二人の日常、二人の秘密2
【8745文字】
飼い主目線の続編は前作よりも時系列が過去から始まっています。基本のんき。でも飼い犬があまりに厨二っぽいノリなんでちょっと笑ってんだけど変な意味で影響受けちゃっている的な?日常の細かいのを妄想して書くのは楽しくて、だらだら長くなりがち。
彼は一見大人びていて、実はとても子供だよ。すごい選手になりたいみたい。僕も楽しみにはしているよ。
甘えん坊なザッキーだけど、やっぱりまだまだ不器用なんだ。意識のない時少し素直で、だから一緒に寝るのが楽しい。
「う……ん……」
ふふ、ほらね。こんなに可愛い。この頃、自らそっと抱きつき、すやすや眠れるようにもなった。彼の無意識は今では十分、僕の在り方を理解している。けれど自覚はあまりないみたい。
(ううん、ないんじゃない。知りたくない?そういう感じ?ねぇ、ザッキー?)
(痛……)
抱きつく指が傷に触れ、それがあるのを自覚する。これはザッキーからの僕へのギフトで、とても大切なものなんだ。ザッキーは本当にうんと子供で、仲良くなるのを怖がっている。
「ザッキー……」
おそらく本気で求めれば、彼は与えてしまうだろう。それはまさに献身で、確かに一種の愛でもあろう。けれどその実、内容自体は、根本的に異なるだろう。
(ずっとこのままでいたいかい?君が決めていいんだよ?)
僕達はまだまだ互いに若く、時々ほんのふとした拍子に本能的になってしまう。好きなものには触れていたいし、うんと近くで感じ合いたい。けれど彼は未だにその幸せに強く不安を持つようで、震え、怯え、それでも求めて、やがて自分にひびが入って、ついには爪を立ててしまう。搾取になっては意味がない。見守る、手放す、それも愛。でも眠る子供の染み出る心が、僕の心をも静かに揺らす。愛とは一体何なのか?愛し合うとはどういうことか?詮無いことを考える。その手の問いには答えがない。
(僕ってちゃんと愛せてる?)
好きで、好きで、可愛くて、大事で、大事で、堪らない。僕がいないと駄目なくらいに、そんな邪悪が闇夜に過る。
(違う。僕は君を強くしたい。君が君に夢見るものを、誰よりそれを知るこの僕が……そんな風に思っているよ?)
かけがえのない家族、そういう存在。そんな君の笑顔が欲しい。
「ん……王子……」
抱き合い、体をぴったりくっつけ、すっかり寛ぎ呑気に眠る。大の大人で、むにゃむにゃ寝言で、僕の君のそんな姿が不思議で、可笑しく、心地いい。
「好きだよ、大好き。愛してる」
その耳元に小さく囁き、君の見る夢に届けたい。この先何度もこういう時間を幾夜も重ねて暮らしたい。沢山今を、この先も、ずっとずっと感じたい。甘くも苦いこの世界からすぐさま逃げ出したいくせに、泣きたくなるほど、切実なほど、強く激しく望んでしまう。
(ああ、まさにこのギリギリの……)
近づくことを怖がる君に。歯向かうことにも自ら傷つき、子供のように爪を噛む。自分を自分で憎んで挫く、愚かなほどに優しい君に。
「おやすみザッキー。愛してる」
キスは、耳へと。そして首へと。頬ずりをして、胸が痛くて、この甘い夜、もう身動きも。
(僕も早く眠らなきゃ……平気だ、今を愛せてる)
僕は雨垂れ、彼は岩、怖くないよと両手を広げ、笑って、おいで、と声を掛け、挫けることなく繰り返す。気の遠くなる小さなノックの、陰でまさに、降り注ぐ闇。君の匂いと笑顔を思う。平気だ。僕は。大丈夫。
(……ねぇ、だから、お願いだから)
僕はしみじみ今を噛みしめ、そんな間も撫でまわされて、子犬のようでいながらも、彼はそれでもセクシャルで、奥ゆかしいというよりも、寧ろ少し浅はかなんだ。僕の匂いを堪能しながら如何にも満足そうに笑う。僕を呼びつつふにゃふにゃしながら、赤子のように首筋を吸い、だから皮膚がちりりと痛んで、だけど少しももう動けない。
(またやられた……その位置の痕、隠せないのに)
舐められ、やがて始まる甘噛み、時々ゾクリとしてしまう。
(……寝たふりなんかじゃないよね?ザッキー?君って本当にしょうがない)
頬で、口で、素肌を求めて、ぎゅうぎゅう僕にすり寄って、あまりに可愛く、憎らしく、僕も僕の夢を見る。
(狡いな、僕にもさせてよザッキー)
理性が、自我が、選んで欲しい。そうでなければ意味がない。だから愛を沢山食べさせ、気長に育てていくつもり。怯えながらもうっとりと、彼独特のあの目が僕を、そんな風に何度も夢見る。そして誰より上手に出来る。なんせ、僕は僕で、彼は彼だし、ちゃんとそうなれる。確実に。
