お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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【お題】泡沫の夢より

【10940文字】
秋ごろ書いていた習作詰め。
Twitterのお題bot「泡沫の夢」さんからお借りしました。
殆どワンドロ未満。イメージはひとコマ漫画的、一部連作っぽいものも。番犬海外移籍前提の悲恋設定多め、脳内で再会妄想の補完ヨロシクお願いいたします(丸投げ)

        ジノザキ ,

<SS>

 ザッキーは、ちょっとした事ですぐ拗ねてしまう。そんな、子供のようなところがある。
「いつまでそうしてるつもり?」
今日も今日とてクッションを抱え、ソファの上で不貞腐れている。
「だから、ゴメンって謝ってるじゃないか」
「……それが謝ってる態度ッスか」
 イラッとした僕はわざとらしいくらいの溜息をついて、ポスンと指先でそれを跳ねた。
「いい加減しつこい」
「だって俺、ずっとここ来て一緒に飯食うの楽しみにしてたのに」
「わかってるよ。だからゴメンって」
「……」
「でもザッキー、なら今日会った時にでも言ってくれたらよかったんだよ。そしたら僕だって思い出して……」
「だからッスよ!別に、飯待っててすっぽかされた事とかどうでもいいんスよ!それよりも、あんたにとって俺なんてたかだか忘れる程度の相手だったって事が」
「こら、大きな声出さないで」
 実のところ、約束はちゃんと憶えていた。けれど僕は例の如く、まあいいか、と軽い気持ちでデートを優先したに過ぎなかった。僕は少し甘え癖があり、ついザッキーを蔑ろにしてしまうのだ。
(それでも君はちゃんと待っててくれると思う信頼があるからこそ……ああ、それも単なる言い訳だな)
 僕は自分の持つこの狡さを、十二分に理解していた。悪いと思う気持ちもある。けれど自由を好む僕本来の性分が、僕を留めさせてくれないのだ。
「だからほら、やっぱりケーキ食べようよ。お詫びのケーキ。君が大好きなあの店の」
「いらねぇッス」
「だって何も食べてないんだろう?なんか作るよって言っても、いらないっていうなら、せめてケーキだけでも」
「いらねぇッス」
「……ザッキー、そういうのよくないと思わない?さっきからお腹が鳴って可哀想だよ」
「知らねぇッス!」
「ああ、もう、じゃあどうしたいの。ずっと今日はクッションと仲良く暮らすつもり?」
 僕は僕の不始末でザッキーをこうさせてしまった。にもかかわらず僕ときたら、イライラと八つ当たりのような真似までしてしまう。何故なら、こんな事で、こんな風に、こじれた事が殆どない。僕はこの手の事に関して、キャリアを必要としてこなかった。
(大概、抱き締めてキスすればそれで終わりだ。全くザッキーは手間がかかる)
僕は本当に根気がない。それがどうしたと生きてきた。だって根気なんてスマートじゃない。人はもっとクレバーに生きるべきだ。それは僕の中の大事なスタンスで、今まで一度も揺らがなかった。
(ああ、だからザッキー、勘弁してよ。根気を僕に求めるなんてあり得ないでしょ)

*

「……もういいッス」
「え?」
 ザッキーのいつにない冷たいその口調に、何やらヒヤリとしたものが走る。勘弁してよ、と思ってはいた。でも何やら嫌な予感がする。
「……わかってましたから。俺はその程度の存在だって」
 とても、とても、雲行きが怪しい。僕の予感はよく当たる。
「ザッキー、僕はそんな事思ってなんか」
「いや、いいッス。王子がそんなに俺の事いらないんなら、もう俺だってあんたの事いりません」
「ちょっと待ってよ、何言ってるの?」
クッションを抱えながら顔を埋めての呟き。震える肩にリアリティを感じる。
「ねぇ、顔上げてよ、ザッキー、泣いてるの?」
「王子がいなきゃ生きていけねぇけど、いらなくなるよう努力します。これ以上こんなにされたら、俺、壊れてしまうから」
慌てて隣に座ってみるものの、つい、とそっぽを向かれてしまった。タチの悪い事にザッキーときたら本当に子供で、この手のネタも駆け引きじゃないのだ。本気の本音じゃないに決まっているし、そもそも僕を切るなんてザッキーには土台無理な話だ。けれど、だからこそなのだ。僕にはこの仕打ちが一番痛い。それ程追い詰めてしまった証拠だからだ。
「ザッキー、ねぇ、こっち見てよ」
 甘声で懐柔を謀るも強張っていくばかり。こうなってしまったが最後、今日はかなり長丁場になるに違いない。ザッキーはバッキー以上にグルグルと走り回る。しかもそれが不得手と来てる。わざわざ自分で勝手にこんがらがっては、そのまま迷子になってしまう。
「ね、ケーキ、やっぱ食べよ?うんと甘いコーヒーも淹れて、ちょっと落ち着こう?」
 僕はこんな時がとても怖い。ザッキーは一人では戻って来れない。そのくせ僕の手を振り払う。
「ザッキー、お願い、いらないなんて言わないで?僕とずっと一緒にいてよ」
 これは極めて本音の言葉だ。けれど、そうであればある程、ザッキーには届かない。僕には意地もプライドもあって、すぐに演技過多になる。君はよく鼻の利く子だから、無意識にそれを嗅ぎ分ける。
(なんでまたこんな事をしなきゃいけないんだ、全く)
 口先で転がすでなく、擽るでなく。邪魔なプライドの一切を捨てて、真摯に、誠実に、心だけを込める。僕にここまでさせてしまう、君には参る。
「君がいないだなんて、そんなの僕の方が壊れてしまう」
「そんな事言ってご機嫌取ろうとしても全然駄目です。あんたは変わらないし、俺はもう帰る」
「ザッキーったら、意地悪言わないで?」
 本当にこれが単なる恋の駆け引きであったなら。いつでもそれを思いつつ。
「どうであれ、君は僕なしでは生きていけない。そんなの、僕の方が見ていられない」
 僕は君に甘えるけれど、大いなる庇護欲も持っている。こんな馬鹿げた痴話喧嘩に、付き合うくらいの愛もある。
「だからお願い、こっち。ねぇ、」
 クッションごと君をギュッと抱き締めて、まだまだ長い夜を思った。岩戸に隠れきったザッキーは、いつでも手ごわい存在だ。でも、相手が誰でもないザッキーだから、こんな夜も素敵と感じないでもないから、本当に僕達二人の恋ときたら。
(ほんと、スマートじゃないよね……)
僕は今日も苦笑しながら、心底、こう思うのだった。

(でも、スマートになりきれない程)

「好きなんだよ。ねぇ、ザッキー、キスさせて」

      ジノザキ ,