夢喰いの部屋
【6399文字】
ジノザキアンソロの没原稿です。一ページ目はアンソロの規定文章。ドロッドロなプロットだったんですけどライトにしようと削ったり筋曲げたりしたら収拾つかないことになってしまいました…めっちゃ没っぽい空気感ですね
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あの人の部屋で過ごす時の決まりごと。
一つ、自慢の椅子に腰かけて飲食をしないこと。一つ、冷蔵庫の隣のワインセラーには触らないこと。
それから。
「寝室の斜め向かいのドアは絶対に開けないこと」
その言葉を聞いたとき、俺は首をかしげた。王子の言うドアの存在なんて、これまで一度も意識したことがなかったからだ。それでも、見るなと言われれば見たくなり、知らなくていいと言われれば知りたくなるのが人の性というものだ。
「どうしてですか」
「どうしても」
興味本位で尋ねた俺に、即座に返ってきたのは短い返事だった。彼らしくもない、言葉巧みに俺を煙に巻くくらい彼にとっては朝飯前だろうに。
ますます興味をそそられながらも、どこか有無を言わせぬ雰囲気に、俺は分かりましたと従順にうなずいた。
彼はにっこりと微笑むと話題を切り上げるようにコーヒーを淹れに席を立ち、それきりその話はしまいになった。
声を大にして言いたいのだが、そのときの俺には本当に、誓って、彼の秘密の部屋をのぞき見るつもりなどなかったのだ。
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