【お題】泡沫の夢より
【10940文字】
秋ごろ書いていた習作詰め。
Twitterのお題bot「泡沫の夢」さんからお借りしました。
殆どワンドロ未満。イメージはひとコマ漫画的、一部連作っぽいものも。番犬海外移籍前提の悲恋設定多め、脳内で再会妄想の補完ヨロシクお願いいたします(丸投げ)
誰かに持って行かれるくらいなら檻に閉じ込めておけば良いと考えては見たのだけれど、君はその檻など簡単に抜け出せてしまうものだからどうやっても、ぼくが諦めるしか無くなってしまう
— 泡沫の夢(手動お題) (@ut_dree) August 2, 2015
<SS>
誰かに持って行かれるくらいなら檻に閉じ込めておけば良い。そう考えてはみたのだけれど、結局諦めざるを得なかった。君は檻から抜け出すのが、それくらいとても上手だった。
*
「行くな、とか。そうですよね。貴方はそんな事、絶対に言わない」
「おかしな子だね。わかっているのに、それをわざわざ僕に言うのか」
「……」
「言ってあげてもいいけど。でも……ただの茶番をやっても無意味でしょう」
僕はそれを茶番でおさめるべきである事をよく知っていて、思いを押し留めるだけで精一杯だった。上手くこのままたぶらかしておきたい。でも、この本音にも気付いて欲しい。未練の残る別れは苦手だ。心がとても弱くなる。
言葉を失う君が好きだ。自らの意思で去ろうというのに、捨てられる側であるような顔をし、振り解く為だけに僕の手を乞うて、一切憚る事がない。全ての醜さを晒す強さを、いつでも憧れをもって見つめていた。僕にはない強さだった。本質に近づく生きる強さだ。格好をつけたがる君はそれを意識する程格好悪くて、君のその格好悪さが、潔い格好良さとして映っていた。
「頑張ってね」
君の邪魔にはなりたくない。それは単なる言い訳に過ぎない。君を掴んで閉じ込めておく事も出来なければ、ただ縋って泣く事も出来ないだけだ。僕にはそんな事が難しい。本気であれ。茶番であれ。君がそれを望んでも出来ないだろう。その甲斐などないからだ。意義も見いだすことすら難しい。
*
見送る勇気もない僕のところに、君の挨拶だけが手元に届く。
「無事着いたか。良かった」
どんな気持ちで住所を打ったか。その迷いですら手に取るようで僕は、君の赤裸々が羨ましくて、思わず返信ではなくコールをする。驚く君の顔が目に浮かぶので、僕まで笑いが込上げてきた。たったこれだけの事にしても、勇気が必要なのだと君は知らない。
「はい……」
緊張に強張る君の声が可愛い。
「王子?……あれ?」
勇気の結果の幸せの大きさに、僕は最初の一言が浮かばない。だから何故かこんな事を言ってしまう。
「ザッキー?僕だよ」
知っていて出ている相手に向かって。本当に馬鹿げてると我ながら呆れる。でも、この気負いがなんだかくすぐったくて、そして、満更でもない気持ちになった。長電話の御代を気にするあの子が、やっぱりとても愛おしい。
「おや、じゃあ、切る?」
「え、いやそれは」
だから素直に本音が出た。
「もう既に会いたいよ君に。今度抱き締められに帰っておいで」
