ばかなこと
【13216文字】
赤崎移籍により別れて数年のジノザキ。帰省の際にETUに立ち寄って
2ページ目は補足用に付き合い始めてからもう一度よりを戻すまでの流れを今度は地文ばっかりで書いてみました。
文学妄想お題ったーの太宰治「もの思う葦(その二)Y子」が元ネタSS
「捨てられたと思ってた」
「その通りさ」
「何故?どうしていつもそんな言い方を」
「どうして?どういう意味?よくわからないな」
「俺はキチンと話がしたい」
「してるじゃないか」
「してませんよ」
「してるさ」
「してません!」
「そう?じゃ、そうなのかも」
「王子、どうして自分で全部そうやって決めてしまうんですか?」
「ハ、ハハ」
「なんかおかしいですか?」
「いや、失礼」
「俺、馬鹿な事言ってますか?」
「どうだろうね」
「そうみたいですね」
「……」
「王子……」
「……」
「王子……?」
「そうかもね」
「……!」
「何?自分が言ったんだろう?馬鹿な事言ってるって」
「……」
「ボクは同意しただけさ。じゃ、もういいかな?さよなら、ザッキー」
「よくないです!王子!」
「王子!」
*
「王子」
「ああ、まいったなぁ、よくボクがここにいるってわかったね。待ち伏せだなんて目立つ車も考え物だ」
「王子、やっぱりもう少し話をさせてください」
「またかい?キミも懲りないね。デート中に割り込んでくるとか、信じられないよ」
「あの、スイマセン、俺王子と話があるんでここで帰ってくれますか?」
「何勝手な事を」
「俺すぐあっちに戻らないといけねぇから……だからスイマセン。王子、ちょっと借ります」
「ねぇザッキー、キミ、ボクがそういうの大っ嫌いだって事くらいわかっ」
「え?そうです、赤崎です。そうそう王子と元チームメイトで。え?参ったな、あれはたまたま、えぇ、でもありがとうございます。はい、そうなんです、今日はとっても大事な話があって。ああ、そうでしたか、特別版の取材で?ああ、もう今日は終わったんですね、良かった」
「ザッキー、そんなのどうでもいいだろ、キミには関係な」
「わかりました。是非。えぇ、当然ですよ、いつでも。いいところですよ?飯も美味いし。取材に来るんだったらいい店知ってるんでご馳走しますよ。はい、ありがとうございます。頑張ります」
*
「待ってよ、何勝手にボクの車に」
「乗り込んじまったもんはしょうがないッショ、諦めてくださいよ。話終わったら降りるんで。ほら、王子もボヤボヤしてないで乗ったらどうッスか?」
「わかってるさ」
「久しぶりだな、車、買い替えてなかったんですね。驚いた」
「そんなのボクの勝手だろ」
「車検出すの面倒だから替えるってカタログあんなに広げてたのに」
「うるさいな」
「あんたあんなに飽き性だったのに随分長い事……ああ、あれですか?たまには俺とこうしてドライブした事、思い出したりとか」
「……キミ、性格悪くなった?昔はあんなに可愛かったのに」
「今でも可愛いもんでしょ、あんたからすればね」
「ハ、」
「もうすぐあの頃の王子と同じ年だ。そりゃ俺も変わりますよ」
「……ふーん」
*
「どこ泊まってるの?送ってあげるから早く言いなよ」
「最近の出版社は王子に女性記者ぶつけちゃ取材になんねぇから駄目だってルールすら……」
「ボクの話、きいてる?場所。早く」
「あの人ずっとボーッとしちゃってたでしょう?ったく、デートだなんてシレッと嘘付きやがって」
「今から口説いてデートになるはずだったんだよ。キミに邪魔されちゃったけどね」
「お手付きには手ェ出さねぇルールじゃありませんでしたっけ?してましたよ。指輪」
「ホント、目ざとくなっちゃって」
「最近は見境なしなんですか?まさかな」
「何をどうしようとボクの勝手だろう?勘弁してよ。そういった下世話な会話嫌いなの知ってるくせに殴られたいの?」
「いつまでもそうしてふらふら……彼女に叱られちゃいますよ?」
「うるさいなぁ」
「叱られちゃいますよ?」
「だからうるさい」
