そよ風ロマンス第2章(水際クライシス2)
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そよ風ロマンスシリーズの第2章。
前半は変態遊び。番犬病みに病んじゃいまして、壊れます。話の内容もぐちゃぐちゃですが、書く文章もズタズタ汚い。しんどいけれど虐めたい……。
後半は病気療養です。こういう病気(変態性癖)に完治はないので、寛解と憎悪(ぞうあく)を繰り返させます。こんなだけど飼い主は至って正常(?)です。まだまだつられている程度。ドはまりさせるのはもっと後。の、予定……そこまで無事にたどり着けるか?
隔離
帳尻合わせか何かだろうか、痛みに溢れた生活が続くと、種類の違う幸運が降ってわいたり、舞い降りたり。
「そうなんだ?良かったね」
「……」
「ずっと目指してきたんだものね」
久しぶりに話した王子は、手放しで喜んでいる風だった。いや、正解なことは理解している。みんなが喜ぶことだから。でも、もうすでに今の俺には、よくわからないことだった。
「それに、そろそろ僕らも潮時だしね」
「……えぇ、まぁ……そうッスね」
ありがとう、俺の全てを掻っ攫い、がらんどうにした王子。
「ザッキーは利口で助かるよ」
さようなら、どうにもならないことがあると、とことん俺にわからせた人。
「元気でね」
きっと貴方は明日にでも俺を忘れてしまうだろう。そして俺が思ったことは。
(王子こそ良かったですね。当たり障りのない不可抗力だ。皮肉抜きに、おめでとう)
俺はとっくの昔に壊れた玩具で、それでも会わざるを得ないチームメイトで、努めて距離を置こうとしても、お互いなかなか難しかった。
いつも勝手に出てくるくせに、一滴の涙の気配もなく、怒りも、恨みも、不安も、気負いも、本当に俺には何もなかった。全く何も感じなかった。それに危機感を覚えることすら、何も出来ないままだった。
*
移籍後。日本人の癖にふてぶてしいと絡まれて、クソくらえだと俺は思った。頭にきたとかいうわけじゃない。ただ
(くだらない……)
とそれだけだ。煌めく世界と信じ続けて、何度も思い描いた場所だった。綺羅星のような選手達、夢にまで見たスタジアム。地鳴りのように響く歓声、この国における競技の在り方、サッカーが日常である世界。目新しいものに触れた感覚は確かにあったが、それも結局最初だけで、俺はすぐに今に慣れた。中堅どころのチームとはいえ、歴史あるリーグに身を置きながらも、山のあなたの空遠く、あるのはただの現実なのだ。
(異文化?……そんなのたかが知れてたな)
あまりにも地続き、平凡、凡庸。空を眺めて息を吸う。
(何もかも、王子との日々に比べれば)
慌てることが少なくなった。熱くなることもほとんどない。常に頭が冷めていた。
(大人になったということだろうか)
昔の俺を知る人間も、軒並みそれを驚いていた。それほど俺は適応していた。
淡々と続く平坦な日々。俺は漂う海藻のようで、そよそよ現実を彷徨っていた。太陽の光に包まれ、海流にこの身をすっかり任せて、その日暮らしの生活をした。
「……?」
いないのに。ふとした拍子に思い出す。今ではすっかり珍しい、襟付きのデザインのユニホーム。レフティ。黒髪。長い睫毛。静けさ、そよ風、青い空。概念が記憶を混濁させる。過るというより濁りを感じる。感じる濃度や頻度は減ったが、それらは日々に沈殿していて、舞い上がるような檻のように、ふとした拍子に漂っていた。
