お花結び

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そよ風ロマンス第5章(そよ風ロマンス最終章)

【27605文字】
実に2年半くらい前のシリーズの終章。今回は改ページごとに視点が交互です。
中断して気にはなっていたんですけど、書きかけに掃除と追加などなど。終盤一瞬ジーノが下品。似たような話ばかり書いてますけど、今回は番犬がこじらせです。

(……ん?)
しばらく聞いた覚えがない、遠くに響く呼び鈴の音。気のせいだろうと放置を決めたが、しばらくするとまた音がした。
(あれぇ?やっぱり鳴っている?)
アポなし訪問はノーサンキューで、そもそもぶしつけな知人など僕は周りに置きもしない。どうせ部屋違いとソファに項垂れ、うたた寝の続きを決め込んだ。なのに今度は携帯がテーブルの上で震えだす。
(あー、もう冗談……しつこすぎ)
げんなりしながら一体誰だと眉をしかめる。しぶしぶ端末を手に取ると意味なき字列が目に飛び込んで、そのことでようやく理解が出来た。なるほどそうかと腑に落ちる。
 これは雨の日によく見る夢だった。
「やぁ」
と夢の中で僕は応答し、彼は、
『どうも』
とそれに応える。愛想のない不機嫌な、遥か昔のあの子の声だ。何も起きなかった僕達二人の嘘偽りの淡き夢。これは切なる祈りでありつつ同時に真なる絶望だった。
(ザッキー、これは後悔というものかい?したことがないからわからないんだ)
しくじったとは理解していた。でもこの平和で無邪気な祈りの世界を、毎回僕は壊してしまう。
「ようこそ。君は全くの馬鹿だ」
何故。それでも、手を伸ばさずにはいられなかった。雨の日、何も知らない彼を招いて、呼吸も忘れるキスを欲して、光の届かぬ世界に閉じ込め、それでもどうか逃げてと願う。唇を奪い、服を剥ぎ、やすやす彼の無垢を穢して、冷たい汗が体に滲み、なのにどこか陶然とする。雨は彼を連れてくる。僕が罪であるということ。その現実を思い知らせる。
(ふふ……最近よく見るなぁ……)
腕も瞼も体も重く、苦痛の甘怠い夢に住む。古傷の痛みのような疼きは、この幸と不幸で僕の姿で、過去ばかりひしめく日々の中、自分の偽善と悪意に浸る。悪夢を思い煩うこともとっくの昔に飽きてしまった。

 久しぶりだった二人の食事。なんの意味もない言葉でも、彼が求めるならばと言った。
(なんかすごく泣いてたなぁ……)
彼はとても情深く、その意味を深く受け止めただろう。意義も必要性も多分にあった。初めて理解し合えた気がする。
(僕をして泣く姿はとても甘露だ。僕は今でも罪深い)
あれから何年も経っていて、二人別の世界で過ごした。別々の世界であることを、今一度認識し合っただけだ。
(歯を食いしばっての祝いの言葉?おめでとうございますって……ふふ、するわけないだろ?結婚なんて)
ごろりと怠惰に寝返りを打ち、半眠りのままあの子を思う。
(それともしてくれたりするの?)
この先何も起こらぬ僕ら。本物のあの子は自由な空下、それが心を何度も救う。叶わないから貪れる。時計を止めて一人で夢で。そこに何も生じなくても、意義は自分で見出だせばいい。
「ザッキー」
その名を口にするだけで、ただそれだけで生きてしまえる。そんなことすら知らなくていい。申し訳ないと思うほど、僕は今とても幸せだ。