俺がその後に知った事
【10845文字】
先日の後天性わんこ崎のカットした初エチシーンを気晴らしに書きました。いい気晴らしになりました。目的のエチーシーンは2ページ目で自分で長いよやっとかよと少し辟易。1ページ目は飛ばしてもかまいませんw
ぷは、と口をはなして、目を見開いては呼吸を整えた。舐め合いじゃれ合う、それではない事。俺はもう男同士は交尾出来ないという王子の説明は十分すぎる程理解していて、だから今の俺にとってはキスがそれと同義の行為だった。だって王子は俺の全部を受け入れ、親子ではやらない行為をさせてくれたのだ。願いが成就した瞬間に天にも昇る気分になるのも当然で。
「……?」
けれど感動至極の俺とは逆に、王子はクスクス笑っていた。
「ザッキー、それは子供のキスじゃないか」
そういって王子は俺を下に組み敷き、俺の唇をペロリと舐めた。
「……ッ」
「したかったのは、そうじゃないだろう?違った?」
俺はぼんやりとしていて呆気なくマウントをとられ、情けなく王子を見上げていた。
「じゃあ、今度はボクの番。していい?ボクのいつものやり方で?」
頷く間もなく。俺は王子から人間の成体の行うキスを受けた。擽るようなその舌先は俺の口を弄む。俺はその度身を捩りながら、ハァハァと呼吸を乱しながらもその快楽に酔っていった。
(あ、やべぇ、)
体が麻痺して抵抗出来ず、またがる王子に熱が上がる。動けばそれが刺激になって、ドンドン我慢がきかなくなる。助けを呼ぶためにトントンと、俺の手の合図も王子は無視する。
「キスだけでそんなに感じて……いいよ?気にしなくても、そのまま心と体の反応に正直なままで」
王子はとても器用に俺の上の歯の裏をコチョコチョ舐めて、たまらなくなって声をあげた。それでも王子は容赦せずに、クチュクチュと卑猥な音をたてて延々キスを繰り返し、そして犬だった頃の俺をあやしたみたいに、耳裏や首筋をサワサワと撫でまわす。
「あ、」
もう駄目だと思った瞬間、俺の体がビクリと跳ねた。あっという間に、射精していた。
快楽の余韻の中にいる俺に向かって、王子はこんな事を耳元で言う。
「やっぱり、長いね」
「あ……、?」
「ほら、まだ終わらない」
そうして王子は体をずらして、俺の下腹部に手を触れた。その刺激でまた精を吐く姿に、ウットリとした顔でこう続ける。
「キミは人の形をしてるけれど、絶頂の時間がとても長い。やっぱりところどころ犬なんだ」
「あ、……うぅ……?」
「ほら、出始めても続けてたら、こんなに……ドンドングチュグチュになってっちゃって」
「ッ!」
塗り込められるように擦られ続けて、俺はどうにかなってしまいそうだった。
「いつもね?こうしたらキミ、どうなるのかなって、気になってた。でもなんだかボクの方が恥ずかしくなって、途中でやめちゃってたから」
「……あ、あ!」
「気持ちいい?中途半端でスッキリ出来ずに苦しかったよね?これからはこうして全部出しちゃっていいんだよ?」
そうして寧ろ苦しいくらいに俺は王子に搾り取られて、あまりの事にぐったりとしたまま、王子のいいなりになっていた。
「変な風に教えちゃったから、だからだよ?そのせいでキミの朝の失敗もあんまり減らなかった。フフ、ザッキーが切ない体を抱えたまま毎日しょぼくれてるの、すっごくエッチで。にやつくの我慢する方も大変だった」
「あ、うぅ、」
「ゴメンね?もう意地悪しないからね」
「ッ!」
「そのかわりもっとエッチな姿見せて?いいよね、ザッキー」
そうして恍惚として震える俺を、王子は舐めるように眺めた。
「じゃあ、次はボクのお手伝い。足、しっかり閉じててね?」
