お花結び

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絆に結ばれて 5

いつかちゃんとまとめようと思っていた下書きです。断片的なシーンをただ楽しく書いて数年このまま放置になってしまいました。あの時勢いでラストを仮でもいいから書いておけばよかったと後悔。ぼんやりと頭には残っていてずっと自分でもそれを書くのが楽しみだったんですけど、もうまとめる力がなさそうなので供養のために(表現が重複していたり繋がってなかったりのままですが)UPしておきます。

たらればの話

 いつでも彼がいる。自分の傍に。負った傷の名残が疼いて、今日もこうして手を伸ばす。

(ザッキー……まただ……)

 触れて、抱き締め、キスをしたい。それは突然始まるボクの発作。羞恥か、怯えか、自尊心か、理由は自分でもわからない。今でもキミにこれを説明出来ない。

(ああ、もう大丈夫だ)

一連の。終わって意識が戻ってくる。つい先ほどまで張り付いていた沈み込む重さ、連れて行かれる残酷な力が、ボクの体から消えていく。ボクはキミをじっと見つめる。意識がぬくもりに集中している。そうなるとボクの全部がキミに引き寄せられて、それらから体が自由になっていく。

(自分の体なのに、重たくなったり軽くなったり……本当に不思議な気分になる)

 水中を浮遊するかのように所在なくなって、彼に繋ぎとめてもらうこともある。世界を行き来してしまうその狭間で、実際に体がふらついてしまうことさえある。そんなボクに彼は普通に接してくれている。

「ねぇ、こんなこと、本当は……変、だよね?」

 それは、眩暈の中、彼にもたれて休んでいる時のボクの一言だ。夢の中での出来事なのか、それとも現実に口にしているのか。意識の輪郭がぼやけているので、ボクにはそんなこともよくわからない。

「そうッスか?あんたらしいじゃないですか。もともとそういうタイプでしょ?」
「?」
「気付いてなかったとか言わないでくださいよ?」

 ザッキーはそう言いながら、ふわっとシーツをかぶったお化けのような姿に変わる。ちっともこわくないお化けだ。笑ってしまう。

「なにをしているの?」

 するとお化けなザッキー、キツネみたいな目をして、オオカミみたいな口をして、ボクを脅かすためにこんなことを。

「また忘れてるふりを?都合の悪いことはみんなそうやって」

(あぁ)

 そうだ、と思い至る。ボクは考えれば沢山の話を彼にしてきたことを思い出す。誰にも言ってこなかった色んなこと。人がいないと駄目なこと。人と寝ないと駄目なこと。そして結局人と寝たとしても、以前何ら変わらずずっとボクが駄目なことを。

(全部、この子は聞いてきたのだ、そんなボクの色んなことを)

 気楽なボクの物言いが、彼の心を苦しめてきたのだろうか。永遠の愛を誓い合うような恋しか知らない澄み切った心を持つ彼に、ボクは男の狡さの限りを見せつけるマネをした。ボクの表裏を知る彼は、日々の生活の中で業火に身を焼く苦しみをひっそりと、耐え、忍んできたというのか。

「今更つまんねぇ取り繕いしても無駄ッスから」

 切なくなって、ボクはまたキスしたくなってしまう。

(キスで話を誤魔化そうとしていると思われるだろうか。そうではない。そうではないのだけれど)

 もう体が動かない。ズルズルとだらしなく力の抜けた体をベッドに横たえながら、ボクはおずおずと彼を見上げ頬に手を伸ばす。いや、伸ばそうとしたつもりなだけだったのかもしれない。けれど崩れていくボクを追いかけるように、彼の唇の温かい感触がボクの唇に触れた。ボクの体に覆いかぶさるように彼の全身の重みが、ボクを抱き寄せる腕の強さが感じられた。思わず漏らしたボクの吐息に彼が身を震わす。意地悪をしたいわけではなかった。けれどももっとボクで震えて、と、そんなことを考えているのもまた事実ではあった。

(ボクを感じていて欲しい、ザッキー)

 思いが巡る。

(聞いて欲しい。ザッキー、ボクは……)

 思いよ届けと。

「王子、寝ました?」

 ベッドに押し付けられるような深い重みと、首筋に埋められた彼の吐く息の熱さ。そんなものが今やすやすと、ボクに迫るあの例えようもない底冷えの世界を救っていく。

「沢山そうしたい人なのはちゃんとわかっています。だから、いいんですよ?元々そうでないと駄目な生活を続けてきたあんただから」

声が聞こえる。いいや、感じているのか。

「急にあんたの全部が手に入るなんて、安易なことも思ってねぇし」

(何を言っているの?どうしたの急に……ザッキー、ボクのことわかってくれているのでしょう?)

そう思うのに、もう動けない。キミを抱き締めたいと、なのにもうこの重い腕が。

「口では図々しいこと色々言っちまう俺ですけど。もし万が一あんたが俺で間に合わなくなるようなそんな日が来たなら、その時も別に嘘なんてつかなくてもいいし。嘘とか、またあんたが辛くなるでしょう?」

聞きたくない。

「そりゃそん時はキレて怒るだろうけど。俺、多分大丈夫だから。悔しいけど、そんなことで俺全然あんたのこと嫌いになんてなれないから。俺にはずっと裏も表もない、今のままのまっさらな王子でいてください。全部を愛してしまってるんです。あんたが無理しないならそれでいい」

 馬鹿げた、たらればの話をしている。気持ちが渦巻いて租借できない。怒りなのか、喜びなのか。悲しみなのか、優越なのか。何か言いたくて、けれど何が言いたいのかもわからない。深い眠りに誘われるまま、勝手にボクは落ちていく。こんな夢を見なくてもよくなりますようにと、目覚めの時をそわそわと心待ちにしながら。