お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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理解者のフリした嘘つき色の

【14773文字】
今回は赤崎が恋人絡みの恋愛相談をジーノにしているうちに徐々に二人は……という感じのロマンチックラブコメディ?相変わらずのジノ→ザキ前提からのジノザキでジーノは途中まで(最後の最後まで)ちゃんととてもいいお兄ちゃん役?しています。「今なら甘~いお話いけるんじゃないか!なんとなく今しかない気がする!」と思って精一杯頑張ってみましたが

        ジノザキ

 赤崎が恋をした女性は、頭脳明晰、容姿端麗。誰しもが自然に振り向く、所謂高嶺の花のような人であった。出会いは最近のテレビ中継で、彼女はその時のゲストタレントだった。そも見目麗しい女性のいっそ大袈裟にも思える豊かな感情表現はいるだけでその場を華やかにし、そういった虚飾に思える世界を疎む赤崎でさえ、自然と目で追ってしまう魅力があった。サッカー系の専門用語が全然わからないような様子を見ながら、不勉強だと苦笑する事もしばしばになり、不慣れな環境で一生懸命奮闘している少し年上の美人女性について
(そうじゃなくて)
(惜しいな、あのプレイの鍵はそれより寧ろ)
と赤崎が雛鳥を見守る親鳥のような目で見守る様になっていくのも、言わば自然の流れであった。

*

 ある日、赤崎を呼び止めた女性は、突然こんな事を言い出した。
「凄いですよね、赤崎君って」
「は?何がッスか?」
「なんだか見てると、変な話だけど、私ももっと頑張らなきゃって。エネルギー貰えるっていうか」
「あー、どうも」
「物凄くチームに尽くしてるっていうか、なのにイマイチこう、もどかしく感じるっていうか。皆さん、貴方をもっとよく見てくださってたらなって思います。本当は雑誌やテレビに今よりもずっと取り上げられていておかしくないのに。勿体ないですよ」
「……」
「サッカーの事全然わかりもしない私なんかがこんな事言ったって無意味なんでしょうけど……でも、私いつも赤崎君に助けられてるし、でも別にそうじゃないとしたって本当に心から応援してるんです。それを今日こそは伝えたくて」
こうしてひょんな形で男の情熱がスタートした。赤崎の持つプレイの質の良さは、こなれた目を持たない素人にはわかりにくい系統のもの。意外な人間から意外な形での評価を迂闊に得てしまった事で、赤崎の男心が思わぬ形でふらりと大きく振れてしまったのだ。

*

「そっか。今日もなんだ?色々大変だね」
「スイマセン、王子。いつも突然こんな形で」
「構わないよ。駄目ならキミからの電話があった時点で断るだけだしね。さ、入って?」
 なんの流れでそうなったのか、いつしか赤崎はジーノに誰にも言えない悩みを打ち明けるようになっていた。ジーノはそもそも相談に乗るような人物ではなく、赤崎もまた相談を持ち掛けるタイプでもない。だからこの関係は誰しもが想像しえない、非常に不思議で奇妙なものと言えた。
「仕事、仕事、で今日も会えないゴメンナサイって?いるよね、そういう子。仕事一筋でそもそもが恋愛体質じゃない、みたいな」
「まあ、そういうところが良くて付き合うようになったンスけどね」
「んー、あれだねー、ちょっとキミとタイプ似てる」
「そ……ッスかね」
「似てるところがないと理解不能でまず惹かれないでしょ」
ハハハ、と軽口を叩いてコーヒーを飲む姿は、どんな話をしている時でも全く同じで、その揺るぎようのないジーノの姿勢が、今日も赤崎を落ち着かせる。もっともだと思う事もあれば、そんな馬鹿なと思う事もあるジーノの気のない受け答えは、押し付けるでなく、聞き流すでなく。このつかず離れずの絶妙な距離感が、赤崎の心をいつも救った。
 二人の会話は当初本当にささやかな雑談に過ぎないものであったはずだった。けれどいつの間にかその恋の存在を把握していたジーノは、その苦労が赤崎から自覚なく漏れ零れる度に、その苦痛を拭う様に「適切」な言葉を投げ返していた。「適切」というのは、赤崎自身も薄々感じながらも決断しかねている時に、素知らぬ顔で、しかし端的にそれを指摘してその背を押す行為だった。

