お花結び

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そよ風ロマンス第3章(さざ波コンフルエント1)

【13041文字】
そよ風ロマンスシリーズの第3章。
ジーノ視点。ごめんなさい、軽くですがジーノのモブカノとのお付き合いやワンナイトラブ描写あります。最後のページと書いていましたがよく見たら最初のページにもありました。

 通常、僕の意識は半分だった。正気をたまに取り戻すのは自分に対する強い感情。
(邪魔だな。誰?)
練習中に感じるそれは、グチャグチャしている奇抜なもので、被対象も自分かどうか、そういうことすらわかりもしない。
(車酔いならぬ感情酔いだな。吐くほどじゃないけど気持ちが悪い)
キンキン僕に響いて痛くて、腹いせ紛れにボールをぶつけた。静かにしていて欲しかったのだ。でも、何故あんなことをしたのだろうか?言葉でないものは無視をする、面倒事にはかかわらない、それがポリシーだったのに。
(なんだろう、最近調子が変だ)
特に体が変だった。動悸がしたり、苦しかったり、眩しかったり、火照ったり。感度を無理矢理下げようとして、尚更起伏が激しくなったり。
(嫌だなこういう感じ……)
特殊な形の不安定。僕は影響を受けていた。距離を取ろうと考えるほど、それ故自然と目が追った。逆説的な自己矛盾、こういうことも珍しかった。

(頑張って閉じ込めても無理だよザッキー。それは明らかに)
僕にとってノイズというよりも、極めて騒音に近いものだった。日に日にそれは大きくなって、僕の戸惑いも増えていく。
(僕にどうしろというんだい?)
垣間見える彼の中は、好きと嫌悪が同居しながら殴り合いの喧嘩をしていた。そうして一人でザッキーは。
(雑過ぎるよザッキー、僕までもろとも否定して)
僕を求め、同時に憎み、彼は僕ごと切り刻む。葛藤するならご勝手に。なのに彼は加減もせずに、暴力的に僕をも巻きこむ。
(嫌いでも好きでも何でもいいから、もっと単純で、自然に普通に。ザッキー、それでいいんだよ)
ザッキーの重さが辛かった。僕の中にないものだから。

 ただでさえこの世界は広いし、人類の歴史だって短くはない。全人類を実際に見て歩くというのは不可能だ。けれど、短いながらのこの人生で理解してきたことがある。
(やはり女性性を持つ人間の方が論理的で意思疎通がしやすい)
メンタルの起伏が多少あるものの身体的仕組みによる部分も大きく、彼女らは自らそれを認識しコントロールする努力も行っている。一方、男性性を持つ人間はどうだろう?もちろんこの僕自身も男性であり、一概にカテゴライズは出来ないけれど。
(ザッキーはかなりの典型例だ。わかりやす過ぎるほど好戦的で)
その愚かさを別に軽蔑はしない。貪欲でありながら臆病で、なのに我慢も不得手な我儘。脆さを隠す虚勢と暴言、背伸びでふらつく憐れな足元。それらについての認識を『微笑ましい』と修正可能だ。けれど。
(彼は自分を強いと考えている。土台が誤認で成立している以上、齟齬の是正はほとんど無理だ)
僕は僕自身にそれなりの価値があるのを自覚していた。人の中身の学習を重ね、自分を磨いた自負もある。だから同性だからといって、彼が僕に好意を持っても、特段不思議に感じなかった。
(人は人を求めるものさ。それは普通のことだよザッキー?自然発生する思いを破壊し続けるのは不可能だ)
そも、彼はサッカー人間だった。情熱の道筋は元々一つで、分岐の辛さが見て取れた。基本、不器用なタチなのだろう、日に日に深まる混乱は、あまりに露骨で明らかだった。
(彼には自浄作用がない。どうする。無視し続けても解決しない)
他人の人生を考えるのは、差し出がましい上に益もなかった。なのに自身を縛るザッキーの糸が、僕にもきつく絡んで食い込む。その実害に音を上げて、迷いながらも、決断をした。
(割れた情熱のケアをしよう。ハグをして、キスして、昇華をさせる)
ザッキーの恋は狂暴で、でも制御出来る自信はあった。自覚を促す手助けもする。自分への害をなくすため。
「経緯と推移、僕への要望。それを君に問うだけだ」
彼は大きな図体をした、単なる少年でしかなかった。知らないものに怖くも惹かれる。知ってしまえば目が覚める。
(子供?ただのケダモノだ。性欲の制御も出来ないなんて)
気持ちのざわつきは嫌悪感にも似て、けれど距離を置こうにももう無理で、僕は前へ進むしかなかった。
「助けてあげるよ?簡単だ。さあ、肩の力を抜いて」
時々感じる知らない感情。
(さあ、早く大人にしてしまおう)
僕は僕の中に生じている感情について、咀嚼出来ない不可解を抱えた。つまり己という基準にブレが生じたということだ。それは進路を示す方位磁石が馬鹿になるのと同じことで、それに気付けぬ間抜けな僕は、大失敗をする羽目になる。