「ちゃんと王子と話出来るまで絡み続けますよ?あんたが嫌がるような事、俺一杯知ってますからね」
「……」
「ニコニコ愛想いいけど、王子ってめっちゃ偏屈ですもんね」
「……」
「例えばこの車のサイドボックスん中とか、秘密主義のあんたが見られたくないもん隠してるのだって俺知っ」
「ハ、知ってたところで」
「開けた事はねぇけど、実は暗証番号とか全部わかってたのも知ってます?滅茶苦茶単純で超ウケr」
「あーあー、わかったよもう」
「何がッスか」
「……キッチリ話つけようじゃない。金輪際会わなくて済むようにね?もうこういうのうんざりだ」
「ありがとうございます、はー、よかった」
「こっちは全然よくないけど」
「はは、しつこくされたらあっという間にヤル気なくなるのも前と変わらねぇッスね」
「……減らず口叩いてないで何をどうすればボクを解放してくれるんだい?」
「ボックスの番号も固定でほったらかしとか、意外にズボラっつーか」
「だからそういうのを減らず口って言うんだよ」
「助かりました。王子が根性なしで」
「ハ……もう開いた口が塞がらないよ。一体キミは何を」
「今広いとこに泊まってんですよ王子。部屋、ダブルしか空いてないって言われて……だから。そこ行ってからでいいッスか?」
「何?そんな真似したってもうキミとなんか寝ないよ?」
「いや、だからたまたまですって!だってあんた俺の事もう家に入れんの嫌でしょう?」
「当たり前」
「でしょう?でもこんな風に車で話しててもなんか落ち着かねぇし、今までだって碌な事にならなかったし。でも話題が話題だからどっかの店でってわけにも。別にどうこうしましょうよって誘ってるわけでもないですから」
「ま、確かにしょうがないね」
「嫌だろうけど」
「そりゃそうさ」
「わかってますよ!だからさっきありがとうございますって言ったじゃねぇか!」
「あ、そ」
「付き合ってくれんでしょ?」
「放り出していいんだったら今すぐでもやるけど?」
「いいわけあるかよ!なら俺、しがみ付いてでも叫んででもここから絶対降りませんからね!?」
「あー、はいはい」
*
「へー。ここのホテル使った事ないけど部屋に入るとそれなりじゃない」
「それなりって……中途半端なリアクションに不満そうな口調をどうも。そこ、座ってください。何か飲みますか?」
「いや、別に」
「でも」
「いいって」
「コーヒーとか。あ、緑茶のティーバッグとかもあるみたいで」
「ねぇ、聞きなよ。いらないって言ってるんだ。それは別に遠慮とかしてるんじゃなく……飲み物がいる程長居する気はないって意味で。わからない?」
「あ……」
「ハハ、昔からキミってそういうとこあったよね。それくらい察せないものかなぁ」
「……」
「またそんな顔。別に貶してるわけじゃ……わかってるよ、悪気ないんだろう?自分が鈍だって理解出来てるなら、そんなに気にする必要もないさ」
「……」
「積み重ねて経験を増やしていけばいいだけだ。そうだろう?こういうケースもあるって説明してるだけの事で」
「スイマセン」
「謝らないで。ああ、嫌だな、また……こういう空気苦手だ」
「……」
「……だから嫌だったんだ。普通に話せるならともかく、こんな感じになっちゃうのがわかっていたから」
*
「さて、じゃ、気を取り直して」
「……」
「緑茶?入れてくれる?イライラしたら喉が渇いた。少しお互い気を落ち着かせて、それからキミのお望みのお話とやらを膝を突き合わせてやろうじゃない」
「……」
「ん?」
「あ、いや……」
「何?」
「待っててください、すぐ持ってきます」
「ん、頼むね」
*
「ありがと、まあ、あれだね、想像通り……」
「それなりですか?」
「フ、まあね」
「コンビニでなんか買ってこればよかったかな」
「構わないよ。たまには悪くない。こういうのもね……あ、」
「?」
「フフ、思い出すね。ほら、前同じような事、あったじゃない?あん時に比べたら随分マシさ」
