お花結び

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他人に依存しないのは

超絶自信家のジーノと意地っ張りザッキーのお話。「王子って、ほんとセックス好きですよね…」のシチュをはじめの頃と暫くしてからの頃とで比較。

        ジノザキ

他人に依存しないのは、
ごく少数のひとたちのみにかかわることで、
それは強者の特権である。

 by ニーチェ

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「王子って、ほんとセックス好きですよね…」
「え~?まぁ、否定はしないけど、キミほどではないよ?」
「なっ!俺はそんなんじゃ!」

 二人の行為については、最初は軽い簡単な感じだったのに、最近はオフでは特にどんどんこうして二人裸で絡み合い、濃厚で昼も夜もわからなくなるような感じになることが増えてきていた。今日ももうこうして何時間いるんだろう。カーテンは閉められて薄暗いこの部屋は二人の声と吐息しかこの世に存在していないかのようだった。お腹がすいても互いを食べ合うので精一杯なようなそんな淫らな時間。確かにこうしているのは疲れるけれど楽しいし気持ちがいいし…。こうして横になっているだけでも王子の手が、足がとめどもなく俺に絡みついてくる。している最中の快感をこみ上げさせる彼の手も、こうしたまるで体のマッサージをしているかのような彼の手も、どっちも本当に気持ちがいい。時に冷たく、時に暖かく、時に汗ばん王子の手。ずっとずっとこうしていたい。

 でもなんだかこれでいいのだろうかという思いがないでもなかった。オフで一日いるときなど以前はずっとサッカーの録画を見たりしていたのに。

「ん?違うの?ボクとしてはキミがこういうほうが楽しそうだから合わせてるところが半分あるんだけどね?」
「オ、俺に合わせてるって!違ッ…!」
「あれ?不満?なんだ、それなら早く言ってくれればいいのに。」

 ジーノのきょとんとした表情を見て、これは変に俺をからかってるんじゃなくて本音で話をしていることがわかった。

「…いや…不満とかそういうことでもないんだけど、ずっとこんなんでいいのかな…って」
「フフフ、ずっと?わけないでしょ?きっと飽きちゃうよさすがに。そのうちね。」
「えっ!」
「ん?なに?なんか変なこと言った?」

 出会ってしばらくして、いつのまにかこうした関係になっていた。けれど、今言った“きっと飽きちゃう”ってどういう意味?やっぱり王子にとって俺って前提として一過性のおもちゃでしかないということなんだろうか。俺は王子のことをなんにも知らない。彼がなんで急に俺を育てたいって言ってきたのかも、その目的も。俺をこういった遊び相手にするのが目的であっても全然おかしくなかった。女性関係が乱れていることも噂では聞いている。さすがに俺はチームメイトなんだし、そういう刹那的な関係ではないって思っていたけれど、この人だったらもしかするとそういうことも関係なくある日突然バッサリと切ってしまえるところがあるのではないか。

 対人関係についてそれほど細かい執着があるようには日頃からとても見えなかったし、この瞬間にでも「飽きた」と言い出しても全然おかしくないのだ。だって、彼は前に女性との関係は短ければ一晩、長くとも半年と続いた試しはないって言っていたのだから。

「…飽きますかね…」
「ん~?キミはこういうの好きそうだし若いし、しばらくは飽きないかもしれないけどね?」
「王子は…飽きそうッスか?」
「…なんか話変わってきてない?このままがいやだって話じゃなかったの?ボクは別に今はそれほど問題感じてるわけでもないし、なんでもいいけどね?」
「…。」
「変な子。ま、あれだねプールでも行こうか。セックスもトレーニングのひとつみたいなもんだけど、そっちのほうが楽しいかな?」