自分の精をそのまま閉じた股下に塗られて、少し怖いとさえ思える王子を、俺は漫然と見上げていたのだった。
(こ、こんなやり方もあるんだ……)
それをしている時の俺の気持ちはなんだか戸惑いばかりだった。
「ちょっと、セックスみたいだよね」
時々キスをしながらそれをする王子は、とても、とても卑猥な姿で、雄のそれをこすり合わせて、俺は再び興奮を始めた。
(あの時のお客さんはこの王子を知ってるんだ。なんだか別人みたいな、なんだろ、怖いみたいな、見てたら体がジンジンして)
「ああ、キミ、また……」
「ぅ……」
俺の両の手のひらは今、王子の両手でしっかりと自由を奪われ、露わになったあちらやこちらを、舐められたり、齧られたり、王子のやりたいようにされていた。絡み付く指と指が時々蠢き、その感触にもゾワゾワした。
第一前後するヌルヌルとした王子の感触がたまらなかった。人の皮膚は薄く、感覚は鋭敏。俺の吐き出したものの匂いが部屋一面に立ち込めていて、すぐにでも王子のそれと混ざり合いたいと、そんな事を願っているような錯覚さえした。
「王子……」
「ん?」
「好き?王子も、これ、気持ち、いい?」
「うん、気持ちいいよ」
「ッ、んとう?」
「本当だよ?すっごく気持ちいい。もっともっと一杯したい。ザッキーも?」
コクコクと頷いてキスをねだる。俺達はそうして興奮し合い、二人でトロトロになるまでやり続けた。心も体も愛おしくてたまらなくて、両手の自由を取り戻せば、王子を真似て彼に触れた。離れがたく別ちがたく、延々と互いが互いを隅の隅まで、そうやって途切れることなく愛でに愛でた。
俺達はそうして当たり前の様に、時々そんな時を過ごすようになった。どちらともなく始まるそれは、所謂射精そのものが目的ではなく、お互いの存在を確かめあう為の呼吸か食事のそれのようなものであった。その昔あった、ギュ、のようでもあり、欲望を埋め合う行為でもある。その時間は、時に軽く時に深く、いつしか二人、それを迎える時が満ちていく事になった。
夜、いつものようにじゃれ合う中で少しずつそれは始まった。触れて触れて、一緒にいて、何かを感じながらもわからないふりをし続けてきた事だった。暗黙のうちに見えていたのは躊躇と、僅かながらのもどかしさ。俺と違って王子はもう雌の体を知る人であり、ただ触れ合うだけの行為の中に満たされきれぬ感覚を持つのは至極当然の事だと俺は思った。
「……いいですよ?」
王子はやっとの思いで口にした事をさらりと受け流すので、俺は更に言葉を続けて気持ちを伝える羽目になる。
「す、好きにしていい、っつー事ッス……そこ……も」
器用に俺を弄んでいた王子の指先が、ピタリと止まって息を詰めた。どうやら俺の言う意味を今度はしっかりと理解したらしい。
「っつーか、して欲しい……ッス、王子」
オズオズとしがみ付く俺に向かって、王子が優しくこう言った。
「ザッキー、キミは今自分が何を言ってるのかわかっているの?」
「わか、……てます」
「キミは雄で、雌じゃないし。ボク達にそんな行為なんて必要なくない?無理する事ないよ。そんなのいらない」
「……いらない?違う、いる。どっちがどうってわけじゃなくても、俺達もっともっと“一緒”出来る、そうで、しょう?」
「だって痛いだけだよ?キミからすれば」
王子の指先はそこにさりげない形で近づいた。
「知らないからそんな事言えるんだ。吃驚してきっと自分の言った事すごぉく後悔する」
理性の言葉を連ねる王子の中に秘された抑えきれない欲望を感じて、俺は心の中で覚悟と、そして大いなる期待に打ち震えていた。
(あ、王子、来る……?)
