絆に結ばれて 5
いつかちゃんとまとめようと思っていた下書きです。断片的なシーンをただ楽しく書いて数年このまま放置になってしまいました。あの時勢いでラストを仮でもいいから書いておけばよかったと後悔。ぼんやりと頭には残っていてずっと自分でもそれを書くのが楽しみだったんですけど、もうまとめる力がなさそうなので供養のために(表現が重複していたり繋がってなかったりのままですが)UPしておきます。
雨もまた大海への一滴だから
それはある夜のことだ。
“ボク達、ようやくお互いを見つけあうことが出来たんだね”
彼はまるで遠くからやってきた異星人が、地球でとうとう運命を見つけたかのような顔をしていた。その日の彼の腕のぬくもりといったらもう、これでもかと満ちて溢れる歓喜の世界であった。人と人がこうして触れ合うことで、これほどまでに?あり得るんだろうか?と、そして、この感覚を彼もまた同時に?と、俺もまた感情が決壊して泣き出しそうな気持になってしまった。
(そして、今も……ほらもうこんな風に、ささやかな眠りのひと時ですら)
かつて人形のように生気のない寝顔をしていたこの王子は、寝ていてさえ、今にも何かを語りだしそうな表情をしている。溢れる何かを伝えようとしている。
(王子、今日はどんな夢を見ているんですか?)
不安な悪夢を抱える人。そしてまたこうしてうちなる光をこぼす人。俺もいつか彼を、全て理解できる日が来るだろうか。時間がかかると王子は言った。それはこの先もまだまだ俺たちは知り合っていけるよと、そんな王子からの保証だった。ともかく、彼は手ひどい傷を持つ身であるという秘密を教えてくれて、俺の隣で癒すことを選んでくれた。俺を薬に使ってみるよと、願いを叶えてくれたのだ。俺みたいに幸せな者はいないだろう。王子こそ俺の癒しそのものだ。
(応えたい……無欲なあなたの力になりたい)
代表選出されることを当たり前のように俺が語っても。そう、自分でもさすがに大風呂敷だと赤面する思いで語っていたとしても。彼はそれを俺以上に、当たり前のことのように語りだす。彼のような人が太鼓判を押してくれる。
「キミを励ましてる?なんの話?」
嘘でなく、サービスでなく、そしてまた、愛の欲目でもなく。
「キミは不思議だね。わかっているようでまるで頓珍漢なことを言う時がある。ほら、でも大丈夫。キミの指先がもうその片鱗に……ボクにははっきりと見えている事実だ」
懸命に誠実を目指している王子の素の思いが、どれだけ俺の今を支えているか。眠る王子の体温はとても温かい。彼の寝顔は俺の睡眠薬でもあって、少しでも長く王子を見ていたいし感じていたいと思うのに、やっぱりいつもこんな風に吸い込まれるような眠気に襲われる。
外は雨。暗い空もまたこの空間を暖かくするためのまるであつらえたような小粋な演出に見えてくる。しとしと、見上げる先の飾り窓のガラスに雨粒が光る。沢山の雨粒の中の一つを眺めていると突然すいっと一筋の水路に変化した。
(……ああ、とても綺麗だ)
そして、それを眺めていると、ほんの傍でももう一つの雨粒が、今にも流れ落ちそうに潤み始める。
(頑張れ、雨粒。俺の言いたいことがわかるだろう?)
しばらく眺めていると、その雨粒もまたじりじりと美しい水路に成長していく。
(そうだ、よし)
思わず王子の手を握った。すると、俺の思いが伝わったみたいに、雨粒の流れがキュッと角度を変えた。
(ああ……そうそう、もう少し)
じりじりと二つ目の水路が成長して、とうとう隣の流れに合流した。
(やった!)
二筋の流れが一つになって、周りの雨粒を巻き込んでいく。
(本当に綺麗だ)
夢と現実のうたた寝の狭間、俺は流れを見守っている。そんな風な俺の手を、眠れる王子もまた握り返した。
――うん、良かった、とても綺麗だ
彼もまた閉じた目の中であれを見ていて、一緒に喜んでいる気がした。