「攻略相手としては不足はないけれど、人生を賭して付き合うには結構難しい相手って感じだね」
 そう、今赤崎の心には、恋の激流に掉さすような小さな障壁が存在していた。自分は今二十代前半。けれど彼女は。恐々と見通す先、二十代、三十代、四十代、その向こうに、二人で過ごす生活の何もかもが一切見えてこなかった。遊びで人を愛せない赤崎は、二人の未来が見えない自分が、不誠実であると自らを責めた。
(この恋は浅はかで軽いものに過ぎないのか。そして、それは自分だけでなく彼女にとっても?)
 思わずたどり着きそうになる一つの思考にふるりと体を震わせた瞬間、まるでそれを遮るかのようにジーノが静かにこう言った。
「恋は星巡りみたいなものが強く影響しているからね。思いの深さを自分で調整も出来ないし」
本当にジーノは赤崎の事をよく把握しているように扱った。踏み入れていい場所、まだ覚悟の足りない場所。まるで横に添う様に歩く男は、危険な足元を見ないまでも軽やかに回避し、赤崎は不必要な痛みを感じる事無く自らの足で道を進める。
「なんだかんだ言いますけど、流石に俺もわかってきてんですよ。あの人、多分俺なんか全然必要じゃないって」
 その言葉は、己のブライド、ギリギリの言葉。わかっている事。わかりたくない事。危うい一言をジーノに託せるのは、それだけ男の判断力に対して信頼が厚いからだった。
「その言い方は良くないんじゃないかな?あの子の場合は誰が相手でも基本的にベタベタしない淡白なタイプなだけだと思うよ?必要があるとかないとか関係なしに」
受け手として判断の付きにくい微妙な返事もまた時々あった。これはもう少し考えて見ろという彼なりの合図であるのだと赤崎は解釈する。けれど最早今は心が急いて、自分の力を信じ切れない。
「でもこの前の、」
あきらかに今日の赤崎は疲弊していた。そしてこれ程まで弱り切って他人に己を委ねるなどした事がなかった。当然それはジーノも同じで、その手の依存を厭む性質のある事を知っている赤崎は本当に恐々とそれをしていた。せざるを得ない程駄目になったのだ。誰にもこの満身創痍の自分を預けられない。今は目の前のこの男にしか。
「ああ、何?この前のスキャンダル?」
まさしく深手の理由そのものをジーノは指摘し、すでにとっくの昔になってしまったその出来事の、傷を放置し膿み切った心。悲鳴の出そうな痛みが走るその傷を晒せるのは、この優しい顔をした、何にも怯まぬ豪胆な人だけ。
「キミ、ボクが日頃どんな目にあってるかわかってて言ってるの?」
「……」
「あんなの殆ど出鱈目が多いし、そうじゃなくても今回の件については公式に相手の俳優が謝罪してたじゃないか。自分が勝手に入れあげて家庭が壊れちゃっただけだって」
雑誌のお嫁さんにしたいタレントランキング上位に常連の女性は、時々今ジーノが言ったようなスキャンダルが紙面を賑わす事もあった。初心な赤崎が女性を信じ切れない時があっても、その荒れる心を包み込む様にジーノはその度に落ち着かせてくれる。ただ盲目的に赤崎を庇うような嘘で覆うでなく、客観的にそれは正しいと思える、本当に適切な判断の上で。
「そういう要の部分で相手を信じられるかどうかが上手くいく秘訣だとは思うけどね、ボクは」
「そう……ですね」
今まさに赤崎が躓いている石は、起きたトラブルでなく自身の処理だった。信じられるか、信じられないか。自分の想いは本物なのか、嘘なのか。言葉に詰まる赤崎を暫し見つめ、ジーノは静かにこう続けた。
「ま、実際この前ボクも直接話す機会があった時、なんとなくキミの困惑の意味がわからないでもなかったけどね」
「え?直接って、いつ頃の……」
思いがけない一言だった。赤崎に助言するジーノは今ここにはいなくて、突然ジーノ自身、つまりジーノのリアルに生を過ごす日常の一人称そのものの姿が。本当にこれは秘密主義の男として稀な出来事であり、赤崎は驚いてしまう。
「いやだな、そんな顔しないで?仕事だよ、単に。なんにもない」
 そうしてジーノはソファ傍のマガジンラックから取り出した一冊の雑誌を赤崎に見せた。
「これ」
「あ、あぁ、対談記事ですか」
素知らぬ顔をして手に取ってみたが、心のざわめきは収まらなかった。ジーノは夢物語の中の存在ではない。なのに彼女と接点を持つ事があるなど、ただの一度も想像した事がなかったのだ。あれだけMOMとして場をこなす機会の多い看板選手で、事務所に所属せねばならない程沢山の外仕事もこなす人。接点がない方がおかしい事なのに、本当に一つも考えなかった。
「きっととても世話焼きさんなんだろうね?人の役に立ちたい的な?」
考えた事もなかった。この男と、彼女との事。勝手に並び立つ二人を想起しては、自分の場違いさに唇を噛んで、この溢れる醜さが嫌で嫌でしょうがなくて、目の前の男から目を逸らさねばならず、俯いた。
「ま、動機はどうあれ、男側からしてみれば立派なモーションだなぁ、あれは。“私が貴方を何とかしてあげたい”なんて言われて、なんかあるのかな、って思わない男もそうはいない」
素知らぬふりをしてパラパラと手慰みに雑誌の対談記事をめくっていた赤崎がモーションと言う言葉に凍り付く。その一部始終を眺めているジーノはそれでも構わず話を続けた。
「ま、ボクみたいにいい加減な人間には害はないけど、人との付き合いについて真摯なタイプほど振り回されちゃうって感じ?誤解されやすい行動をとりがちなのは、まあ、あるんだろうとは思う。傍に居ると揺れちゃうよね、キミの気持ちも」
(王子も?)
当然、言えない一言だった。傍に居ると揺れる心。それは彼女と居る時よりも寧ろ?

