そよ風ロマンス第3章(さざ波コンフルエント1)
【13041文字】
そよ風ロマンスシリーズの第3章。
ジーノ視点。ごめんなさい、軽くですがジーノのモブカノとのお付き合いやワンナイトラブ描写あります。最後のページと書いていましたがよく見たら最初のページにもありました。
ザッキーにとって、僕イコールいわゆるそういう道具であった。体はすっかり良くなったのに、子犬のように僕(快楽)を追う。
「さあ、出たなら早く片付けて」
自慰が終わった空っぽの君は正気じゃない目で僕を見ていた。
(まるで自傷行為のようだ。そしてそれに付き合う僕は……)
マンションの地下の駐車場。無骨で遊びの感じられない、明るく、暗い、不思議な空間。佇んでいた彼が憐れで、出掛ける直前、かまってしまった。
「ザッキー手間を掛けさせないで。時間がないって言ったのに」
そうして、無下に車から追い出した。彼は自分を引き裂くが、僕に深く傷つけられれば、少しの間は悲鳴が出ない。死んだみたいに大人しい。
ミラー越しに見えていた姿が消えて、ふと僕も現実に戻る。
(これじゃ、今から他の子、乗せられないな)
今日は車でドライブの日で、今日は彼を無視すべき日で。なのに今、車の中はザッキーの精の匂いが漂っていた。
(匂い、気付くかな……こういうことに鋭い子だけど、僕のじゃないとか流石にねぇ。色々言われると面倒だ。なんでかまってしまったのだろう)
この先の信号の交差点、僕は真っ直ぐ行くべきだった。けれどなんとなく左折した。なんとなくだ。意味はない。
(もういいや。今日はあれを買いに行こう)
無理をしないのが僕の取り柄で、瞬間、約束は記憶の彼方。
(ドタキャン程度を許せないなら、彼女は僕といるべきじゃない)
青空なのに暗く感じる。こういう時は調子が悪い。何かが僕を苛みに来る。
(ああ、なんか疲れたな……最近ずっと体が重い)
楽しいものが必要なので、椅子の在庫に思いを馳せる。買うか買うまいか迷っていたのに、今までそれも忘れていたのだ。なのに独り言がまた口をつく。椅子のことを考えたいのに、彼のイメージが邪魔をする。
「君が一番面倒な子だよ。勘弁してよ、うんざりだ」
それは思いのほか大きな声で、自分で自分に驚いた。制御の質が落ちていくのも、僕は彼のせいにした。
*
展示品しか在庫がなかった。取り寄せにしばらく掛かるとのこと。
「ついてないな……でも、ありがとう」
申し訳なさそうな店員は、煩わしいほど親切だった。上客を逃したくないだけでなく、きっと僕を好きだと思う。
(勘違いじゃない。これは僕を誘う目だ)
体の匂いが変化していた。男を導く特有のものだ。馴れた香りが心地よかった。ザッキーの匂いはささくれる。
「ところで君、仕事は一体何時まで?」
簡単くらいがちょうどいい。無理をしながら疲れるよりも、自然が一番楽だから。
彼女は僕の素性を全く知らず、それが尚更気楽で良かった。勉強熱心、大変結構。家具にまつわるいろんな話は、ピロートークに素敵に馴染んだ。
(いい子だな……)
バリキャリ、年上、でも肌が綺麗。
(おそらくオシャレな女性の王道?……あと僕のスタイルに驚いていた?スポーツマンに免疫はない……でもそれなりに男は知っている……)
なにもかもに一生懸命、その生き方が窮屈で、でもそこがとても可愛く思う。
「ソファの話が聞きたいな。今度君に会う時は」
抱き締めて、キスをして、少し心の気晴らしも。でも、車に戻れば元の木阿弥。
(やっぱり駄目だな、車の中は。ここでさせるのはもうやめよう)
実は、もう匂いなんてしなかった。でも記憶が僕に思い出させた。どろっとしていて生臭い、彼の中にたまる苦痛。可哀想に、心はあんなにあどけないのに、体の仕組みに、そして僕に、こんなにひどく振り回されて。
(駄目だ。イライラが全然鎮まらない)
僕の性には苦しみがなく、気軽でライトなものだった。汚液だなんて思わなかったし、出さなきゃならないこともない。互いの好意を表現し合い、体も一緒に気持ちがいい。握手の延長のようなもの、たかがその程度のことだった。
(何故、君はそれが出来ないんだろう)
