【お題】泡沫の夢より
【10940文字】
秋ごろ書いていた習作詰め。
Twitterのお題bot「泡沫の夢」さんからお借りしました。
殆どワンドロ未満。イメージはひとコマ漫画的、一部連作っぽいものも。番犬海外移籍前提の悲恋設定多め、脳内で再会妄想の補完ヨロシクお願いいたします(丸投げ)
今が全てだと思っていた。消せる過去など無いというのに、ぼくはなんておこがましかったのだろう。
— 泡沫の夢(手動お題) (@ut_dree) August 9, 2015
<SS>
心が裂けていくこの痛みを、ほんの少しだけ感じてはいた。彼を強く思う気持ちと、自分だけが可愛い、そんな強欲。人に恋するというこの事象は、色々ままならぬ事が多い。
僕はあらゆる場所で残像を見る。それは意思しての事ではなかった。思い出の残る自宅がとても辛くて、部屋を引き払う事に決めた。持ち物もほぼ一新する事にした。新しく人生をやり直すつもりで。だから今一番辛い所は、この練習場となってしまった。もっとたちの悪い事になった。
何て事もない顔をするのは結構得意だ。当然誰にも気取らせない。それでも不意に僕のこの目が、彼を探して彷徨ってしまう。
(ああ、懐かしいな)
今日見たスタジアムに掲げられたゲートフラッグは、随分昔から目にしたものだ。15の文字が、彩る名前が、僕の心をさざめかす。未だ彼を追う人がそこにも居る。心の中で握手をする。
その時さえ良ければいいと思っていた。実際そうして生きてきた。振り返り思い出に耽る事は、暇潰しにはなれど意義はない。
(なのに、こんな事になるなんて)
持ち物の全てを入れ替え、それでも尚、僕はあの頃の香水をまだ使っている。
(この香り、君はまだ憶えてる?)
手なんて簡単に離せると思った。そもそも繋がっていなかった。なのに、もう先に進めなかった。君を甘く考えていた。僕の頭は君で一杯で溢れんばかりだ。自分のおこがましさに呆れる思いだ。消せる過去など何一つないのに、僕は鈍くて気付けなかった。
