お花結び

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そよ風ロマンス第2章(水際クライシス2)

【21781文字】
そよ風ロマンスシリーズの第2章。
前半は変態遊び。番犬病みに病んじゃいまして、壊れます。話の内容もぐちゃぐちゃですが、書く文章もズタズタ汚い。しんどいけれど虐めたい……。
後半は病気療養です。こういう病気(変態性癖)に完治はないので、寛解と憎悪(ぞうあく)を繰り返させます。こんなだけど飼い主は至って正常(?)です。まだまだつられている程度。ドはまりさせるのはもっと後。の、予定……そこまで無事にたどり着けるか?

訓練

 俺はとっても幸せだ。王子が支度をしてくれている。
「んー、こんなもんかな?」
可愛い可愛い俺のためにと、王子は俺を飾ってくれた。
「大丈夫?痛くない?」
こんなに王子は俺に優しい。嬉しさのあまり笑顔が零れた。
「いってきます」
「うん、いってらっしゃい。気を付けて」

*

 今日は久方ぶりの同窓会で、最初は乗り気がしなかった。楽しみにしていたお泊りの日で、でも王子が、
「そういうことは大事だよ?」
と俺に言うので。
「でも王子、だってその日は」
ぐずる俺の頭を撫でて、離れていても平気なようにと新しい金鎖を贈ってくれた。

「お、赤崎洒落てんなぁ」
「触んなし」
首元の金鎖に気付いた輩が絡んできたので手で払う。周りの注目を浴びてしまって、あれこれちょっかいを掛けられた。
「しっかし似合わねぇなぁ?」
周りのみんながガキに思える。男も、女も、みんな一緒だ。
(くだらない……)
「でも、なんか結構雰囲気変わったよね」
「すかしてんのか?」
「カッコつけだろ」
「わかった!それって女から?かー、マジかよ、あの赤崎がっ」
何がそんなに面白いのか。昔からのこのノリ、いつもの調子。
(めんどくさい……帰りたい……)
「ねぇ、それ本当に?」
「何が」
(つか、お前が誰だよ)
親し気に話しかけてきた女の、名前が全然わからない。
「彼女。いるの?今」
正直、本気で面倒くさくて、返事もしないで杯をあおった。
「へぇ……そっか。うん、そりゃあそうだよね」
急に薄暗い表情になる。
(んだよ、いようがいまいが、お前にはこれっぽっちも関係ねぇし)
参加は大事と王子の命令。何が大事というのだろう。
「おい、お前泣かせやがって」
「は?」
「ほら、あそこ」
遠くでさっきの知らない女を、他の女が慰めている。
「知るかよ。つかなんであれが俺のせい?」
「お前はほんっと」
大息をついて肩を叩かれ、痛てぇなぁ!?なんて思いつつ。
「相変わらずのフラグクラッシャーぶり、頼もし過ぎ」
「やっぱお前は俺らの仲間だわ、な?彼女なんて嘘だろ?遼」
(うっせ、ばぁか)
遠くの料理に腕を伸ばせば、王子の優しさが体に響いた。そんなことで顔が綻ぶ。そのことに周りがまた騒ぐ。
「お?なんだそのスケベ顔!」
「やべぇ、やっぱりお前裏切り者か?」
「どした?」
「それがな?こいつ、急にニヤニヤ思い出し笑いを」
何度も何度も時計を見ながら、その都度、俺は王子を思った。早く会いたい。帰りたい。
「よー、赤崎久しぶり。最近どうよ、調子のほどは」
新しい奴がまたやってきて、飲もう、騒ごうと大きな声で。
(勘弁してくれ、また増えた)

仕事のひとつとウインクしながら、王子は笑って言っていた。

――行っておいで、ザッキーに会いたい人が沢山いるよ

(まぁ、確かにそうかもしれない)