「あ、急に王子が旅行行こうって飛び込みで泊まったホテルの」
「そうそう、あの時は袋が破れてるの気付かないでキミッたら、ハ、ハハ」
「だって、やり直そうにも予備なんてなくて」
「いくらなんでもボクにあんなの寄越した子初めてだよ!ホント、マズかった!ハハ」
「へ、変な事思い出さないでくださいよ!」
「だって、ハハ、ハ」
「……」
「ハ……、ん?何?」
「あ、……いや、なんか」
「?」
「……」
「黙ってちゃわかんないよ」
「ス、スイマセンちょっと……」
「何?急に立ち上がって、何処へ行くの?」
「やっぱコンビニでなんかつまむもん買ってくるんで!絶対逃げないでくださいよ!また思いっきりうんざりするような事、事ある毎に繰り返しますからね!そうだ、車のキー持ってっちまおう」
「ちょっと、ザッキー」
*
(吃驚した……なんか急に王子優しくて、笑ってて、今までの離れてた時間が嘘みたいに感じて……ヤベェ、目ェ赤くして戻ったら王子にバレる。錯覚するなよ、俺ら終わってんだ。ただ、今日はキチンと、本当の意味で決着つけるだけなんだから。王子はその為だけに時間を割いてくれてるだけなんだから)
*
「やあ」
「ど、どうも……」
「あんまり遅いからあと5分したら帰ろうと思ってたところ」
「待つのって苦手ですもんね、王子」
「何?ボクをいらつかせる作戦のつもりだったの?」
「いや、そうじゃねぇけど」
「あんなに可愛かったボクのザッキーがこんなに擦れちゃって……残念だな」
「……」
「冗談だよ。馬鹿だね」
「……」
「ホント、馬鹿だなぁ。しょげないでよ、こんな事で。何買って来たの?見せて?」
*
「ハー、なんだか久しぶりに笑い過ぎて疲れちゃった」
「王子、酒なんて飲んでませんよね?」
「馬鹿、運転してたでしょう?何言ってるんだか」
「王子は変わらねぇなぁ」
「ん?」
「いや、相変わらず人生楽しそうに暮らしてるなって」
「フフ、だって、その為の人生だろう?違うの?」
「そ、ッスね」
「そうさ」
*
「それにしてもさ」
「はい?」
「……キミとの付き合いっていうのも、とてもいいものだったよね?」
「……」
「今でも時々懐かしく思う時もある。ボクの楽しい思い出の一つだ」
「王子……」
「この前アシスト決めたんだって?」
「え?なんでそれを」
「さっき取材依頼受けてる時に話してたけど?もう忘れたの?」
「あ、あぁ。そうか、それでか」
「ゴメンね、逐一キミの事をチェックしてたわけじゃなくてさ」
「い、いえ、別にそんな。そういうもんだって最初からわかってますしね」
「……そういうもの?」
「えぇ、ガラじゃないでしょ。王子は興味あるものにしか興味ないし」
「まあね」
「でしょ」
「……ちょっと残念だなぁ」
「え?」
「いや別に。キミはよくボクの事をわかってるなって」
「?」
「興味ないものには一切興味がないんだって事」
*
「さて。キチンと話がしたかったんだよね。そろそろ本題入ろうか」
「ッ!」
「本当のところが知りたかったんだよね?ちゃんと話をするからよく聞いて」
「……は、はい」
「あの時は」
「……」
「ボク、少しでも穏やかにケリをつけてあげたくてさ。だってそうでないと……」
「?」
「嫌な話も混ざる事にもなるけど、逃げださないでしっかり聞いてね?キミが望んだ事なんだから」
「はい。わかってます」
「じゃ、嫌なところから言おうか。まずは最初から。そもそもさ、キミとの付き合いについてはただの火遊びに過ぎなかったんだよね」
「……ッ」
「ちょっと驚いてるみたいけど、あれだよね?流石に全然知らなかったわけじゃないよね、ザッキー?それとなくボクもはっきりとは口にしなくてもあくまでもそういう形だって意識付けはさせてきたつもりだし」
「……は、はい」
「全くキミって子は変わってて。威勢がよくて、でもナイーブで。人を平気で傷付けるような事を言うけど、気はよくて。フフ、籠絡するのなんて簡単だろうって思ったけど、やり始めたら意外とわけわかんない反応するところもあって……結構、面白かったよ。想像してた以上に楽しめた」