「まあ、でも、彼女のああいったところって悪意どころか、寧ろ善意から来るもんなんだろうし」
ジーノが明るい口調でそれを言うので、やや緊迫仕掛けた空気がふと弛んで、ようやく赤崎も息をついた。ジーノは確かに「キミは振り回されるかもしれないけれど、ボクは平気」という趣旨の前段で話をしており、ようやく思考が追いついてきた赤崎は、ホッとしながら返事をした。
「そうなんですよ、あの人すっごく気がいいとこあるから、ほら、今回の件に関しても無理な仕事とかも頼まれたら相手の事どうしても考えちゃって断り切れないみたいで」
赤崎が気に入っている彼女の部分を、ジーノが褒めるので嬉しく感じた。悪気はないのだ。そう、多分。では自分はやはり彼女への愛の努力を惑うわけではないと判断仕掛けて。
「だね、そうやってキミの約束、上手に反故する」
そして突き放されるようなジーノの一言に、冷水を浴びせられたような気持になる。繰り返し繰り返し後回しにされた事実。この己の屈辱を知るのも、それをする彼女と、そしてそれを打ち明けてしまったこの男だけ。
「あれ?怒った?やれやれ、それをついさっきまでボクに愚痴ってたんじゃなかったっけ?」
「そりゃ、そうッスけど……」
もっともだった。
「ま、だからその足で今ボクんちに転がり込んできてくれたわけで、ボクも丁度一人で退屈してたから良かったけどね」
 チクリとした皮肉に感謝の言葉。二人の会話はいつもこうして、ジーノの抜群の舵取りでとても軽快に進んでいく。日頃他人と口論になりがちな赤崎にとって、非常に居心地の良いものだった。どんな話の内容でもジーノの対応は何ら変わらず、その度赤崎はこんな思いを強めていく。
「なんつーか、流石ッスね」
「ん?何が?」
「飴のタイミングが」
「ハ、なんの話だか……」
「正直王子はあの人とおんなじモテ系のタイプだし似てるとこ一杯あるなって結構思う。けど、あの人とはやっぱ全然違うなって」
「聞きたいなぁ、その話。どういう事?」
「なんかこう男の弱くてどうしようもねぇ部分とかもわかってるっつーか」
「何言ってるんだよ。そりゃボク男なんだもの。当然じゃないか」
「まあ、そうなンスけど、でもそれだけじゃなくてちゃんと女心もすっごくよく理解してるでしょう?男なのに」
「そうでもないよ」
「そうですよ。俺にすっごくわかりやすく説明してくれるじゃないッスか」
「わかりやすいかどうかは知らないよ?思いついた事ペラペラ勝手に話してるだけだもの」
「だからいいんですよ。俺があの人に凄く入れあげてて、だからこそカッコつけちゃって時々今みたいに愚痴りたくもなっちまう。そういう男ならではの意地っ張りな弱さっつーか惨めな部分全部、当たり前みたいに、わかる、わかるっていつも俺に言ってくれて」
「そりゃわかるからだよ。わからない事はわからないって言う」
「女ならわかるわからない以前に馬鹿にする」
「別にそうでもないよ。キミが出会った事がないだけでね」
「まあ、モテ男の王子にズバッと数の事言われたらぐうの音も出ねぇけど」
「おや、素直だ。ひがまないのかい?」
「ハッ」
程よい雑談。心が緩む。疲弊した心は戦い疲れて休養を欲し、ジーノはさりげなく安らぎの時間も用意する。だからこそ、心が解けて、言うつもりもない言葉が零れ落ちる。
「ねぇ、王子……」
「ん?」
「王子は優しいッスね」
「おや、今度は持ち上げるつもり?」
「王子のさっき言ったあの人の“私が何とかしてあげる”みたいなところ?実際に俺はあの人のそういう優しさがきっかけに好きになったわけだけど」
「そうだね。前に言ってたもんねぇ?優しい、大好きだって。そういうの、人は惚気っていうんだよ。知ってた?」
ハハハ、と笑うジーノに赤崎は困ったような顔をしてこう言った。
「茶化さないでくださいよ。今真面目な話してんのに」
「おっと失礼」
「王子の言うように、あの人のそういうドンドン人に歩み寄っていくのって癖みたいなモンかなっていうのは薄々感じてましたし、でも、」
「実際、愛はそこにある?」
「そうです。ってか、まだそう思っていたいだけなのかもしんねぇけど……」
