お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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捉えどころなき俺らの水域

【17151文字】
赤崎入団1年前後、社会に出たなりの青くて若いフレッシュ崎と優しい先輩ジーノのお話(ポエム炸裂ェ)

        ジノザキ

「いらっしゃいませ、ああ、ご予約の。こちらでございます」
 そうして案内された部屋に行ってみれば、
「ハッピーバースデー!赤崎ィ!」
 盛大なクラッカーの音に、歓迎の嵐。突然の事に俺は大いに驚いてしまう。
「遅い遅い~!」
「は?」
「さー、仕切り直しだ!おかわり頼む奴いる?」
「あ、俺、俺!」
「お前それ何杯目だよ」
「いいからいいから」
 これはまさにサプライズ。
(あ、これ、もしかして丹さんが俺の為に?)
 そこには選手だけでなく大勢のスタッフや、フロントの人達や、そして、そして。
「ホント遅いよ。今まで何をやってたの?ボク、すっかり待ちくたびれてしまったよ」
「お、王子……?」
 振り向けば俺の背後、廊下に佇む我がチームの看板選手。まるでずっと俺を待っていたかのような顔をして笑う姿が実にあざとい。でも俺はこの人のこういう、如何にもベタなおもてなしトークが結構好きだった。多分一分前まで俺の存在すら忘れていたとしても、彼は咄嗟にこれを言える人なのだ。王子はこの手のクイックネスな言葉を使って、あらゆる人との距離を詰める。俺もたまにはこんな風にさらりと言ってみたいけれど、まあ、出来もしないし、出来ても気持ち悪がられるだけだろう。

 入り口に佇む俺に、王子は恭しい態度で道案内をする。
「こっちだよ。来て」
ざわつく室内は主役抜きのままとっくの昔に酒盛りが始まっていたようで、あちこちでわけのわからない会話が交錯しまくっている。
 最早これが誕生会だとかなんだとか、そういう体裁もなし崩しのまま、室内は活気にわいている。俺はまだ事態についていけないままに、王子にヒソヒソ話をする。
「なん、で?王子、ここに?」
「こっちが聞きたいよ」
「?」
「……だから、あのね?」
王子が何かを言おうとした次の瞬間、遠くからそれを遮るように丹さんの声が聞こえてきた。
「赤崎ぃ、今日は存分にジーノと話しろよ?」
「はあ?」
「色々戦術とか技術とか、なんでもそいつから好きな情報吸い取ってやれ。な?」
「勘弁してよタンビー。ボクそういう事、苦手だって何度言えば」
「だーめ、お前ももう中堅の年なんだからフラフラしてないで後輩育てるのに少しはエネルギー使っとけ!」
「全く。ねぇキミ、別にそういうのはいいよねぇ?大体ボクはそういうガラじゃないし、それにこんな場所でまでサッカーの話をしたって全然面白くもなんとも」
「いえ、面白いッス」
「えー?やめてよ、キミまでそんな」
「丹さん!ありがとうございます、最高の誕生日プレゼントッス!」
「だろ~?赤崎、もっと褒めてくれてもいいぞ?説得すんのすんげぇ大変だったんだからな」
「いくらでも!丹さん、俺実は前から今日王子と」
テンションが上がってははしゃぎだす俺をまるで丹さんは子供扱いだ。まあ、これもいつもの事だが、この人のこういう王子とはまた違う大人なところも、俺は結構好きだったりする。
「いいから、いいから、ほら、ビールお前の分、きたから」
「ッス!」
嬉しい、興奮、上機嫌。俺は歩きながらたった今届いた冷たいジョッキを受け取って、王子の後ろをついて行った。

 やれやれ、と座って、その隣を指差して王子が、
「どうぞ?」
と言う。俺は本当に王子と並んで座る事になっている事実に、改めて思いっきり感動してしまう。
(うわ、マジだ?いつもはまずこの手の飲み会には王子いないし、いたとしたってテーブルとかも全然違っ……)
「しょうがないなぁ、こんなつもりじゃなかったのに。ん?どうしたの?」
「スイマセン、王子。俺、あの……用事?大丈夫でしたか?」
「大丈夫なわけないデショ?」
 不機嫌な視線に硬直する俺を見ながら、王子は澄まし顔で、
「まあ、いいよ。さ、乾杯だ。なんていうんだっけ?こういう時」
と言った。
「え?えー、あー、あれか?駆けつけ、三杯?」
「三杯?え?一杯じゃなくて三杯も?ハハ、キミってお酒強かったっけ?」
「平気ッスそれくらい!」
「あー。でもそうだね、今日はやめておいたら?」
「ホントです、大丈夫ですって」
 そうして俺は笑いながらまずは一杯とジョッキを傾ける。するとその手を王子にグイと掴まれて、零れそうになるビールに俺は慌て、
「ちょ、危ないッスよ」
と言った。
 けれど王子は、そんな俺の態度を一切無視して、触れんばかりに顔を近づける。
(ちょ……)
たじろぐ俺の耳元で、普段通りマイペース過ぎるくらいの「王子」な王子はこう囁いた。
「駄目だよ?今日は程々にして。この後ボクの家に来てもらうつもりなんだから」
「え?」
「ホント参るよ。随分前から今日の準備をしていたというのに、キミったらそんな事もわからないで」
「え?準備……え?」
「ちゃんと言ったじゃないか。ボクはこれに参加しないって。だから当然キミも断ってくれるものと思っていたのに」
「あ……」
「言っとくけど『埋め合わせはまた今度』なんてボク絶対許さないからね?今日の埋め合わせは今日のうちにだ。じゃないと何の意味もない。わかったらここではそれ一杯だけにしておくんだよ?」

 その後はもう自分が何をしていたのかもわからなかった。ただ沢山の人達が俺のトップ入り後初めての誕生日を大いに祝い、飲み放題に慎ましやかながら美味しい料理、最高のプレゼントに皆の笑顔。

(スゲー、嘘みたい、いや、夢みたいだ)

 ギスギスしていた日頃のチーム内の空気は一旦お休みと大きな大きな輪になって、嫌われていると思っていた先輩やクソハゲとも杯を交わし、次は勝つぞと総決起。とても幸せな時を過ごしたのだった。

      ジノザキ