 俺に絡んでいた腕をはずしてスッと起き上がろうとした王子の手を、思わずギュッと掴んでしまった。

「俺と寝るの…トレーニングなんッスか?」

 睨み付ける俺の目を見て不快だったのか、王子の顔から飄々とした表情が消えて片眉をひそめるように歪めて答えた。

「なに?今更。ボク、最初から自己管理の一環だって言ってなかった?一体なんだと思ってたの?」
「……」
「ホント、キミ、不安定だね。そういうの一緒にいてしんどいよボク。言いたくないけど時々我慢ができなくなる。キミがメンタル的に不安定だからこうしてなるべく傍にいるようにしているんだろう?わからないのかい?キミは脆いから覚えたての人肌に癒しを求めてるんだよ。ここ最近、完全にパフォーマンスに表れてる。ボク以外にこれをやれる相手がいればお任せするけど、いないみたいからね。仕方ないでしょ?」
「!」
「正直、こういう関係性になってしまったことには一時期少々後悔していたよ。キミが選手としてこれほど崩れてしまうとは考えもしなかったからね。自分から現状打破の必要性に気付いたんだと感心したら、結局なにがいいたいんだか。感心した分だけがっかりだよ。」
「…いやいや付き合ってやってたっていいたいンスか。」

 言った途端、俺が掴んでいた彼の手を思いっきりふり払われてしまった。

「一体、今、ボクの話の何を聞いていたんだい?いやいやなんて言葉、この口から一回でも出てきていたかい?まあいいよ。話が通じるとは思っていないからね。」
「そうとしか思えないッス。」
「それはキミが馬鹿だからだろ?そうとしか思えないくらいキミが馬鹿なのはボクのせいじゃないさ。八つ当たりは醜いよ。」
「…王子!」
「不愉快だ。キミは帰るがいいよ。ボクも出掛けるし今日はもう戻らないから。キミも明日の練習は気持ちを切り替えておいで?」

彼はそのままシャワーを浴び、寝室に戻らないまま行ってしまった。

  *  *  *

「王子。」
「…なんか用?」
「俺、セックス覚えたてとかそんなの言った覚えもないし。過去別に彼女とかよくやってたし。」
「なに?切り替えてきて、言うことはそれ?ホント…ほんと、頭悪いね、キミ。」
「切り替えろって言って勝手に出て行ったのそっちじゃないッスか。」

 練習が終わり、今日初めて、やっとの思いで話しかけたのに、いきなり大きなため息をつかれ、俺はなにをやっているんだととてもみじめだった。言いたいことはこんなことじゃない。一緒にいて欲しい、王子。なのに、言葉が出ない。近づきたくてこうして話しかけているのに、自分でドンドンその溝を広げていく滑稽さ。俺は確かに本当に馬鹿だ。

 一方、彼の方といえば昨晩の言葉通り、すっかり気持ちを切り替えてきていたようだ。こういうところが人として、選手として、器の違いを感じさせる。困ったような表情で、うち、くる?と言われ、おとなしく彼の車に乗り込んだ。

「…別にキミを童貞だから猿みたいにはまってるんだろとかそういう意味で言ったわけじゃないよ。たとえキミが過去何百回とセックスをしていようと、心理的に童貞だったでしょって話。単純に入れたり出したりすることそのものがセックスだって考え方もあるけど、セックスってそれだけじゃないからね。もっとこう…うまく説明できないんだけど。」
「……」
「ま、単純にボクの言い方が悪かったんだね。確かに童貞かどうかとかって、男にとっては一種のプライドみたいなものがあるかな?ボクはちょっとそのこと自体意味わかんないし、話の趣旨とかけ離れちゃってて頓珍漢な気もするけどね。」

 噛んで含んでゆっくりと優しく話す彼の言い方が、まるで大人が子供をあやすようにも諭すようにも思えて、益々みじめな気持になった。話の主旨から離れた難癖をつけていることは俺自身がわかっている。言いたいことはそれじゃないんだから。でもそんな頓珍漢な話に、彼はこうして付き合ってくれているのだ。