――みんなを幸せにしておいで

 そんなこと、俺が出来るものなのだろうか。王子のように笑うのが、あまり得意な方じゃない。
(結局、何をどうすりゃいいんだ)
 それでも杯を交わしていると、不思議なことに気持ちが伝わる。
(別に、興味なんてねぇんじゃねぇの?)
俺を応援してくれている。オリンピックにワールドカップ、わからないなりにそれなりに、俺達の、とか、日本代表!とか、思いが俺の元気になって深く浸透していく感覚。
「サインいい?知り合いに頼まれちゃったんだ」
「……あ?あぁ」
誰かの幸せをペンで生み出す。それが俺の幸せになる。あらためてそれを認識しながら。
(王子はこんなことしない……する必要もないほどあんたは……)
安酒はいつでも回りが早くて、思考がフラフラとりとめもない。
(……まだかな、解散)
数えきれないほどのサインを次々書きながら、心が行ったり来たりしていた。なんだか金鎖が重く感じる。何かが間違っているような。
「ほら、そろそろやめとけやめとけ。お前の手首がいかれちまう」
(いかれちまう?何が?誰が?え?俺が?)
急に動悸、脂汗。もしや全部バレているのか。俺がすでに俺じゃないこと。
(ヤベェ、結構酔ってる……?)
少しでも体を動かせば、あちこち呪縛で引き攣っている。甘い感覚が体に湧いて、止まらなくなるような激しい恐怖。
(あ……駄目だ……早く帰らなきゃ……)
締めはみんなで一本締めで、ホッとしながら家路を急いだ。

違ウ、帰ルナ、誰カニ言ワナキャ……助ケテ、コレヲ、外シテ、ト……

*

「おかえり、ザッキー」
目が回る。
「酔ってる?少し顔が赤い」
「……」
「シャワーは一人で大丈夫?そう、なら行っておいで」
これも現実のはずなのに、歪な夢の中のよう。
「本当に平気かい?」
大丈夫。平気です。そんな笑顔を王子に返す。何を以って平気と成すのか、俺には全然わからなかった。

*

「大丈夫だった?」
風呂上がりの俺の手を引いて、一緒に行くのは王子の寝室。バスローブを脱がす手つきがいつになく恭しくて、それだけで嬉しくなった。王子が俺を観察している。痛いほどの冷たい視線がゾっとするほど心地良い。
「楽しかった?」
「まぁ、そうッスね」
「それは良かった」
ネックレスの部分を指先でなぞり、感情のない声で王子が言う。自分で尋ねておきながら、エンジョイしたのかどうかなど、さほど興味もないようだった。