「……」
「元気よくチームから飛び出してく前に攻略終わらせられれば万々歳。だからボクは最初からそんな気持ちでさ。でもキミ、思ったよりも早く出て行く事になっちゃったからね。ボクが飽きるより前に、ごたごた、もうあっという間で……」
「王子……」
「でも、どうやらキミの方が全然もたついてて」
「……」
「本当はもうひと遊びさせてもらえたらな、くらいには思っていたんだけど。キミにちょっかい出して、からかいまくって、迷わせて。でも。それどころじゃないくらいキミは酷く混乱してた。ボクにそんな事をされたら、思わず夢を手放してしまいそうな程度には」
「……」
「返事も出来ないくらい図星?だよね。実際そうだったもの」
「……はい」
「だから、そういうわけでキミは正しい。ボクはキミを捨てたわけじゃない。あの時、ボクは確かにもう少し一緒にいたいのにな、寂しいなって、思ってたんだから。捨てたと思わせようとしたのも本当の事。ちょっと強がり?そういうのもあったかと思う」
「王子、なら!」
「待って勘違いしないで。ボクは多少寂しくは思ってみても、キミの人生を背負う気なんてさらさらないからそうしたんだ。理解出来るかい?確かにあの時点で未練はあった。でも、選択した段階でもうケリはついてる。ボクはキミを送り出せたし、キミは海を越え。ボクとキミの世界は別々のものになったんだよ。とっくの昔にね?」
「……」
「それが現実。わざわざ説明する事もないくらいの。ボク達の現実だよ」
*
「ねぇ、ザッキー……あっちであんまりうまくいってない……のかな?」
「……」
「だよね。じゃなかったら後ろを向いてボクに縋ろうなんて。とっても今、キミ、キミらしくない。今日は何回かこれを言ったけど、全部いい意味で言ってたわけじゃない。わかるよね?」
「……はい」
「ん、いい子だ」
「……」
「悪い子になって縋ればまだボクが絆されると?」
「……そうじゃ……、いや、スイマセン、そうかもしれない。わからない。どうしていいのか俺……でも我儘にゴリ押しすれば王子が絆されるとか、全然そういう風には、そんなアンフェアな事は思ってなくて、でも俺、どうしてもどうしても、ただただ王子と話、したかった。ただわけわかんなくて滅茶苦茶な事して……スイマセン、王子、俺、俺の事しか考えないで……また甘やかしてもらおうだなんて、図々しい事、俺……思ってたのかな。そんなつもりはなかったけど……そうなのかな、俺?」
「ボクとキミは終わってる。それはちゃんと理解出来ているんだよね?」
「……はい。わかってるつもりです」
「でも、キミの中でケリがついていない。納得いってない。それを悩んでいる」
「はい……」
「悩みを抱えるキミは誰にも相談出来ないから、結局ボク以外に行くところがなくて?」
「はい……」
「ボクにスティディが居ても、それを押しのけてもキミはボクと居たがった。他人の迷惑も考えない、キミらしからぬ強引さだ。まあ、事実は取材だったから違うけど、意味はそうだよね」
「は、い……」
「そういう事、ボクは当然だけど、キミも嫌いだったはずだよね」
「はい……」
「それでも?他にやり方選べないくらい切羽詰っていたのかい?」
「……」
「怖くなかった?ボクに嫌われるような事をわざと選んで」
「怖かったです」
「関係は終わっても良き友人、そう、キミが望む適切な相談相手としての関係性をボク達の間で今後構築していく事だって可能性ゼロじゃなかったんだ。あんな事をしたらそれも全部壊してしまうんだよ?わかるよね?」
「はい……」
「それでも?それでもあんな無茶苦茶を選んだのかい?」
「はい……」
「……弱った子だなぁ、やる事が不器用というか極端過ぎて」
「友達なんて……増しては相談相手だなんて無理だそんな……なれるわけがない。だって」
「だって?」
