お花結び

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そよ風ロマンス第3章(さざ波コンフルエント1)

【13041文字】
そよ風ロマンスシリーズの第3章。
ジーノ視点。ごめんなさい、軽くですがジーノのモブカノとのお付き合いやワンナイトラブ描写あります。最後のページと書いていましたがよく見たら最初のページにもありました。

 知り合いだらけの職場の片隅。何度もザッキーをもてなした。
「ほら、ちゃんとタオルを口に」
耳元で小さく囁くと、ぎゅうぎゅうに口に押し込んで、大人しく壁に肘をついて脱がされるのを静かに待った。彼にとって、性と僕は、自身を抉る鋭い刃だ。ショックと恐怖であんなに泣いて、なのに彼は僕に縋る。当たり前のように奥を弄られ、そんな日々にも慣れてしまった。
「イけないんだからしょうがないよね」
指で内部をまさぐられるのは、何より屈辱的な行為のはずで、けれど虐めるみたいにマッサージをし、焦らすみたいに指を動かす。身も心も凍らせながらも、ザッキーはそのうち硬直し、それでもずっと弄ってやれば前からだらだら液を垂らした。

互いに時間を割いてすること。せっかくならば質よく、品よく、そういうことも思うのに、僕はザッキーに寄り添いもせず、自分勝手に彼を弄った。
(楽しいくせに如何にも不幸とザッキー泣くから……単純なくせに強情で、まあ、面白いとは思うけど)
自浄作用のないザッキーは、関わるほどに混乱していた。快楽のドツボに嵌りつつ、性への嫌悪は悪化を続け、その度に僕はより一層、耳に何度も嘯いていく。
(釣られて彼も呪文を呟く……『これはただのリハビリだから。大したことじゃないはずだから』)
必死になって自分を騙して、騙しきれずに涙を落とす。理性は瀕死の重傷で、でも体は気持ちいいのが大好きで、貪欲に、快楽を拾い、学ぶ。
(中でイくのが上手になった。ふふ、もう射精出来なくてもいいのかな?)

*

 悪意を秘した醜い善意。僕の中に生まれる矛盾。可哀想にと手を伸ばしつつ、気付けば口が綻びている。

 ザッキーの体は、あまりに簡単に成長をした。欲望は必死に出口を求めて、常に内部に渦巻いて、この手で引き寄せ刺激をすれば、絶頂感だけ身につけていく。嗚咽するように背を丸め、時にはビクビク体を逸らし、唇を噛んで、歯を食いしばり、でもこの苦しさが気持ちがいいと潤んだ瞳がおねだりをする。
 溜まる苦しみを吐き出すために、僕は彼に言葉を授けた。より深く没頭するために、善がって見せろと言ったのだ。
「この部屋でだったら。よそでは駄目だよ」
射精の快感も忘れ難いか、彼は必死でそれを覚えた。
「どう?喘いだ方が興奮しない?」
薄暗がりの夜のベッドで、羞恥と欲望が彼を仕上げる。
「いいね、もうすぐ破裂しそうだ」
目を逸らさずに見てろと言った。仰向けのカエルみたいにひっくり返って、自分の両手で足を広げて、される仕打ちを震えて見ていた。
「出せたらお尻も弄ってあげる。さあ、今日こそ頑張ろう」
トラウマが彼の射精を阻む。阻むトラウマが射精を促す。殊更優しく僕は言う。
「というか、これで出せなきゃもうお手上げだ。僕じゃなくてドクトルに見せて?」
きつい目をしたザッキーの、これ以上ない情けない顔。飼い慣らされた彼の秘密が、ヒクヒク悲しく蠢いている。手塩にかけて僕が育てた。自分で弄っちゃ駄目だと言って。
「治療で声が出ちゃったら、待合室にも響くかな」
「あ、あっ」
「知り合いも聞くかもしれないね?」
「やっ、あっ」
「サポーターとか、君のファンとか。その場に居たら驚くかもね」
「駄目、いやっ!」
僕の言葉に追い詰められて、彼は必死に出口を探した。絶望の状況を想像しながら、僕にあわせて腰を揺らした。漏れ出る透明な液もいつになく多く、熱も硬さもどんどん増した。
「イくって自分で言ってごらん」
彼は本当に惨めな姿で、日頃の気丈さとのあまりの違いに僕の愉悦もいや増した。
「いいね、何度も繰り返そうか」
動いて呼吸が乱れているのに、苦しいながらもイくと呟き、途切れる度に言えと指示し、彼は素直に従った。
「イ、……イ、ああっ!」
久しぶりの射精に数回痙攣し、自らの精で彼が汚れた。彼がこれを出す瞬間をちゃんと見たのは初めてだった。肌に飛び散る白濁は、量も多く匂いも濃く、ともかく変な感覚だった。不気味で、不思議な、男の体。下品で滑稽、それでいて、この手でさせた達成感が僕の内部にみなぎっている。
(すごく悪趣味な光景だ)
完全に支配下であることを、僕はしみじみ実感をした。僕の理性の土台が揺らぐ。男の性は我儘で、自分ばかりがとても可愛い。精で他者を汚したいのは本能であり、でも彼は自分自身の欲望を、腹に吐き出し自分を穢した。
(ああ、なんだか嫌だな。こういう感じ)
ザッキーの中の男を見つめて、自分の中にも男が見える。この液が僕のものであったらどうだっただろう?そういう思いが多分に不愉快で、その在り方すらまさに男で、それに気付いてうんざりとする。
「良かったね。これで君は女の子を抱き締められる」
取り留めもない話をしながら、何故か泣きそうな気持ちになった。手助けという名の強制射精。成功すれば苛立った。

