お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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素直になれない僕と僕の大切な君

【2348文字】
診断メーカーの「CP本タイトルと煽り」にてツイッター投稿したもののリメイクです。(よくわからないのは私の方だ!)

 自分らしくないと自分でも思う。なぜこれほどまで意識させられ、なぜこれほどまでに手をこまねくのか。何がそうさせるのかもよくわからない。なのにむしろわかるような、そんな変な感じもする。

 噛みつくようなあの物言いは、馬鹿正直なほどの人の好さだ。

 皮肉に歪んだあの笑顔は、警戒心を持たないが故の、他人への甘え。

 潔癖なほどの正論派で、あいつは裸なのだと高らかに叫ぶ。

 僕は君のような人間は嫌いだ。世界は自分を中心に回っていると信じ、ワンワン、キャンキャン、無駄に張り切る。でも支配が及べばああいうタイプは、手ゴマにするのに最適でもある。

「王子、守備!」

 今日も軽率に君は言って、僕は気軽に聞き流す。

「……!?」

 そして試合後の物陰で、僕は君の腕を掴む。

「……王子?」
「……」
「……何、スか……痛いンスけど」
「だって、君って生意気だから」

 言われ慣れている君のことだ。軽く対応してくると考えていた。でも、不機嫌そうに睨みつける目も、一見そう見えるだけだった。

「生意気って……」

 強がる瞳が揺れていた。意地と戸惑いの微妙な均衡。

「俺、なんかしましたか?気にくわないことがあればこんなことしないで、はっきり言葉で伝えてください」

(……なんだろう、この感情。やっぱり、いまいちよくわからない)

「俺がもし悪いことをしたんだったら、ちゃんと王子に謝りますから」

 キュ、と口元を引き締めて、その潔さに思わず息を飲む。

「そう、じゃあ言うけど……」

 口を開きかける僕のことを、とても真摯な目で見つめている。

「君は僕に悪いことをしたよ。だから、ちゃんと謝って?」
「……は?」
「謝って」

 真摯が訝りの光にかわる。君の表情はとても豊かだ。

「いや、だから王子、俺はその内容の説明を……」
「……」
「説明を……」

 訝りは不機嫌さに変化する。眉を寄せ、口元をゆがませ、イライラが君を支配する。

「つまり、僕にそういう態度をすることだよ」
「そういうって、言われても……」
「生意気に、そうやって……」
「痛……っ」
「そうやって、僕を」

 腕に爪が食い込むほど。君はただその痛みに硬直する。

(……なんでだろう。ザッキー教えて?わけがわからなくて、息が苦しい)

 迷いながらもゆっくりと。

(……ザッキー、ねぇ、少しは暴れてよ。君が止めないと、ほら、もう……)

 唇が触れるその瞬間まで、僕達は見つめ合ったままだった。

「……」

 開けていられなくて閉じられる瞼。口一杯に広がる甘い味。

(これは、キャンディ?)

 なんだか少し愉快になって、少し己を取り戻せた。

(ふふ……キャンディなんて口にするの、一体いつ以来の話かな)

 僕達はキスをしていたはずだったのだけれど、飴を仲間っ子して一緒に楽しんでいるような気分で。

(甘くて、でもさっぱりしてる)

 懐かしい記憶が蘇ってくる。例えば学校の遠足だったり。友達にもらった一粒だったり。

(気に入っちゃった。ちょうだい?ザッキー)

 終始されるがままの大人しい番犬とのじゃれ合いは、僕の息苦しさを消し去っていった。当たり前のことを当たり前のように、普通に過ごしている気分だった。

*

「この飴、美味しいね」

 自然にこぼれてしまう笑みを、呆気にとられながら君が眺めている。

「……運動後の回復のために、必ず舐めるようにして、んです」

 状況を理解出来ないままに、頬を染めて言う、初心な可愛さ。

「ふぅん?」

 未だ僕の手を振り払わず、そこに立っていることだけで精一杯の、あまりに健気で無垢な君。

「ただの飴じゃなくて、この手の目的重視のタイプで味まで旨いの探すのは結構大変だったっつうか」

 平静を努めて、言葉を繋げている。それでも彼の中の混乱が、手に取るように伝わってくる。

「お、王子もそういうこと、少しは気にかけてもいいと思いますよ、俺より年喰ってんスから」

 鼻に軽くかじりついてやった。

「ってぇ」
「嘘。そんな強く噛んでないよ?」

 くしゃりと。何故か悔しそうな君の表情。

「ん?何?」
「……欲しいなら、新しいのあげますから」
「?」
「カ、カロリー計算もしてるんで……、そういうの、こ、困るっつうか……」

 ごにょごにょと、何を言っているのかわからないくらいの不明瞭な言葉。

「……とりあえずそれ、俺に返してくれませんか?」
「どういう意味?」
「……っ、だからっ!」

(あ……また、初めての顔……)

 潤んだ瞳で舌打ちをしている。匂い立つ上気がさらに色濃く映えて、だから、ああ、また僕は。

「返してって、それ、もう一度したいって、そういうこと?」

 上擦る声はもう、言葉ではなく、パクパクとしながら下唇をチラリと舐めて、おあずけを食らった犬が「待て」をしているかのように、無意識の誘惑と従順のそれが、彼を見知らぬ彼に変えていく。

「ん……ふ、ぁ……」

 無垢で、初心で、健気で、不器用。すべてが嘘にも思えてくる。一粒の飴を二人で舐めあい、やがてそれがなくなっても、僕達は物陰、ただひっそりと、そのひと時を堪能していた。

「王子……、ん……」

 振り回されているような顔をしながら、僕を振り回す憎たらしい君。

 腕の中の、大切な君。