そよ風ロマンス第2章(水際クライシス2)
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そよ風ロマンスシリーズの第2章。
前半は変態遊び。番犬病みに病んじゃいまして、壊れます。話の内容もぐちゃぐちゃですが、書く文章もズタズタ汚い。しんどいけれど虐めたい……。
後半は病気療養です。こういう病気(変態性癖)に完治はないので、寛解と憎悪(ぞうあく)を繰り返させます。こんなだけど飼い主は至って正常(?)です。まだまだつられている程度。ドはまりさせるのはもっと後。の、予定……そこまで無事にたどり着けるか?
療養1
俺の普通をしていたら、時々代表に召集された。親善試合、お試し戦術、主力に離脱があった時。どこに嵌めてもそこそこ使える、穴埋めのような存在だった。元々の俺のポジションは激戦区であり、ほとんどやったことはないが、そこについて妬みや劣等感のような負の感情はほとんどなかった。おめでたい人間になったつもりもないが、光栄だとかは薄っすら感じた。適応力は大切だ。唯一俺が身につけたもの。
そんな俺にとぼけた椿は、さらりと不思議なことを言う。
「最近ますます空気がなんか」
馬鹿馬鹿しいと苦笑しながら、でもこれを言われるのも初めてじゃない。
「全然似てねぇよ」
王子は眩いほどに明るくて、毒舌ながら優しくて、自分勝手で我儘で、唯我独尊、世界の中心、台風の目のような怖い青空、浮いているような存在なのにその実どこにも調和していた。そう、調和。適応力。
「そうなんですけど、いや、そういう感じの話じゃなくて」
要領を得ないのは昔からそう。代表内の位置づけも、キャップ数も段違い、なのにいつまでも俺は椿にとって先輩という位置づけだった。胸を借りる調子で笑って、でも気軽にされるその甘噛みに、びっくりするほど痛んだりする。
(ったく、昔からこいつは敏感なんだか鈍感なんだか)
欠点のような稀有な個性。こいつは昔王子のことも、何の気なしに煽ったりした。椿の言葉には力があって、珍しく王子も反応していた。
(言われる側の気持ちだなんて、思う間もなく言うんだろうな)
俺はあいつの一列後ろで、ピッチの大外の子守りの位置で、いわゆるハードワークの使い捨て、何が王子だと笑ってしまう。何もかもが全然違う。なのにギクリとしている俺に、やはり椿は気付きもしない。
(ったく、相も変わらず怖ェ奴だよ)
後半遅くにあいつは出てきた。スタジアムは客寄せパンダの出場に大いに盛り上がりを見せていた。花形選手の自覚もないままに、伸び伸びと無邪気に駆けていた。王子があの日に指示したように、自由に、そして全力で、笑って、心底エンジョイをして。
(やっぱ、すげぇわ)
世間知らずと思っていたが、ここまでくれば真性だ。俺はあいつが放棄する空間を駆けずり回って埋めていた。飼い主はピッチの上にいないが、この瞬間が愛おしい。
(あの日の俺には力がなかった。王子は俺の子守りもしながらこいつのことを走らせていた)
王子が自由を手に入れたなら、王子は椿にどうしただろう。俺は部外者として垣間見た。王子が生きて駆けてる姿を。
(あの非公式の引退試合に、今の俺は参加出来るか。いや、まだまだ駄目だろう。こんな程度全然だ)
悔しさではなく、分析的に、意識が自然に浮遊する。それはあれの兆しでもある。俺が自由になる瞬間。
(そう、違う。もっとワイドに)
椿や王子や達海さんとは、高度が段違いだと思う。それでも広角レンズのようにピッチを見通す瞬間がある。選手達の意図まで見えた。双方向なら確率は上がる。
(走れよ椿。投げ出した穴はなんとかしてやる)
解散時、別れ際の明るい笑顔。
「ザキさん、じゃあ、また!」
気軽なことを勝手に言って、俺も笑って手を振った。あいつはすっかり常連組だが、俺は次などないかもしれない。
(ある意味、お前の方が王子に似ている)
俺の一面がそれを思って、でももう一面が俺に言う。
(本当にあの人は不思議な人だ。椿はあの日初対面で、俺のことは記憶になくて、なのに今この未来を理解していた。なんで資質が見えるんだ)
人は、自分にないものは理解が出来ない。そんな話があるらしい。王子の引き出しの底は深い。そんなことを考えていた。