「王子と俺はあまりにもそもそもが違い過ぎる。繋がってるものなんて何もない。なのになんで王子が俺に寄り添う必要があるんだ?年も違う、居る場所も違う。見えてるものも違う。好きな物も違う。食事も、話題も、見るテレビも、読む本も、聴く音楽も!吸ってる空気でさえきっと俺達は全然」
「ザッキー、落ち着いて」
「助けてください王子!なのに俺はあんたがいないと」
「……ッ」
「お願い、わかってます、あんたは簡単にケリを付けられる人だ。でも俺は違うんです。違った。ずっとずっと、もう何年も傷を引き摺ったまま、ねぇ、俺だってあんたがあの時言ったように、時間がこの空虚感を癒してくれるものと思ってた。信じてた!なのに、こんな……ドンドン俺、駄目になっていくばっかりで、どうしていいんだかわかんねぇ」
「そんなにしがみ付かなくても逃げないから。ね、ザッキー少し腕の力を緩めてくれない?」
「……嫌だ、王子、俺は」
「ききわけまで悪くなったのかい?」
「だって、もう一度、ねぇ、俺を傍に置いてください王子、お願い……俺の人生なんて背負わなくていいから、だから俺の事……忘れないで……お願いします。ケリなんて……嫌だ、つけないでください……王子の心の中に居たい、俺、王子の傍に居たい」
「……今更だ、ザッキー。今更だよ」
「王子、お願いします……嘘でもいいから……俺の傍に居るって言ってください」
「ザッキー」
「……」
「本当に駄目になってしまっているんだね」
「……王子、王子、あんたがいないと駄目なんだ、もう耐えられない」
「そして、それに絆されるボクであってくれと?」
「……」
「違うよね。キミは全部わかってやってる。ボクはそんなものには付き合わないって事をね」
「……」
「キミは茶番に付き合わせるためにボクを呼んだ?」
「う……」
「そうじゃないでしょう?馬鹿な事をしてるって、ちゃんと理解出来ているでしょう?」
「……は、い」
「そう、わかってるならいい。じゃあ、離れてくれない?ボクが同じ事何度も言うの嫌いなのも知ってるよね?ザッキー」
*
「いい子だね。ちゃんとキミはわかってる。全部吐き出してしまいたかっただけなんだよね。あの時ボクに伝えそこなった言葉の全てを」
「……」
「フフ、少し見当違いなほど時差はあっても、まあ、それなりに感動的だったよ、ザッキー」
「……ッ」
「ありがとう。思いのたけをボクに打ち明けてくれて。キミ、ちゃんとボクの事を好きだった。言いたくても言えなかった。でも、ようやく、それを言えた」
「はい……」
「スッキリした?」
「……そ、それは、まあ……少し、ですけど。めっちゃ恥ずかしいです。あんまり見ないでください、そんな」
「ここでキミを抱き寄せてしまうような男なら……キミからのその情熱を受け止めるだけの資格はないって事なんだろうね」
「王子?……なんて?」
「いや、なんでもない。キミって本当に成長しちゃったんだな……ってね」
「?」
「もう満足かい?言いたい事言って、やりたい事やって、なんだか随分と気が済んだみたいじゃない。ボクとしたかった話はこれで全部終わりかな?」
「王子、違うんです、俺は……」
「ん?」
「いや、ありがとうございます。全部わかってて、付き合っててくれて」
「いいさ。必要な事だったんだろうからね」
「じゃあ、話はそろそろ終わるので、終わったら返事を」
「返事?」
「はい」
「何の?」
「こんなに駄目になってしまいました王子。俺はあんたの事が本当に好きで好きで」
「フフ、片意地はらなくなった分だけぐっといい表情になった。無理矢理連れてこられたけど、その甲斐はあったかな。見れて良かった。ザッキーのその顔。男っぷりが上がったね」
「……」
「人生は短いんだ。さあ、宿題が終わったら明日からちゃんと前を向いて歩こう。出来るよね?」
「はい。ありがとうございました」
「……それにしても」
「?」
「キミって子はかわいがる分にはいいけど敵に回すと最悪だって事が今回の事でよくわかったよ。暗証番号もすぐ変えなきゃだ。ハハハ」
