いてあった赤崎のペン立てからマジックを一本取り出して、その場で澄ました顔してサラサラとボールにサインをし始めた。
「はぁ?何を……」
「はいどうぞ。欲しいなら欲しいって言ってくれればいつでも書いてあげたのに」
かねてからの自分の願望を目の前の男が簡単に叶えてしまうので、赤崎は呆気にとられて開いた口が塞がらなかった。
「嬉しい?」
「……」
「ザッキー?」
「あ……ど……どうも」
「なんだもっと喜んでくれるかと思ったのに、残念」
「……俺、王子のサインって初めて見ました……」
「アハハ、そうだね。ボクもあんまりにもしないから忘れちゃうくらいさ」
「……あのね。そんなこと言うくらいならちゃんとみんなに書いてあげりゃぁいいでしょうに。そしたら忘れないでしょ!」
「んー、考えとくよ」
「考えるだけかよ」
「ハハハ、ま、取敢えずそれさ。大切にしてね?」
これだけ二人が親しくなったというのに、改めてこうしてサインをしてもらうと興奮して赤崎はなんともミーハーな気分になってしまった。見たことが一度もなかったジーノのサインをする姿は堂に入っていて、チーム内の誰より眩しい極上のスター選手の雰囲気があった。所謂、絵になる、というやつだ。
* * *
「あの……床で悪いンスけど……そこのそれ使って座っててください」
「……クッション、一つしかないけど?」
「いいッス、俺いらないから」
「フフ、紳士だね」
そういってサッカーボールを模した安っぽいジャンボクッションに埋もれるように座るジーノは、やはり赤崎の想像していた通りこの部屋にとても浮いたものだった。
すぐそこに飾られているポスターからそのまま抜け出したようなスター選手のオーラのあるジーノの存在。赤崎の目にはこの美しい男が今、随分と遠くに見えてしまっていた。空間が自分の日常の世界であればある程、それはまるで不協和音のようにノイジーにさえ思え、なんだかそのことが少し赤崎の心を悲しくさせた。
しかし、そんな赤崎の心境などおかまいなしに、当の本人は最初入ってきた時からそうであったように、さも楽しそうにキョロキョロと周りを見回していたのだった。
二人で決めた夕飯はオムそば。エビとアボカドとブロッコリーのサラダ。ジーノが飲みたいと言うので玉ねぎとワカメの味噌汁。自分で作りますと言ったもの、料理はホントいつも適当にしかやったことがなくて、つまり下手くそである認識があって、赤崎は全く以って自信がなかった。だからジーノはそういう赤崎の心情を理解した上でザックリと作れそうなメニューをチョイスしたのだと考えた。
「手伝おうか?」
「!」
気が付くと後ろにジーノが気配も感じさせないままに立っていたので、赤崎は心底驚いた。
「あ、大丈夫ッスよ、座ってて。その服汚してもいけないし」
「そんなの平気さ」
「いやさすがにそれはちょっと……」
ジーノは薄手のジャケットを脱ぐとシャツの袖をまくっていた。そして戸惑う赤崎に
「だって、一人でいると寂しいじゃない?傍に居たいんだよ。駄目?」
と臆面もなく。同じような口ぶりでも、以前のような相手を気遣うサービストークのようなものではなく、今は本当に心から出てる言葉なのが赤崎にはちゃんと伝わる。だって前はあれ程ジッと見つめたその目が逸れて、明後日の方向を見つめながらそれを口にするのだから。
だから赤崎はそのことに妙に照れてしまって、そッスか……としか言いようがなかった。
鼻歌を歌いながらアボカドの調理をしているジーノの手つきがとても綺麗で、ついうっかりそれに見惚れてしまう。
「ザッキー、コンロ二つ使うだろうからブロッコリーはレンジでいいかなぁ?」
腰に手をあて、口に指を添え、彼のいつもの考える時の独特のその仕草。いつでも、どこでも、どんな時でもジーノはジーノで、妙にこの部屋で浮いているのに、見慣れた男がそこにいると実感が湧いて、赤崎は少し気分が落ち着いた。
「どうしたらいいと思う?」
「あ、じゃ、レンジで。頼みます」
「レンジかけてる間、タマネギ切っとくね……ん~、やっぱりサラダにはレモン絞ったほうが……」
「でも店になかったし、ま、いいっしょ」
「だね。じゃ、ドレッシング作っちゃおう。和風?中華?フレンチ?」
「なんもないんで、じゃあフレンチで」
「了解だよ」
なんだろう、こういう時間が不思議に楽しい。赤崎はにやつきが止まらない。当然笑っているのはジーノも同じことだった。
赤崎の不慣れな手つきのためにオムそばの卵が少しやぶけてしまったけれど、二人で、みてくれはあれだけど、味は十分おいしいね、と言って笑いながら食べた。少し休んで片づけも一緒に。狭いキッチンに再び男が二人並んで。窮屈だったけれどやっぱり悪くなかった。
ジーノの家は生活感が全くないので、ある意味非日常というか世界が違う時間を過ごしているような感覚があった。しかし今こうして赤崎の家で二人で食器を片づけていたりすると、まるで、そう新婚生活のような感じで?などと赤崎は奇妙なことを考えてしまう。リアリティというか生々しさがあるのだ。
鼻歌を歌いながら食器を拭いている男を見ながら、赤崎はついつい赤面する。
(恥ずかしー、なんか俺今スッゲー馬鹿な事考えた。新婚?なんだ?俺が嫁になんのかよ)
ふと気が付いたらジーノの白いシャツにポツンと小さくケチャップの飛んだ痕。彼は食べ方が綺麗だから、飛んだとすれば俺がオムそばにかけた時に……、と赤崎は思った。