 ネックレスに繋がっている鎖は今では四本。雫がつたうみたいに指が這う。
「女の子、たくさんいた?」
二本は上腕に巻きつく輪に繋がっている。脇に近くてこそばゆい。
「泣いちゃったのかい?それは何故?」
残りの二本は以前と同じに、胸の飾りに繋がれている。
(痛っ……)
かつてはニップルリングであった。そのうちそれはクリップになり、先日いよいよピアスになった。王子が鎖を軽く引くので、まだ新しい傷に響く。
「答えて。その子がなんで泣いてたのか」
「あ、っ」
王子は上手に俺を虐める。戯れだとはわかっているのに、千切れてしまうのではないかなんて、戦慄ばかりが色鮮やかだ。信頼と不安、愛と裏切り。王子の処方は逆に、逆に、翻弄の中で自分を失う。
「ふぅん……」
「……っ、……」
淡々とチェスをしているように俺に囁く。
「食べちゃえば良かったのに」
言われるような予感はあった。
「こんなの外して。ねぇ?ザッキー」
逆説的に俺が求める、王子からの宝物。発言を束縛と考えたい。嫉妬とこれを受け止めたい。絶対違うとわかっていながら、誤解しやすいように微笑んでいる、そんな王子の態度が嬉しい。
「自分では外すなっ、て、あっ」
「今日はその指示出してない」
 胸のピアスからも鎖が垂れる。まだ貼るだけのへその飾りにVの字の形に繋がっている。鎖に沿って降り行く指の気持ちの良さに脳が溶ける。
「駄々を捏ねるからつけてあげた。ただそれだけのことなのに」
(王子、ああっ、気持ちいい……)
「ちゃんとわかっているよね?ザッキー?」
催眠術にかかったみたいに意識が空を彷徨っている。腰骨に巻きつく鎖は多重。人差し指から小指で四本、左右で八本の王子の指が、カーテンを開けるみたいな手付きでするするそれらを同時になぞった。
(あぁ、駄目それ……イ、……)
脇腹は本当に弱点で、自然に腰が浮いてしまう。達する直前ギリギリまで刺激が続き、仰け反る俺の背中のところにそっと枕が差し入れられた。両手は赤ちゃんみたいにバンザイ、足はされるがままに開かれた。今日のあれこれが吹っ飛んでいく。もう何も考えられない。
(く、こんな格好……)
金鎖なんてひとつも似合わない。自分が一番知っている。あまりに無様でだらしない、そんな俺を王子が見ている。イノセント過ぎる残酷な目で。
「あ……、ああっ」
 腰骨を緩く這う弛んだ金鎖をたどり、王子の指が太腿に至る。レッグチェーンと呼ぶそうだ。付け根のそばから膝上にかけて、紋様を編むように幾重にも絡む。女性的で繊細なデザイン。交差の箇所にはささやかながら、綺麗な石が飾られている。全部でいくらかまるきり知らない。猫に小判。豚に真珠。下卑た生き物であるほどに、鑑賞の意味があるらしい。
(じゃなきゃ、こんな……)
ここはいかれた倒錯の世界。食に飽きた、ゲテモノ食い。ああ、そして説明が抜けた、金鎖の最後の一本が。
「あ、ああっ……外して、早くっ」
腰巻く金鎖の背中の中央から伸びる一本。割れ目に沿って股から前へと。先には、半透明のシリコン製の、縦に四連のグロテスク。メリケンサックのような不思議な物体。男性器にはめ込む形で、根元からジグザグ、憑りついている。
「あ、やぁ、王子ィっ」
直径の異なる卑猥なリングが、じわじわ俺を締め上げていく。
「痛っ、おう、じっ」
「馬鹿だなぁ、勃たせるからだよ。変態ザッキー」
出掛ける前に王子がこれを差し出した時、いつにないスリルを感じたりした。だが実際、昂ぶりで効力を発揮しだすと、刺激の強さにパニックになる。
「とって、王子、や、変、なるっ」
「なっていいよ、そのためのプレゼントなんだから」
視姦を受けながらの不可思議な刺激に身悶えながら、イケない苦しみに唇を噛んだ。
「駄目だよその癖。傷になる」
こうなれば王子の非情も興奮の種で、屹立で食い込む感触に一瞬萎えてはまた滾り、もがき喘ぐ時となる。恨み言と悦びでぐちゃぐちゃになり、弛緩と緊張が繰り返される。恥ずかしげもなく嬌態を晒し、王子は満足しているかなと、褒めてくれるのを夢見てしまう。
(王子……楽しい……どうかしてる)
遊びは回重ねるごとに、俺の日常の一部になった。望まれるがままに引き摺り出されて、王子に無理を強いられたい。
「あ、取っ……痛……っ、あ、イッ……」
赤黒くそこが充血している。戒めが俺を窒息させる。快感と絶望、気が遠くなる。いっそこのまま身悶え狂って、そのまま果てて消え去りたい。

「イくだけイって最後に出して、どう?すっごく良かったかい?」
取ってもらった記憶は、ない。でも、顔も下半身もぐしゃぐしゃだった。
「もう寝て、ゆっくり。おやすみザッキー」
何がどうなっているかなんて、まるで全然わからなかった。この感覚が懐かしかった。今日は王子に行けと言われて、少しここから離れていたから。
「今日のは流石にヤバかった。ほら寝てザッキー、明日に障る」
タオルで汚れをあちこち拭って、されるがままに服を着る。ベッドサイドに金鎖が光る。半透明の戒めも。
「王子……」
立ち去ろうとする人の服を摘まんで、行ってくれるなと目で訴える。多分戻るまでに眠ってしまう。それがとても心細い。
「軽く洗ってくるだけだから」
手に汚いタオルをぶら下げて、なのに王子は完璧な美で、見惚れて何も言えなくなった。
(いやだ……眠りたく……な……)
俺は王子がピカピカにした。けれど汚いままに思った。ちゃんと消毒して欲しい。王子を汚す自分が嫌いだ。それでもこんなに委ねるほどに、俺は王子に溺れていた。汚れの研究をしたいというなら、すべてを捧げてみてもらおう。
(王子……)

 これから先の時期の記憶はますます断片的になる。全部をあげてしまったからだ。王子を得られる日が来なくとも、とうとう受け入れ、選んでしまった。

 つまりはついに壊れてしまった。俺の正気は戻らなくなり、そんな日々をしばらく経てから、来るべき、恐るべき日が俺のところに来たのであった。