「ここ、そんな事に使わなくったってボク達は」
そして彼の美しい指先がサラリとそこに触れ始めた瞬間、思わず小さく声が漏れた。尻尾に触れるとひくつくそこを彼は前からとても好いて、時々戯れの中でサラサラ触れては何もなかったように去って行った。ちょっとくすぐったくもあったし、少し物足りなくもあって、だから、きっと大丈夫、怖くないと思った。だから、そのまま、大丈夫、して欲しい、とそう言った。すると円を描く様に彷徨う指が、通過する度に少しずつ俺の中に侵入を謀り始めた。
「意地っ張り。震えているよ?」
「そ、れは……ッ、あッ」
躊躇の指を追うかのように、腰を持ち上げ王子を追う。
「……もしかして……感じているの?」
その一言に、火が灯る。王子の言う通り、俺は初めてのこの行為に快感を得ていた。
「怖いんじゃなくて、気持ち、いいの?」
なんだか不思議な感覚だった。それは王子も同じだったようで、戸惑いながらも興が湧いたか俺をジッと観察しながら、指先の行為を少しずつ深めていった。
今まで経験した事もない変な声が出てしまった。自分が自分じゃないみたいだった。王子の指は綺麗で、長くて、戯れのように体を弄られ、苦しいのか、気持ちがいいのか、もうわけがわからなくなった。
「ザッキー、駄目だよそんなになってしまって」
王子が俺に何かを言って、でも聞き取れないままに恥じ入った。
(ゴメ、王子……変、なっちゃ……、た、俺)
「大丈夫?」
「王子、王子……」
「ああ、ボクもう駄目だ、していい?」
返事も出来ないままにそれは中にやってきて、王子の言うように激しい痛みに見舞われながら、俺はそれを超える恍惚に酔う事になった。
(な、なんだ?王子、俺、……)
これが駄目になるという事なら、いくらでも駄目になってしまいたかった。見上げる俺を、見下ろす王子がジッと見ていて、呼吸も同じに、鼓動も同じに、まるで一つの生き物になってしまったみたいだった。
(王子、王子、俺、今……ねぇ、王子も?教えて、王子)
心の中で問いにならない問いを続け、そして聞こえない、うん、の言葉を、沢山俺は聞いていた。
(そ、か……俺ら、“一緒”?王子、本当にこれでもう)
一体感とはこういう事なのかと思う心もいつしか有耶無耶にかき消されて、俺は王子と一緒になって快楽の向こうにある陶酔の世界へ当たり前に飛び込んでいった。
やっと俺が正気を取り戻した頃、王子はその行為こそを、人のする“愛の営み”なのだとそっと告げた。交尾なんてしないと言い放った彼の、その言葉の意味を俺はこの時に知った。人は心も使ってそれをやる。合意がないと出来ないというのは、まさにこれを意味していたのだ。
(俺がしたかったのはこれだったのか)
やってみて気付く色々な事。俺の想像していた“交尾”と、今日王子がしてくれた“愛の営み”は全然違う。
「痛かったね?大丈夫だった?」
「平気です、王子」
「そう?本当に?」
そして、王子の手は昨日も今日も変わらず俺にとても優しく、だからきっとこの先も同じだと思った。あの時間、あんなにも心と体を通わせた同士なのに、王子は少し不安げに俺を見るので、なんてことはないと言って、俺は元気満々に力こぶ。
「ザッキーったら……キミって本当に……」
そうして額にキスする王子は、昔も今もそしてこれからも俺の自慢だと、そう思った。
「キミはそうやって簡単にボクを甘やかしてしまうんだから」
「何言ってンスか、それを言うなら」
「ありがとう、ザッキー、大好き」
俺の話を聞きもしないで、王子は何度も何度もそれを言った。彼の「ありがとう」と「大好き」がこんなにあれば勇気凛凛、なんでも出来る気がして、だからそれを言おうとしたのだ。でもその前に王子が言う。
「キミが居てくれるだけでなんでも出来る気がするよ」
俺は思わず、ク、と笑ってしまって、
「同感です。ってことは俺ら二人で居れば無敵って事ッスね」
と返事をすれば、王子も同じように笑って、
「そうだね」
と嬉しそうに俺に言った。
