【お題】泡沫の夢より
【10940文字】
秋ごろ書いていた習作詰め。
Twitterのお題bot「泡沫の夢」さんからお借りしました。
殆どワンドロ未満。イメージはひとコマ漫画的、一部連作っぽいものも。番犬海外移籍前提の悲恋設定多め、脳内で再会妄想の補完ヨロシクお願いいたします(丸投げ)
この糸では結ばれないというのなら、別の糸で結い直しましょう
— 泡沫の夢(手動お題) (@ut_dree) August 26, 2015
<SS>
(どうせ、あんたは俺のモノになってくれるわけもありませんしね)
口にも出来ないこんな思いを、王子は言わなくても理解している。どうにもならないこの現実について、ほのかに笑ってお茶を濁す。
(ないものねだりだ。わかってる)
一緒にこうして過ごすだけで、身に余る幸せと確かに思う。
彼はゲイではないし俺もそうだ。ただ、世界への夢を抱え潰れそうな俺を、そんな、誰にも弱みを見せられない程弱い俺を、王子は愛玩の延長として、介抱するようにかまってくれる。
(王子にこれ以上望む方が間違いだろって話だよ)
王子が俺に触れている。抱き締められるだけで泣きそうになる。俺は、心も体も彼を求めて、そのまま死んでしまいたい気持ちになる。
――さあ、休憩はおしまいだよ
そんな間違った切望の思いを、王子はそっと宥めてくれる。時々どうかしてしまう俺の事を、信じて目覚めを待っていてくれる。王子は俺のモノにはならないけれど、沢山のモノを俺にくれる。触れられる場所全てから英気をもらって、目覚めの度に強くなる気がする。
俺と王子の小指にそれぞれ、糸があって、それはバラバラに伸びていた。別に最初から知っていた事だ。奇跡的な偶然がたまたまあって、一瞬同じ道を歩いているだけ。俺達はそれをとてもよく理解していて、俺は時々目を逸らす。糸のない手同士をそっと繋いで、このまま道別れるまで歩きたい。
テレビを見ながら王子が言う。
「ねぇザッキー。インターネットってつまりは壮大な糸電話だと思わない?なんか素敵だよね、そう思うと」
「……」
「何?」
「いえ、なんていうか王子のそういう感じ、すげぇなって」
「待って?もしかして馬鹿にしてる?やだなぁ」
アハハ、と声を立てて笑っている。
「愛を電気信号に乗せるって考えるのはなんだか味気ないなって」
王子はとてもロマンチストだ。数多の女性の耳元へ甘く囁く彼の姿が、俺の脳裏に浮かんでは消える。
「でも形はどうあれ繋がってるんだよね。世界中の、色んな人々に」
メタリックな線かガラスの線か。はたまた空を彷徨う無線なのか。彼の囁きが世界に広がる、そんな光景を想起する。
「何?どうしたの?」
王子をギュッと抱き締めると、ふわりと心地良いにおいがする。王子は纏う空気ごと俺を包む。やっぱり泣きそうな気分になる。
(俺達に糸はなくても、空気はどこにだってありますもんね)
俺はそう思って質問をする。
「王子の使ってる香水、何ですか?」
もしかすると彼の手元に届いたかもしれない、そんな可能性のある瓶を買おうと思った。それは空気を介した俺達の繋がり。繋がっていられれば、なんでもいいのだ。