「キミがあの人じゃないと駄目だって言った時、彼女もそう返したんだもんね」
「……器用そうに見えて恋愛下手なんだと思うんですよね。お姉さんお姉さんし過ぎな性分あるから、素直に男に甘えらんないっつーか」
「ホント、キミそっくり」
「俺は別に、だって男だし甘えるとかどうとか、あんま、どっちかっていうといらねぇっつーか」
「おや、そうかい?ボクは甘えるの大好きだけど」
 こうして平気で話をひっくり返す事もある。けれどジーノのそれはいつも全く角が立たず、赤崎は寧ろそういうあくまでもジーノはジーノであるという変わらぬマイペースな受け答えにこそ安心感を持っていた。
「そりゃ、あんたはね」
「何なんだろうなぁ?キミはどんなイメージでボクを見てるのか時々わからなくなるよ」
クスクスと笑いながらジーノが問う。
「女の子に平気で甘えちゃうボクの事、女々しいってキミは馬鹿にする?男同士わかりあえるとか言っておきながら」
「男らしいとか女々しいとか関係ないッスよ。王子は王子でしょ、金太郎飴みたいにどこ切っても同じって感じッス」
「えー?何それ、全然わからないよ」
「……だからッスかね?」
「んー?」
「あんたがどこまでもあんただから、一緒に居る時の俺も、なんだか当たり前みたいに俺らしく居られるような気がします」
 するとジーノが少し首を竦めてはニッコリ笑って、続けて?と言う風情でコーヒーを含んだ。
「王子は俺に、なんとかしてあげるー、なんて絶対言わないし」
「そりゃ、なんとかなんて出来るわけないもの、当然だろう?」
「ほら、そういう事言われたら普通、冷たいなーって印象になるのに。でも、王子が言うと、そりゃそうだなーって説得力あるっていうか」
「何それ」
今度は噴き出す様に笑いをもらして、赤崎にジェスチャーでもう一杯飲むかと合図を送る。
「いえ、もう」
「そ?じゃ、ボクの分だけおかわり淹れてくるね」
そんなジーノの背に向けて赤崎は構わず話を続ける。
「なんかこう、王子って押しつけがましいとこがないんですよね。何言ってても」
「そうかい?寧ろ、押しつけがましい位我が強いとはよく言われるけど」
「ああ、まあ、確かにそれも一理あります」
「コラ、どっちなの?」
少し腐すようにそう言いながら、ジーノはいつもの流れるような手つきで上機嫌にコーヒーを淹れ、室内は再び心地良いアロマに染まっていった。
「王子は我が強いって思われる程実際物凄くはっきりした自分を持ってるけど、我が道は行っても、あんまり他人行く道に干渉とかしないでしょう?だから話してても、突っかかっちゃうとこがあんまりなくて、楽になれるっつーか」
「そりゃ何よりだね」
「ほら、またそういう言い方。すっごく適当でいい加減な感じなのに」
「実際いい加減だもの」
「そんな事ないです。そういう感じするけど、あの、なんつーか」
「……」
「いい加減な態度なんだけど、いい加減に扱わないっていうか、つまり……」
「何?急に口籠らないでよ」
「……」
「んー?」
「甘えるの恥ずかしがる俺に、全然恥ずかしくなんてない事だよ、とか言ってくれて」
「だって恥ずかしがる必要なんて本当に全くないじゃないか。違う?男でも女でも関係ない。頼りたいし、頼られたい。甘えたいし、甘えられたい。当たり前の事だと思うけどな」
やはりジーノはいつでもジーノで、この世の真理のようにそれを言う。
「いや、椿みたいに素直な奴に言うのはわかりますけど、でも、人によって態度変えないっつーか、
「食べる?」
「あ……」
コーヒーと一緒にジーノが持ってきたのは先日赤崎が喜んだ、濃厚な味の半生チョコで。
「驚いたよ。買って来たその日にキミから電話が入るんだもの。すごい嗅覚だ」
赤崎はジーノのその嘘を素直に信じて、嬉しそうに一つ摘まんだ。鼻に抜けていく独特の香り、まとわりつくようでいて物足りない程軽やかに消えていく食感。赤崎はこのチョコをまるでジーノだとまた思った。もっと食べたい、とあとを引く味。でも減っていくのが勿体ないそれ。一口、二口、それこそ毎日、毎日、ずっとずっとこの味を。黙々と時間をかけて赤崎はそれを口に運び、ジーノはその姿に目を細めて、延々とそれを眺めつづけていた。