「ハハ、そッスね。急いだ方がいいかもしれない。だって俺でさえわかっちまうんだから、もしかしたらとっくに彼女に覗かれてるかも」
「……」
「見られてヤバい物は誰にもわからないところにおいといた方がいいと思いますよ」
「えぇ?でも手元にないと意味がないよ」
「そりゃそうだけど」
「ま、忠告には感謝するよ。ばれちゃうもんなんだねぇ、そういう事って」
「ですね。好きな人の事なら色々見つめて、考えてしまうものだから」
「……ハハ、なんだか一度口にしたら、今度は好きの大安売りじゃないか」
「王子、改めて本当にありがとうございました。これでようやく、俺、踏ん切りがつく。引き摺っていたもの、醜いところ、全部王子に晒して、これで本当に」
「うん、そうみたいだね。よかった」
「はい、よかったです」
「じゃあボクはそろそろ」
「だから、今からまた」
「ん?」
「俺、もう一度、真っ直ぐな気持ちで王子に相応しい自分になるのに頑張りますから」
「ちょっと、ザッキー、何を」
「見ててくださいとも、助けてとも言わない。ただもう一度。いつか俺を見て、いつかまた、俺の事を面白いと思ってくれたら」
「やめなよそういうのは」
「そん時はまた、俺と遊んでやってください」
「ザッキー、せっかく今ボク達は」
「いつかでいい。あんたが振り向いてくれる日とか、そんないつか、大丈夫です結局来なくたって全然構わない。だから。ただ。だから、お別れの言葉は、あん時みたいな『さよなら』じゃなくて。『またいつか』で。今度はこうして、お互い笑顔で」
「あ……」
「王子、また。いつかまた会いましょう」
「ザッキー……うん、そうだね」
「……笑ってください」
「ん」
「ああ、俺、王子の笑顔、好きなンス」
「ボクもだよ。いい笑顔だザッキー」
「はい。滅茶苦茶やったから、でもこれがきっと最後の最後の……締め括りです……から」
「久しぶりに見る、とってもキミらしい、キミの笑顔だ。ボクもキミの笑顔が大好きだよ」
「王子には、俺が頑張ってるって……姿を……う……覚えてて、欲しくて……一言で……ほんの数秒でいいんです。俺の我儘に付き合ってやってください。笑顔で、お別れの、あ、挨拶を……王子も、わ、笑っ……」
「……」
「じゃあ、また。王子……」
「うん、大丈夫だよ、泣いてない。我慢出来てる」
「う……い、いつか……、また、あ、会いましょう……」
「いい子だね」
「……ッ……う、」
「カッコイイ。素敵な締め括りをありがとう」
「うぅ……う……うぅ……」
「……」
「は、はや……く……言っ……、おう、じ」
「……」
「おう、じぃ……、うッ……!?ん……ッ!」
「ゴメンね、偉いよ流石ボクのザッキー……」
「なのにボクはほんの少しも我慢出来やしないで……こんな風に結局抱き締めちゃって、キスしちゃって……随分とカッコ悪い王子様だね?」
「またいつかなんて言いたくない」
「言いたくない、ザッキー、言いたくない」
「あの時だって言いたくなかった、さよならなんて」
「ボクは、ボクはキミの事、手放したいなんて、手放してよかっただなんてただの一度も……」
「だから強くなって、ザッキー、もっと、もっと」
「夢とボクと、両方一緒に掴んでられるくらいに」
「笑って、」
「泣いてもいいから、そうやって歯を食いしばって、そしたらボクがその度キミが前を向ける様に、今度はうんと抱き締めるから」
「だから笑って、」
「そしたら、ずっと、はなれていても一緒にいられる」
「ずっと、ずっと、一緒に……いられる」
「わかるよね?ボクの自慢の、大好きなザッキー」
「ボクと一緒にいられる、キミでいて」
「そうして、お願いだ。キミと一緒にいられる、ボクでいさせて」
「ボクは、キミとキミの夢を愛しているんだ」
「こんなにもだ」
「こんなに、ボクがボクでいられないくらい」
「キミを思い過ぎて、身を引くくらい」
「なのにどうしても、引き切れぬくらいに」
「ね、ザッキー」
「ね?わかるよね?」
「ありがとう、本当にキミは、いい子だね……」
