捉えどころなき俺らの水域
【17151文字】
赤崎入団1年前後、社会に出たなりの青くて若いフレッシュ崎と優しい先輩ジーノのお話(ポエム炸裂ェ)
デーゲームだった試合はドローで終わって微妙な空気。
それでも幹事の丹さんは明るく楽しく、そんな姿に苦笑しながら待ち合わせの場所と時間を再度確認。俺は足取り重く、ロッカールームをあとにした。
(はぁ、こんな日に何で俺が……)
試合後のドタバタはいつもの事。だが遠征に出発前のユースの激励に立ち寄れと用事を頼むにしたって、誕生日な俺に対してちょっとくらいの労いがあっても然るべきな話であって。まあ、ツーカーでそれをやれるのは今のトップでは俺だけだし、効率を考えれば致し方ないとはいえ、ベンチとドローと雑務で誕生日が終わっていくのはガッカリにガッカリを通り越して何にも云うべき言葉が見つからない。
(大体皆忘れてるっつーか、いや、そもそも知らねぇか?どうせ俺の誕生日なんてめでたくもねぇよ、クソ)
結局、俺の貰った今年第一号のおめでとうは長年の顔見知りである育成スタッフの○○さんからだった。この人は毎年忘れもせずに、必ずそれを祝ってくれる。こんなちょっとした事に嬉しい俺は、その人へのおめでとうも毎年一度も欠かした事がない。
(けど、まあそんな事もどうでもいい事だ。特別でもなんでもなく、単にあの人が律儀な性格してるだけの話なんだし)
ユース達への一言挨拶に手間取った俺は、その後足取り重く丹さん達の待つ会場に向かった。
「しっかし、すっかり遅くなっちまったな」
気の乗らない状態で行く、気の重い合コン。別に女は嫌いじゃないけど、やっぱりあの手の集まりは少し苦手だ。気の利いた事どころか余計な事しか言えない俺には、その場限りの人間関係とか鬼門以外の何ものでもない。
「今日こそは二次会とっ捕まる前にさっさと逃げちまわねぇとなぁ」
要領の悪い俺は、本当に思い通りに生きているであろう王子がとても羨ましかった。