 すっかり皿が空になって、でも口惜しくてそれを見つめる。
「もう少し持ってこようか?」
「いえ……いっぺんに食べても」
「そうだね、体によくないかな」
 さりげなく言葉を交わして、そして笑った。ふぅ、と満足そうな溜息をついて赤崎が片付けの為に席を立ちかけると、それを制するようにジーノが押さえた。別にそんな事はせずともいいと、優しげながらも、強い意志。
「ボクは相談相手には適さないタイプだって自覚はあるけど、なのにこうしてキミは随分と頼りにしてくれる。すっごく嬉しいし光栄だって思っているよ?キミがよくよく相手を選ぶタイプなのもわかっているし」
触れたその手と、率直な言葉は、赤崎の心臓を跳ねさせた。
 何の誤魔化しも入れずに本音を素直に口にするような、そんな自然体のままな風情のジーノは赤崎の目にとても眩しかった。
「なんで?」
「何?」
「なんで王子はそうやって、俺とか、自分で言うのもなんだけど、ちょっと面倒くさい系の奴にも同じように優しく出来るんですか?」
「ナッツ以外は平気だな、確かに」
「茶化さないでください」
ジーノと夏木との関係は険悪どころか、寧ろ仲の良い人間同士のじゃれ合いのようなものだ。赤崎はそれを知っていた。誰にでも優しい、誰とでも仲良くなれる、王子様。嫌いになれる人など居もしないし、居るとすればそれは嫉妬だ。憧れ、そして羨望せざるを得ない稀有な存在に触れられれば、たちまち溶かされ身を委ねるだろう。
「……あんたみたいに」
それまでとは打って変わった、一段トーンの下がる口調。赤崎の変化を見ながら、ジーノも少し真面目な表情で続く言葉を待ち始める。
「ボクみたいに?」
「心の底から、自分の事認められる自分だったらなって」
他人を羨ましがるような台詞は、当然自尊心の高い赤崎にとってタブーそのものだった。けれど今気負いの全く感じられない男の前では、スルリと弱気な本音が出てしまう。嘘や虚飾は無用の長物と言わんばかりのジーノのいる空間は愚痴や弱音も当たり前の様に受け入れる世界で、しかもここでの秘密は絶対に守られると言う確固たる信頼があるからこそ稀有な赤崎の素直が成立する。
「キミは十分素敵だよ。だからそう思えばいいし言えばいい。実際そうなんだから全然かまわないさ、そうだろう?」
「そんな事……本当に俺が凄い奴だったらきっと……」
 その声はドンドン小さく、傍に座るジーノでさえ聞き取りにくいものになっていった。
「ザッキー?」
「いえ、なんでも……」
 赤崎の素直が急に消えて、でも片意地を張っているわけでもない閉じた貝のようなその姿を、ジーノはジッと静かに観察するような目を向けた。

