お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

*

そよ風ロマンス第3章(さざ波コンフルエント1)

【13041文字】
そよ風ロマンスシリーズの第3章。
ジーノ視点。ごめんなさい、軽くですがジーノのモブカノとのお付き合いやワンナイトラブ描写あります。最後のページと書いていましたがよく見たら最初のページにもありました。

 彼には根深い性嫌悪のケがあった。それについて僕は把握は出来ても、理解が出来ない状態だった。
(いい子。ザッキー大人しくして?大げさに考え過ぎなんだ。してみればちゃんと君にもわかる。こんなの大したことじゃない)
行為は言葉と同じように、かかわるための道具と手段だ。それを知らないザッキーは、毎日独り言のようにそれをしていた。支配欲を僕に向けても確かに無駄なことでもあるが。
(意外なくらい現実的だ。無理だとちゃんと理解している。なら尚更話が早い、思い出作りで成就といこう)
あの日、僕のあだ名を呟きながらザッキーは一人で自分を慰め、涙のように精を垂らした。静かで、まるでため息で、でも激情が渦巻いていた。
(一人で喋って何になる?亜鉛を無駄に吐き出して、体が疲労するだけだ。あまりにも意味がなさ過ぎる)
僕の認識が甘かったのだ。わかりもしない問題を何故解けると考えたのか。自らの変質は既に始まっており、僕はもうかなりどうかしていたのだろう。

「この世に沢山材料はある。そして君は僕を選んだ。ザッキー、それで十分だ。それは一つの理由になりうる」
彼は全てを否定していた。僕が手ずから働きかけても、一緒に僕をも罵倒した。
(いいこと一杯してあげるのに。なんでこっちを見ないんだい?)
見る目も、聞く耳も放棄して、凝り固まって怒りに震え。弱い犬程よく吠えることを僕は知っていたし、如何に彼が侮蔑的な言葉を浴びせようと力んでみても、一切痛くも痒くもなかった。この時僕がよく考えなければならなかったことは、ザッキーの行動原理ではなく、触れ合うことにこんなに怯える状態そのものであったのだ。僕はそれを軽んじた。犬には吠える理由がある。理由がとても大切なのに。

「ここまでする気はなかったのにな」
一人がいいと犬が言うなら、そのまま放っておくべきだった。頭に疑問が過ぎったはずだ。
(そう、なんで僕がこんなことまで)
けれど愛でも優しさでもない感情により、知らず無視を決め込んだ。僕は興じていたのだろう。ザッキーは矛盾の塊で、思う逆へと突き進む。僕への思いを否定しつつも、如何にもな男の赤裸々が、降参するように反応をする。それはあまりに目を奪われるむき出しのままの成果であって、僕はそんなものが面白く、自身の揺らぎを見過ごした。
(あぁ、想像以上に快楽に弱い。制御に苦心するのもわかる気がする)
途中、今なら声が届くだろうか?と考えて、僕は顔を覗き込んだ。
(駄目だな。気持ちの良さに沈んでいった)
出すことだけに集中していて、意思の疎通は無理だった。けれど彼は僕の名を呼ぶ。
(これは僕への呼びかけか?それとも、やっぱり独り言……)
やっていたのは稚拙ないたずら。コミュニケーションの存在しない、似て非なるからかいだった。閉じて閉じて貝になりつつ、ザッキーはうわ言を繰り返す。
(すごいな、確かに君の手には余るね。想像以上にめちゃくちゃだ)
自らの性を否定しながら、肉欲に溺れきっていた。溺れることは願望であり、叩き潰すのに失敗しながらどんどん深みへ堕ちていく。
(すっごく今を堪能している。なのに清廉潔白を夢見てる。それは弱き者の所作というより卑怯者のすることだ。弱い者は葛藤もなく欲望が勝つ。君は自分の持ちうる力強さの使い方自体を間違えている)
物理的な快楽に震える彼と体は、とても見どころのあるものだった。単純な刺激に朦朧として、眉を歪めて呼吸を乱す。
(ほら見て、どれだけ否定しても全部が無駄だ)
彼の嘘を引き千切るのは、かなり簡単なことだった。身も世もないほどもがく子供を、お化け屋敷に連れて行く、そんな悪い大人の気持ち。気軽で残酷ないたずら心で、僕はザッキーの手を引いた。
(諦め、受け入れ、制御するんだ。ちゃんと見ないと怖いままだよ)

 ザッキーは何かを言っていた。
「待っ、待っ、駄目、」
でも僕はいつしかそれをしながら、ちゃんと耳には入れながら、何も聞こえなくなっていた。
「王子っ離っ!!」
生臭くって、変に苦い、どろり、べっとり、生温かい。気管に入ってむせこんで、顔を滴る奇妙な感触。そんなもので目が覚めた。
 生まれてこの方こんな風に、自我が飛んだのは初めてだった。相手のことを調節しながら導く力がある僕なのに、ザッキーの様子も気にせずに、思うがままに射精をさせた。完全に没コミュニケーションの世界で、けれど、そんなことにも気付いてなかった。確かにそうさせようと思ってはいた。とはいえ、予定はこんな形じゃなかった。
(なんで……?もっとちゃんと楽しんで、喜んでもらう、そんな気で……)

 何かが確実に変だった。

 どうしてこうなったのか。その意味を把握しきれなかった。だからその時僕は努めて、平気を装い対応をした。
(あれ?いつも、どんな風にしてたっけ)
表情、仕草、言う言葉。思い出すのに少し掛かった。微笑む努力もしたかと思う。ザッキーの瞼は開いていたが、彼もまた平静を心掛けつつ見事なほどに動揺していた。だから僕の変さに気付かなかった。なんだかそれがおかしくて、そしてどこか恐ろしかった。