「シャツに……」
「ん?あぁ、これ?」
「スイマセン、エプロンかなんかあればよかったんだろうけど」
「いいよいいよ、この程度ならジャケットで隠れるし」
「いやシミんなるといけないし。着替え貸すんでちょっと脱いでもらえますか?」
「……」
「なんスか?」
「やだな、ザッキー、こんなに早くから上手い事言ってボクを脱がしにかかるつもり?まぁ、ボクは別にかまわないけどね」
「そういう意味じゃない!」
「アハハハ」
「どいてください!着替え取って来るから!」
そういって赤崎がタンスから長袖のコットンTシャツを取ってくると、上半身裸のジーノが、
「あ、ありがと」
と言って振り返りながら手を差し出した。優しくて落ち着いた笑顔をしながら少し首を傾げ、抜ける肌の白さと濡羽色の髪が安っぽい部屋の蛍光灯の明かりに照らされて。生活感あふれる装飾の部屋の中にある彼の半裸はものすごくいけないものを見るような、何とも卑猥な魅力にあふれていた。
「ん?」
「あ、これ……」
Tシャツを渡す。王子はいつもの通りなのになんだか今日の俺は変だ、と赤崎は焦ってしまう。本当に今日は最初からジーノに調子を狂わせられっぱなしで、どうにもこうにもならなかった。
ジーノは流れる動作で服を受け取り、美しい仕草でそれに袖を通していく。日頃、こうした伸縮性のある体のラインがキレイに出るような服を着ない男なので、その肢体のフォルムがやはり生々しい感じがした。着やせするタイプなのだろう、鍛えた体が普段の服装よりも華奢にも見えて、安っぽい服にもかかわらずやはりモデルのように様になっている。赤崎と目があったので、ジーノは悪戯な顔をして、それこそモデルのようにポーズを付けてこう言った。
「ザッキー、ねぇ、これ似合うかい?」
「あーはいはい。俺の服なのになんか王子が着るとなんかゴーシャスっていうかオーラを感じますね」
「……そう?」
「いつもと違う感じだけど着こなしが上手ッつーか、俺が着るのと全然違うッつーか」
「……」
「王子?」
「全然違う?」
「なんかこんなこと言うのも癪だけど……スター選手は、やっぱ何着てもかっくいいッスね」
「スター選手」
「ん?なんスか?」
「……それどういう意味?皮肉?」
「え?」
「キミの家に来て、キミの服を着て。こうして近づけば、少しはボクもキミの日常になれるかなって思ったんだけど」
そういって少ししょげたような顔になった。
「え?」
「キミの日常に入ろうと思っても、やっぱり無理があるのかな?ボク」
「……」
「昔からさ、なんていうか……普通にしてるだけなんだけど、色んなところでなんか浮いちゃうっていうかさ……一目置かれるっていったら聞こえはいいけど……多分これはあれだね……一種の疎外感っていうの?常に……人との距離を感じる。感じさせられてしまう。自分は蚊帳の外なんだって」
「……」
「ま、変な話だけどそれもこれもボクが魅力あふれる人間のせいかな?才能のあるいい男の宿命だ、仕方ないよね?」
最後の言葉は気持ちを誤魔化すジーノのいつもの冗談だった。赤崎は自分の胸が痛んだことから、きっとこのジーノの語る寂しい気持ちは本物で、疎外感?そんなものをこの人が?と新しい男の一面に触れたことを感じていた。
「ザッキー?」
だから思わずジーノに抱きついた。Tシャツを着たジーノはいつもと違う肌触りで、襟のない大きく開いたVネックから覗く白い首筋と露出した鎖骨がなんだか眩しく光っていた。
目が合い、二人、目を細め。今日何度目かの引き合うようなキスをする。あくまでも性的なそれではなくて、お互いがお互いを包みあうようなそんな穏やかなキスを優しく、長く、今回は深く。そうして唇を離して赤崎は言った。
「ハンカチ、あります?ちょっと貸してください」
「ん?どうしたの?」
そして差し出されたハンカチに、赤崎はサラサラとサインをした。
「はい、欲しいでしょ?これ」
「なに?」
「俺はトップに上がったその日に王子がファンになるほどの逸材ですからね。だから、そういうスター独特の疎外感って、ホントよ~~~くわかりますよ」
「!」
まんまるに見開いた目のジーノが赤崎の目に可愛く映る。
(前に教えてくれたよな?王子が俺のファン第一号っていうのは全くの間違いってわけじゃないでしょう?)
「これから俺世界的なスーパーな選手になっていくわけだしねぇ。ホント!お互い大変ッスよね、全く」
「プッ」
「今、笑いました?」
「アハハハ、笑ってないよ」
「笑ってるでしょ?ま、俺多分?今後更に?もう簡単には近付けないようなごっついオーラを出す男にドンドンなっていきますけど?まー、それも才能のあるいい男の宿命なんで」
赤崎の名調子に、ジーノはクスクスと笑いがもう止まらない。
「ごっついオーラ?それは凄そうだね」
「これ以上魅力的になっていったら王子も気後れするかもしれませんが。大丈夫。ファン一号に頼まれるならいつでもサインしますから。遠慮なく言ってくださいよ?」
「ハハハ」
「今日はとりあえず、お互い一つ目のサインの交換ってことで」
「……」
ジーノは何とも言えない嬉しい顔をしたと思ったら、また不意に頬に手を触れて、甘く優しいキスをした。
「そうだね。ありがと、心から大切にするね」
フフフ、と二人笑いながら。そうしてまた繰り返し繰り返し、二人で、もう何十回もの数えきれないキスをしたのだった。