「ね、訊いていい?答えたくなかったら答えなくていいから」
手にしたコーヒーが少し冷め始める程経過したのち、ジーノが静かに赤崎に切り出した。独特な配慮を感じさせるジーノのこの言い回しに、赤崎は少し不安になった。何かを感じる。これは試練のようなもの。
「何ッスか?」
自分を見つめるジーノの目を見返す様に目を合わせると、そんな赤崎をジーノは更に観察しながら、ポツリ、と小さく呟いた。
「……まだ、なの?キミ達」
「え?」
「所謂、ちゃんと“恋人”してる?」
文脈からジーノの暗喩を察知した赤崎はカッと頬を朱に染めて、思わずそのまま口を強く結んだ。
「まだ……なの」
「な、何でそんな事急に……」
「ちょっと気になったから」
今まで二人で時を過ごす中で、この手の恋愛における生々しい肉欲的な内容が話題に上るのはこれが初めての事で、想定外の展開に赤崎は大いに戸惑ってしまう。基本的にこの手のネタがとても苦手な赤崎に対して、これまで一度もその話題を振らなかったのは明らかにジーノの心配りにあると言えた。そしてまた、今実際に核心に迫るジーノの吐く台詞には、微塵も下世話な興味心など存在しない行き届いた配慮が存在していた。
「と、途中までは一応……」
逃げ場がないような気持ちになりながらも、赤崎はだからジーノの労りに精一杯の努力を返そうとするが如く、ようやく、一言だけの返事をした。
 すると、言いよどむ赤崎の言葉を受けて、ジーノの態度が一変する。
「あの女……」
それはまるで地の底から響くかのような低音によるジーノの怨嗟の言葉だった。突然の事に驚いた赤崎は、慌ててそれに反応する。
「お、王子?」
呼び声が聞こえたのか聞こえなかったのか、ジーノはすぐには返事をしなかった。忌々しげに歪んだ表情が日常のそれに戻っていくまでが、赤崎には随分長い時間に思えていた。
「ねぇ、ザッキーさぁ」
「……」
「そりゃ、人にはそれぞれタイミングっていうものがあるし、いつまでにそれを、なんてルールもないけれど。キミ達が付き合うようになってから一体どれだけ経ってるか分かってる?」
「それは……」
「キミが愚図だから?」
「!」
「じゃないよね。多分一番いいとこで、多分おあずけ食らわせられてる」
「そ、そんな……今は色々大事な時期ってのもあって、万が一があったら、とかそういう事も含めて俺ら二人で納得出来てる事っていうか」
「やめなよザッキー、ボク、綺麗事なんて訊いてない。だって男の恋愛は常に性欲に直結してる。そんなの当然の話だろう?」
「それは、」
「キミがしゃんとしない理由、これでわかったよ。そんな事じゃないかって思ってたんだけど、ちょっと許せないな。なんなの?あの女」
今までどの女性にも、そして特に赤崎の想い人に対して跪き持ち上げるような物言いしかしてこなかったジーノが、考えられないような嫌悪感を漂わせながら“あの女”呼ばわりをする。その姿は一種異様で、いつの間にか赤崎は男の怒りを宥めるような言葉を繰り返し始めていた。
「でも、俺は確かにあの人と、って気持ちは確かにありますし、実際そんな風になりかける事もゼロでは……でも、王子?そりゃ心と体は一体ですけど、それでもやっぱり最後に優先されるのって相手を大切にしたいって気持ちだって俺は思うから」
口にしているのは赤崎の本当に重要な自分なりの譲れない生き方だった。
「俺は、俺が望むものを欲しいって思うけど、それだけの為に相手をないがしろになんてどうしても出来ない」
今こうしてジーノに切々と気持ちを吐露する赤崎にとって、あれだけ悩んでいた女性自分の関係性より、ジーノの自分に対する理解を欲する気持ちのほうが強く、且つ重要な課題になっていた。
「あ、甘いですか?俺。王子も俺の事、馬鹿だって思いますか?」
誰に言われたわけでもない赤崎の中にある大きな不安。当然そんなものが存在する事すら見せてこれなかった男が今、縋るような切なさで自分の全てでジーノに問うた。“わかってもらいたい”という、この気持ちが一体なんであるのか、その正体に気付かぬながらも赤崎はそれを言ったのだ。空威張りではない。拗ねているわけでもない。この思いは紛れもなく、自分の、相手への、所謂、かけがえのない。
「何言ってるの?馬鹿だなんて思わないからこそ尚更ボクが怒ってるんだろう?」
「!」
 その言葉がどれだけ赤崎の心を救ってみせた事だろう?湧き上がる感情、ぼやける視界。赤碕は平気な顔をするのに必死だった。何故今自分はこんなにも?
「キミはそんなにも純情で真摯な気持ちを向けてるんじゃないか」
叫び出したいくらいだった。歓喜の声をあげ、王子、王子、そうなんです、と。けれど。
「それを、あの女はよくも平気な顔してこんなに踏みにじって……」
ジーノはこの怒りの強さこそが赤崎の在り方をこの上もなく理解している証拠なのだと明快に言った。
(王子?……何故?違う、俺が望むのは……)
 事態は非常に困ったものなっていった。この先も続くジーノの柄にもない怒りと言葉の数々は赤崎を大いに戸惑わせた。何事にも動じない男の、抑えきれない感情の露呈。表情は変わらない。態度も変わらない。口調すら変わらないのに言っている事が。ゾッとするこの殺気にも似た張り詰めた空気が。
 これほどまで自分を肯定してくれた人間が、まるで己に受けた侮蔑のように憤怒に体を震わせているのがよくわかった。その事に気付いた途端、赤崎の心に大きな大きな変化が起きる。
(な、なんだ?これ……)
今、心にあるのは心が溢れんばかりに満たされていく幸せでだった。
「ザッキー?」
そんな中で、ジーノがようやく赤崎に向き直る様にこう言って、そうしてあまりにも自然に、
「キミは全然悪くない。その事はこのボクが保証するよ」
と微笑みかけていた。まるであのチョコのように滑らかであり、そしてすぐさま消えてしまうような儚い一瞬の姿だった。それでもいつになく強い視線、真摯な思い、確固たるその。
(あぁ、王子……俺……)
それはほんの細やかな出来事。でも、当事者の赤崎にとっては人生の根幹にかかわる大事件であると言えた。赤崎はこれまでずっと気付かぬままに、一度でいいからこんな風に誰かに見つめて欲しい願い続けていたのだった。上っ面な自分に対するものでは意味がない。今のような自分の本質に届くほど深部の場所での寄り添いでなければ。けれど強がりで減らず口の赤崎はとても人付き合いに不器用であり、まず肝心のその部分を晒す事自体まず困難だった。そして、誰かとは言いながら、当然誰でも良いわけでもなく、まず第一に自分が強くそれを望む相手でなければ無意味だった。