 ザッキーの性嫌悪を見ているうちに、自分の問題にも気づき始める。それは冗談抜きのこと。多分、僕の精液フォビア(それに付随する精液嗜好)もかなり根深い。挫かれて不能になったザッキーを見て、僕は何を思ったか。ざまあみろとでも考えたのか。
「さあ、いい子のザッキーにご褒美だ」
こうして中を殊更弄る、理由と動機は何なのか。
「王子、あっ、……」
今日、彼は男に戻ってしまった。
「気持ちいい?」
治してあげた。治ってしまった。それでもこんなところをまた弄られて、射精ではない絶頂感で天国地獄を彷徨っている。
 僕がこの手で成長させた。この指でとことん惨めにさせた。戦闘的で意地っ張り、筋肉質で固い触感。頑丈なのに中身が子供で、右も左もわからない子に倒錯的なことを仕込んだ。
(ザッキー、君は男だよ?)
僕は歪んだ形の性快楽をすり込むようにたくさん与えた。彼は何度もそれに溺れて、余すことなく身につけた。悪しき体験を積み重ね、おそらくは本来の意に反した方向へすくすくと芽を伸ばし根を張った。正気でなんかいられない。彼は壊れていくだろう。
(君はなんて馬鹿なんだろう)
かつて、彼は僕を好きだった。でもこうなることを感じていたのか、踏みとどまろうと頑張っていた。彼は僕の何が好きだったのか。結局こういう一面だったか。彼は奇妙な生き物で、わかりやす過ぎるように思うのに、よくわからない部分も沢山あった。ちゃんと聞いておくべきだったのに、彼の思いを壊した僕にそれをするのはもう無理だった。
 彼にあるのは本能のみで、人間性はほとんどなかった。
(グニュグニュ動いて、ああ、変に生々しい……)
体として、内壁として、ぬめりけとして。肌とは異なる熱として。いわゆるある種の洞を感じた。愛し合うことを知らない体が『使ってほしい』と無言に語り、だから頭を振って目を覚ます。
「ザッキー、今日は頑張ったよね。えらいね、すっごくいい子だよ」
落ち着かなくて会話する。これはチームメイトのザッキーなのだと、何度も頭で繰り返す。心臓が痛い。呼吸が苦しい。これは重い病と思う。
「返事して」
返事など出来るわけがないくらい、自分で彼を攻めているのに。意識と行動が剥離して、気持ちが悪くて、心地いい。
 酷くアンバランスな状態は、僕を少しずつ不安にさせた。フォルムに発情する男の罪が時折僕を苛んだ。そう、僕も男であって、同族の肉欲をこの目に映して、刺激で促進されていた。
(あ、結構ヤバいかも……)
初めて感じる自分の肉欲。体は肉を経験していて、疼いて時々堪らなくなる。実際、無防備な彼を虐げるのはとても簡単なことだった。だが一線を超えることはなかった。タガが外れた瞬間もある。それでも出来ない、そっちに近い。しないのではなく無理だったのだ。トラウマが僕をも突き刺すからだ。