お花結び

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そよ風ロマンス第3章(さざ波コンフルエント1)

【13041文字】
そよ風ロマンスシリーズの第3章。
ジーノ視点。ごめんなさい、軽くですがジーノのモブカノとのお付き合いやワンナイトラブ描写あります。最後のページと書いていましたがよく見たら最初のページにもありました。

 ともかく、僕は小さい頃からそうだった。普通にしているだけでわかることを口にすると、怖がられたり、尊敬されたり、変に距離を置かれたり。
(どういうこと?よくわからない)
人とのコミュニケーションを行う際の材料は、決して言葉だけではない。ただそれだけの話に過ぎないことを、不気味がられるのは心外だった。負の感情など気付きたくもないのに、そういう類ほど強く伝わる。
(わかるからって指摘をしたり、嫌な顔をすると駄目なのか)
いわゆる、扱いにくい子供でなくなるために、僕も色々考えた。余計なことは言わない、見ない。過度?な反応はもってのほか。適切に加減を調整するのは子供の僕には難しかった。無口だとか、大人しいとか、気分屋だとか、偏屈だとか、僕の評価は変化し続け、天然という印象を得た時に、ようやく楽になれたのだった。
(そう、伝わることの大部分はノイズ。結局そういうことなんだ)
心の集中力を散漫にする。半端な程度にぼんやりとする。笑顔を絶やさない。話したことだけ参考に、他はなるべく遮断する。労力の持ち出しは最初だけで、慣れていくほど負担も減った。失礼な子供ではなくなって、大人は特に喜んだ。可愛いなんてキスしてくれて、これでいいと判断をした。
(よかった。そうだよ、僕は気のいい人間なんだ)
 僕がこうなってしまったのは、そんな日々のせいかもしれない。対処の仕方を雑に学んで、僕はこうして後天的に、僕という者になったのだった。

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 他人への興味もいつも半分、漠然と。それでも近づかれたら見てしまう。
(あ、この子、僕が好きみたい)
人には色々思惑がある。
(ふうん、彼氏がいるようなのに、それを僕に言う気はないんだね。保険は手放さず僕にチャレンジ?なるほど色々タフな子だ)
指摘をすれば角が立つ。秋波の無視も簡単だ。それでも一人は退屈で、折り合いのポイントを模索する。
(根こそぎ心を奪えもするけど、まあ、そうだね……とりあえず)
丁度いい、を日々学ぶ。そういう特技はあるようだった。中途半端に近づいて、小さく生じた幸せを二人でシェアして仲良く食べる。
(それよりもこの前のあの子、結構いいな。そう、どうせだったらああいう子)
隠し事をしない人。裏と表が少ないタイプ。単純くらいが丁度いい。それでも少しは利口がいい。ようするにややこしいというのは明らかに、トラブルの元ということだ。天真爛漫、天衣無縫、笑う門には福来る。

「奇遇だね。僕も君が好きなんだ」
 僕だけを好きだと思う子は、僕も概ね好きだった。かまって、触れて、キスをする。心と体をあちこち擽り、やがて僕と一つになった。すると僕のいい子になった。感覚が徐々に同化を始め、僕が辛く思うことは阿吽の呼吸でしなくなる。
(かわいい。結構ちゃんと出来るじゃない)
 様々な腕に惹かれてあちこち彷徨う。沢山の愛と体を受け取る。貴方が欲しいと心を開かれ、僕は笑ってキスをする。退屈が少々紛れもするし、寛ぐ感じも心地よく、ゆっくり眠れて疲れも取れて、いいこと尽くし、ハッピーエンド。
(好きだよ、僕も君のこと。一緒に居るのが随分楽だし)
 相手に寄り添い優しくすると、彼女達は随分喜び、やがて必ず僕に言う。
『貴方のことがわからない』
特別隠しているわけでなく、騙している気なんてもっとなく。彼女らの思いが嬉しくて、幸せを願い寄り添っていた。ただの気のいい僕だった。何かを強く求めもしないし、けれどみんなが自滅していく。
(どういう意味?何故?こんなにシンプルな人間そういない)
何故そうなるのかわからなかった。一緒に居るのに安らぎが減り、そうなると自然に疎遠になった。小さい頃からずっとそうだ。僕は昔から雨が嫌いで、だから雨の気配に少し似ている涙も別れも得意じゃなかった。

 何故、人は僕を不審がるのか。何故、気を病み勝手に疲れていくのか。
(人って面倒くさい……)
僕に悪気は一つもなくて、悲しいことなど聞きたくなかった。結局一人が気楽で良かった。自由気ままに出来るから。

 家具も食器もしゃべらない。
「へぇ、この椅子いいじゃない」
物に見える心は程よい。制作に携わる人々の、選んだ材料、形の思想。ささやかな工夫、さりげない技能。試行錯誤、完成度、静かでそれでも確固としていて、大変心地よいものだった。物言わぬお気に入りと心を通わす。それが錯覚だとしても、そうして物と暮らしているのが一番心が寛いだ。自分が自分のような気がした。