 つまり、苦悩に苦悩を重ねながらそうして女性に求めてた真なるものを、今、あまりにもあっけない形でジーノが赤崎に与えたのだ。

 それは男女間に生じざるを得ない性愛のカオスからの産物ではなく、赤崎にとってかけがえのない、所謂、混じりけのない本当の意味での“親愛”そのものであった。

 今、初めてながら当たり前の様に繋がれたままになっている二人の手はそのまま二人の心同士の繋がりと言えた。青臭過ぎるとさえ言える赤崎の親愛の情と同じものを、そうしてジーノが返していく。今のこの感情がなんであるのかは、赤崎にはやはり明快にはわからなかった。けれど、この奇跡のような瞬間が訪れた事に関して、ジーノという人間の在り方全てが必要であったのだと強く感じた。だから、極自然にその言葉が出たのだった。
「なんていうか……」
「ん?」
「良かったなって。王子が王子で」
「えぇ?どういう事?」
「伝わりにくい言い方しか出来ねぇし、ちょっと不愉快に感じるかもしんねぇんだけど。やっぱ王子って俺の中ではあの人と似てるとこ、あるンスよね」
「……」
「あの、ほら、いい意味でッスよ?」
「……怒らないよそんな事で。だってキミが彼女の事どれだけ好きかなんて十二分に知ってるもの」
皮肉はそこになかった。ジーノは赤崎の口にする大事な事をとてもよく知り、不必要なノイズである自身の汚れた自意識をそこに混ぜ込む様な無粋をしない。
「ザッキー。キミがそんなに望んでいるのに、体一つ許さない態度の彼女には腹は立つけど。それでもキミが好きになった子だもの。その事一つとってみても変な意味で言ってるんじゃない事くらい理解出来るよ」
そんなジーノの言葉が、今の赤崎の心を更にふわりと優しく包み込む。ジーノは赤崎の為に大いに怒ってみせたわけだが、それは女性の対応にであって、女性そのものを貶めるものではなかった。
(王子、ありがとうございます。あの人を、そしてあの人を好きになった俺の事を否定しないでいてくれて)
その一貫してぶれる事のない姿勢こそが赤崎のジーノに対する信頼の要だった。
「似てる?キミではなくて、ボクに?全然わからない」
「えぇ、似てますよ」
「ふーん、じゃ、例えば?」
容姿端麗、頭脳明晰。いるだけでその場が華やぎ、それでいてしっくり安定させる。自分にも他人にも同じように優しく正直。また誰に対しても物怖じする事無くフランクで居ながらとても真摯。赤崎は次々にその共通点を上げる事が可能だったが、それら全てがあまりにも美辞麗句過ぎるが故に、口にする事が出来なかった。
「なンスかね?雰囲気?」
「なんか漠然としてるなぁ」
「でも、全然違うなって思うすっごいわかりやすい部分もありますよ?」
「へぇ、それはどんな?」
「王子はあの人と違って女じゃない」
フ、と、ジーノがやはり先程と同じように、何それ、またか、と赤崎に笑う。ジーノはこの段になってもあまりにもジーノのままで対応を続ける。赤崎は今まで同様、いや、それ以上にジーノの変わらなさが嬉しかった。
「もしボクが女なら、今ここにこうしてキミと話なんかしてないよ。出会えないもの」
「だから、良かったなーって思って。王子が男で、俺と同じサッカー選手としてETUに居てくれて」
「……それはボクもそう思う」
込めた気持ちと同じように知らず力が入った赤崎の手を、ジーノは解きほぐすかのように優しい表情で握り返した。
「さっきも言ったろう?いつも光栄だと思っているよ。ザッキーがここに居てくれる事」
なんだかあまりにも当たり前過ぎるように展開する光景が、寧ろ赤崎にささやかなソワソワを呼び込んだ。
(なんか、こう……嬉しいんだけど、ちょっとむず痒い気もするな)
今度は赤崎の方がジーノのやったように、フ、と小さく苦笑する番だった。
(こういう空々しい事、真顔で王子はやれる。ホント、スゲェわ)
「ん?」
「男同士の方が、いいのかも知んねぇッスね?」
ピクリとしたジーノの反応を、赤崎は勿論取り逃がす。
「あの、何って言うんですか?こう、体の、動物的な意味での余計な事とか入り込んできたりしねぇし。でも生き物として共通点が多い分だけ無理しなくても自然にわかりあえるみたいな一面があるっていうか」
「あ、ああ、そういう意味か」
「?」
「いや、なんでも」
「一緒に居て楽しいとか、嬉しいとか、そういう感情がすっごくクリアな感じになる。王子と居ると。寛ぐって言うか、安らぐって言うか。わかりますか?」
「ザッキーはボクと居るの、好き?」
打てば響く様に言葉が心から導き出される。
「はい。なんか、凄く居心地いいです。王子の傍って」
「そう?」
「あの人とは一回もこんな風になれた事、なくて……」
「こうなりたかった?」
