お花結び

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捉えどころなき俺らの水域

【17151文字】
赤崎入団1年前後、社会に出たなりの青くて若いフレッシュ崎と優しい先輩ジーノのお話(ポエム炸裂ェ)

        ジノザキ

 俺はちょっとショックだった。

そりゃあ、この年になってまで
「お誕生日おめでとう!」も何もあったもんじゃない。アニバーサリー女なんて男にとっちゃ「ウゼェ」極まりないのも知ってるし、俺だってずっと馬鹿馬鹿しいって態度を崩した事なんてなかった。
 そうなんだ。だから、そういう「誰かから自分への特別な何か」を欲しがるなんて俺にとっては、まあ、その恥ずかしいというか、子供っぽいというか、要するにそんな事、重々承知で。
 でもやっぱりショックだったんだ。よりにもよってあの王子が、世間一般の男共と同様、そういう系の事について面倒臭いと考えていただなんて。

「だから俺の顔立てるつもりで頼むよ、マジ」
「やだって言ってるじゃないか、タンビー」
「だってお前が来たらあいつ絶対喜ぶんだって!なぁ、取敢えずその日だけでいいんだから。しかもほんの数時間」
「そんなの数分でも邪魔くさい。無理!」
 王子はその時、毅然と丹さんの誘いを断っていた。
(うわぁ完全に立て板に水。王子容赦ねぇわ)
 それでも丹さんは食いついていて、俺は、
(なんだろ今回の合コン、よっぽど王子に会いたい面子がいるのかな。でも丹さんがそういう感じでセッティング引き受けるのって結構珍しいかも。だって王子に無理強いしたところでヘソ曲げるだけな事くらい誘う前から普通にわかるし?)
などと思ったりもしていた。だがそうだとしても、断り方があまりにも無碍で驚いた。
(こんな王子初めて見た。だって常にのらりくらりしてる感じの人だし)
 今露わになっている男の損得はいっそラジカル。丹さんと王子の二人が存外仲良しなのは傍から見ていてよく知ってる。だからこそ王子の言葉が生々しい。
(つまり、王子もまた、当たり前のように男だった、つー事。いや、なんで俺こんな驚いてんだ?)
 でも、そんな当然の事実が、思っている以上に深く自分の心に大きな穴をあけてしまった。
(王子、冷たい)
 そんな風に感じてしまった。そして。
(俺、思い込んじまってたんだな……あんたはそういうんじゃないって。個人の利得じゃなくて、こう、他人が喜んでるのを見るのが好きっていうかさ?もてはやされるの大好きナルシストっつうより、寧ろ、こう、富める者が幸を振り撒く、そんなゆとりある世界の人間っつうか?)
 丹さんが困ってる。行けば喜ぶ人が居る。なのにその上で王子は、全くそこに心を寄せる事無く、つまり利己的な視点からブレる事無く、やる意味がないと喝破する。
 事実であったとしても見たくなかったし知りたくもなかった。王子の男としてのシビアな一面などわからないまま、俺はこの人にだけは、いつも当たり前のように他人に優しく笑っていて欲しかった。世の中の女共と同様に、あの人の中の「王子性」に夢を見ていたのか、最初どれだけごねていようと、どうしてもと頼み込めば、最後には「しょうがないなぁ」なんて、王子なら笑って受け入れてくれるのでは、などと俺は思っていて。
 けれど、思えば王子はサインも握手もやりはしない。強く頼めばそれも普通にやると思った。でも、多分それも違ったのだろう。
(何勘違いしてたんだ?馬鹿じゃね?)

      ジノザキ