お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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アシンメトリー

【15682文字】
ほのぼの告白のすれ違いから、転げ落ちるように虐め愛へ。二人とも属性持ちではあるものの最初は完全に真っ当。破壊を以て相手を自分専用機に改造していくSM調教ジノザキ。ジーノは赤崎に導かれる形で悪質な性的虐待を、赤崎はジーノに大義名分を与えるために精神的虐待を繰り返します。無邪気に飼い主の性癖を引きずり出している飼い犬のほうがタチ悪い。

        ジノザキ , ,

 あれからの日々はあまりに普通で、それでもあの日が忘れられない。王子を見る度思い出し、なにやってんだと目を逸らしたり。
(気があると言われて気になるなんて、軽薄でかつ傲慢過ぎる)

 そんな風な時のこと。練習中の通りすがりにヒソヒソと王子が耳打ちをする。
「お願いだから普通にしててよ。なんだかひどく恥ずかしい」
思わず見送る横顔の頬はほんのり桜に色づいてた。釣られて俺までカッとなり、あの日の記憶も相乗効果、元に戻すのに苦心した。

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 王子の忠告の理由というのは、その日のうちにすぐに分かった。俺がやたらと睨んでいる(?)ので、喧嘩の噂が立っていたのだ。

 俺が噂を知ったのは、仕事の終わりに上に呼ばれて、面談をしている最中だった。
「いや、別にそういうんじゃないッスよ」
何か言おうとすればするほど、ますます不自然な態度になった。
「本当ですよ。別に何もされてませんし」
当然追求もきつくなる。
「絶対ジーノがなんかしただろ」
と。
「弱み握られてんのか?お前」
と。どんどん王子のせいになるので、俺はもう終盤めちゃくちゃだった。
「だから睨んでるっつうか、少しでも技術とか盗みたくって」
ならば、と言葉尻の揚げ足か、それとも言葉を真に受けたのか、あれよあれよと止める間もなく変な流れになってしまった。

 次の日、最初のミーティング。
「ええ?ペア?王子とですか!?」
「そ、これは監督命令。ペア練系は全部お前ら組んでやるように!」
「待ってください!昨日も言ったけど俺ら」
「……いいからザッキー」
「嫌がる理由もねぇよな?吉田?」
「……」
「競争、闘争、大いに結構!切磋琢磨だ今日もよろしく!」
「監督っ」

*

「王子……」
俺は王子に謝ったのだが、逆に王子が俺に謝る。
「僕ら二人へのペナルティだけど、君の方が嫌だろ?普通に」
「そんな……」
昨日の面談が行われた際、しくじったんだと王子は言った。
「君は誤解をしているようだけど、あの人は喧嘩とか気にも留めない。コントロールが問題なんだ。仕事の品質というのかな?」
王子は昨日の面談で、監督と『仕事』の話をしていた。プロなら当たり前のこと。でもそれが王子なら不思議なことだ。ふざけてばかりのこの人が、いわゆる真面目に『仕事』について、時間をかけて面談なんて。よくわからないものが広がる。不快。もしくはこれはジェラシー?
「……まあ、ほんのしばらくだけさ。お互い、卒なくこなしていこう」
わからな過ぎて困惑の中。
(いつも二人でどんな話を?監督は王子をよく知ってるのに、俺は王子を何も知らない……)

 そんなこんなで。
「おはようザッキー。今日もよろしく」
 気まずかったのは数日だけで、普通に過ごせるようにもなった。何故なら王子も普通だったし、何より練習が楽しいためだ。
(わー、あんなのをビタッと足元で)
盗み見るよりもはっきりとその能力がよく見えた。ボールを蹴りあう。それだけなのに、王子はショーにしてしまう。
「あんまり走らせないでよザッキー」
王子はしばしば文句を言ったが、走っているような感じもしない。インパクト前に移動している。俺のモーションを盗んでいるのだ。ならばと俺も思うのに、当然こちらは全くできない。
(はぁ!?あっち!?どうなってんだあの左足!)
結局ギリギリまで見据え、走り出せるのはずっと後。
「ちょっと!!どこ蹴ってんスか王子!」
「はは!仕返し。がんばれがんばれ」
遊ばれていると言ってよかった。けれど物凄く楽しく思えた。直に王子の『仕事』に触れて、興奮しないわけがなかった。
(試合の最中ともまた違う、なんかすごく集中できる)

*

「頼むよザッキー勘弁してよ。練習なのに疲れちゃうだろう?」
「はぁ?」
軽口も随分増えていた。
「こんなのそこそこでいいんだよ。ほら、別にバレないさ」
「あんた何しに来てんスか」
「そうだね、僕にもわからない」
「練習をしに来てるんでしょう!?」
「あー、ザッキーは今日もうるさい。なんか全然楽しくない」
ふざけた言い草でヘラヘラ笑って。でも言うほど王子は不真面目でなく、常に何かを考えていて、けれど見ているものが違って、誤魔化して笑ってばかりいる。
(ああ、本当に王子は凄い)
色々変な流れはあったが、以前よりも王子を知れた気がして、それがとても嬉しく感じた。あいもかわらず会話は空虚で、本質的なやりとりはゼロ。それでも二人でしていると、繋がっているような気がした。

*

(ちょ、なんでさっきからこっちばっかり)
王子は苦手と癖を見抜いて、パス練で意地悪ばかりした。いや、単なる意地悪ではなく、鍛えてくれていたんだろうか。
「グッボーイ!ようやく取れたね偉いよザッキー!」
「だから犬呼ばわりしないでください!」
そしてよくもまあ喋ること。さっきから周りとペチャクチャと。
(ちゃんと俺に集中しろよー!)
邪魔するみたいにボールを蹴っても、何故か全部が見えるみたいに、王子はミスをすることもなくトラップをして、くだらなく見える会話を続けた。
「王子!」
「はいはい」
「わー!また!くっそー!!」
ボールを追いかけて走っていると、背中から王子の笑い声。腹が立つけど嫌ではなかった。楽しそうな王子を見るのは、俺の練習も楽しくさせた。

*

「ザッキーは利き足ばっかりだ」
「それ、あんたが言いますか?」
僕はいいんだ、とヘラヘラ笑う。王子は今日も通常運転。
「股関節が硬いのさ」
「いででででで!!」
ストレッチだって組むのは王子と。漂う香りもあの日と同じ。なるほどこれを知る者は、チーム内にも結構いるのか。
(なんだよ、そんなことくらい別にどうでも……)
気を取り直して反撃開始。でもそれも結局パス練同様、どれだけ乱暴に背中を押しても、全体重で圧し掛かっても。
「ったく、無駄に柔らかすぎだろ」
「ま、体質もひとつの才能さ」
「腹立つ!」
何をやっても余裕しゃくしゃく。それが悔しくも頼もしく。
(ああ、なんかこういうの……)
楽しくて楽しくて仕方がない、この感覚の奥にあるもの。薄々ながらも感じてはいた。
(ああもうマジで駄目過ぎる……)

      ジノザキ , ,