「そう思ってましたずっと。でも、今こうしてると、あの人と俺って色んなゴチャゴチャが多すぎる分だけ、やっぱ無理だったかな、とかも感じます」
「男と女だから?」
「……どうなんだろう、それも大きいだろうけどそれ以上に」
「ん?」
「あの人が王子じゃないから、かな。とか」
一度見逃したジーノの奇妙を、赤崎が今度は捕まえる。
(……あれ?)
指先の僅かな強張りに気付いてマジマジと見れば、ジーノは考え込む様に空を見つめていた。
「王子?」
「……」
「どうかしましたか?」
「え?」
ハッと我に返ったような表情を浮かべたジーノは、いつものジーノに戻ってしまった。そしてその態度に違和感を更に重ねた赤崎を誤魔化すかのように、突然時計を見ながらこう言い出す。
「驚いた。ね、見て?ザッキー。結構いい時間」
「ホントだ。なんかこの家に居ると時間、あっという間ッスね」
「そうだね」
「そんだけ楽しいかったって事ッスかね?王子?」
「……ん」
「何か今日は色々ありがとうございました」
「こちらこそ」
「突然来たのに飯まで食わしてもらって、おまけにチョコまで。なんか王子にはいっつも世話になってばかりっつーか」
「やめてよ、言ったろう?暇してたから、来てくれてこっちこそ助かったよ。食事はやっぱり誰かと一緒に食べた方が美味しいものだしね」
「そッスね」
「ま、本当は彼女と一緒のディナーの方が良かったんだろうけどね?」
「もう、王子またそんな」
「嘘嘘。でも次はキャンセルにならずに済めばいいなって思ってるのは本当だよ?」
 いつものようなジーノの台詞に、赤崎は少し不思議な寂しさを感じた。
「ナカナカ状況的にキミの本当の願いが成就するのも難しいところがあるんだろうけど、念のためこのボクが上手くいくように願掛けの一つでしておくかな?話では結構ご利益あるらしいよ?」
「……」
「信じない?ほら、言うじゃないか。なんだっけ、鰯の頭もなんとかかんとか」
「信心」
「そうそう、それ」
明るいジーノの笑顔を眺めていても僅かに心の擦れ違いを感じる赤崎は、なんだか帰り支度の動作がドンドン重たくなっていった。
「またそんな顔。ほら、大丈夫だよ自信持って?きっと伝わる。キミの思い」
「……」
「駄目なら駄目でそん時はまたいつでもボクに連絡くれてもらって構わないし。そうやって時々休憩しながら、何度だって向かっていけばいいさ。元気出していこう?」
「なんかこう、」
「ん?どうしたの?」
「もう少しだけ」
「え?」
「次、休憩が必要な時にまた、って、そういうのより、なんとなく今はもうちょっとだけ王子と一緒に、い、いたいかな、と」
しょぼくれた顔をしながら訥々とそれを言う赤崎の姿は、まるで赤崎らしからぬ感じでありながらも寧ろある意味極めて“らしい”ものでもあった。突っぱねながらも人懐っこい、男のもつそもそもの性分であった。
「え……」
「だ、駄目……ッス、か……ね……」
恥ずかしそうに真っ赤に頬染め、息絶え絶えに赤崎が言う。
「このまま家帰ったらなんか俺、王子と居るのが楽しかった分だけ、一人の寂しさ、キツいっていうか、身に染みるような気がする……んで」
「……」
「やっぱこんな子供みたいな事王子に言うのとか、いくらなんでも図々しいかな……」
「そ、そんな事ないよ!図々しくなんか!寧ろ、」
やっと戻ってきたジーノの言葉は、赤崎が飛び上るほど頓狂なものだった。
「あ、ゴメン、なんか」
「いえ……」
「なんか微妙な空気になっちゃったね」
「……そ、スね」
「少しなんて言わず、どう?泊まってく?明日は練習午後だし」
「え?いいンスか?」
「ボクだってキミを帰すの、本当は忍びないんだもの」
「うわ、なんか嬉しいかも。泊めてもらえんの」
「そう?ボクも嬉しい」
「本当に?だって王子、同室嫌だとかなんだとか言うのに」
「ああ、まあね」
「平気なんッスか?」
「平気さ。全然大丈夫」
「やった!」
「ま、キミが平気かどうかは知らないけどね?」
ジーノが不思議な事を言い出すので、赤崎は呑気な顔をして男に問うた。
「はぁ?どういう意味ッスか?」
「いや、別に」
3度目のジーノの異変を、こうして赤崎はもう一度取り逃がした。ジーノの心も見通せないまま、赤崎ははしゃいで笑っていた。それを見てジーノも同じように楽しそうに笑ってははしゃいだ。

「ねぇ、ザッキー」
「何ッスか?王子」

その時にジーノが赤崎に言ったキッカケの言葉は

――本当に男同士がいいなと思うの?キミは

続いた言葉は、

――今日のお話、覚えてる?男の恋って心と体が繋がってるんだ

4度目のジーノの異変はほんの僅か数時間後。流石にここまでくれば取り逃がしようもない兆候に気付いて、赤崎は一体どうなったのか?
「ハハハ、それは想像にお任せするよ」

      ジノザキ