「キミは若くて、才能もある。でもとても不器用なところがあってロスが多いんだよ。心理的に不安定なところもロスのひとつだね。でもそれをコントロールするのは大変なことだというのも同じアスリートとしてボクはよく理解しているよ。一人でがむしゃらにやってきたんだ、人に頼ることも未経験でバランスが崩れるのもよくわかる。」

 彼の言葉はとても丁寧で、彼の腕のように暖かく俺を抱き留める。昨日あれだけ傷ついたのに、今はもうその言葉だけで泣きそうだ。

「フフ…ホント、不安定だね、キミは。キミが人に頼ることが不慣れなように、ボクは人に頼られることに不慣れなんだよ。そういう人間関係は不快でね。それでも、キミに対してはなにかやれることはないかと、これでも一生懸命やってるつもり。キミが困ってるんだもの、不快とか言ってられないからね?わかるかい?」
「王子…」
「こういう話は、ホント苦手だよ。キミといると色々苦労するね全く。」
「…サーセン。」
「謝られても、どうせまたわからなくなるんだろ?知ってるさ。」
「そんなこと…」
「ま、仕方ないさ、それがキミだもの。」

 マンションの地下駐車場。車を停めると彼は色の薄いサングラスとハンカチを一つ差し出す。

「泣き虫。まるでボクがいじめっ子みたいじゃないか。」
「あ…」

 受け取ろうと手を伸ばした途端、肩を抱かれ、目頭に“チュ”と音を立ててキスをしてきた。苦笑いを浮かべて車から降りる姿を見ながら、俺も貸してくれたサングラスをかけ、ああ、またこうして俺は彼に翻弄されてしまうのだ、と感じた。彼が今思っていることを伝えてもらえるのはとても嬉しいのに、その陰にある彼の言葉である「飽きてしまう」というものが、心の中に暗く大きく横たわっている。
 気まぐれの彼の善意が、いつまで続くかもわからない好意が、感じれば感じるほど失われてしまった時の自分を想像させて。こんなに囚われてしまって、自分の足で立っていられない。やっぱりいつまでもこんなことではダメなのだ。

「…あの、王子。」
「ん?」
「今日は、プールいいッスか。」
「なに?気にしてるの?プール嫌いなくせに。」
「まぁ、そうなんですけど」
「いいかい?ボク達の関係に無理は必要ないんだよ?言ったろ?ボクはキミに無理矢理付き合ってやってるんじゃない。なんでも楽しめるさ。ポイントはそこ。一番大切なのは、キミが一流に育つことだよ?だから、キミが安定するのが最優先。キミが今一番必要なことをやるのが大切なんだ。」
「……」
「キミが今一番必要なのはベッドの時間じゃないの?」
「…いや、でもそれは王子に無理をさせて…」
「なにそれ?なんでも楽しめるって言ったろ?ボクはキミとするのが大好きだよ?それがトレーニングの一環だなんて一石二鳥もいいところ。キミも好きならいやになるまでずっと二人でそうすればいいじゃない?」
「…え?」
「最初からそう言ってたでしょ?」
「言ってませんよ?」
「言ってたよ?」
「仕方ないとか言ったじゃないですか!」

彼の眉がまた歪む。

「だって、キミむかつくんだもの。全然ボクのことわかってないしさ。こんなに大切にしてるのに文句ばっかりで。ひねくれたくもなるさ。」
「そんな…ややこしいッス。」
「キミのせいだししょうがないでしょ。」
「なんで俺のせいなンスか!」
「だってそうでしょ?セックスしたり、その合間に触りあったり、そういうのがボク大好きなのにキミときたら不満げでさ?」
「な!あんた、最初にセックス好きなんですねっていったら否定したでしょ?」
「そんなの単刀直入に聞く馬鹿がどこにいるんだって話だよ!」
「図星なら図星だって言えばいいじゃないッスか!付き合ってやってるとか変な言い回ししなくったって!」
「あー、聞きたくない!」
「王子って大人げないッスね!」
「聞こえない」

「王子!」

      ジノザキ