お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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アシンメトリー

【15682文字】
ほのぼの告白のすれ違いから、転げ落ちるように虐め愛へ。二人とも属性持ちではあるものの最初は完全に真っ当。破壊を以て相手を自分専用機に改造していくSM調教ジノザキ。ジーノは赤崎に導かれる形で悪質な性的虐待を、赤崎はジーノに大義名分を与えるために精神的虐待を繰り返します。無邪気に飼い主の性癖を引きずり出している飼い犬のほうがタチ悪い。

        ジノザキ , ,

 時々代表に選抜されると、笑って喜ぶ素振りの王子に、平気ですかと俺は問い、わざと彼を苦しめた。
「無理なら辞退しますよ、王子」
それがどれだけ酷なのか、わかった上で言うことだった。
「本当に腹立たしい子だね」
その度、狂ったみたいに抱かれた。俺もとっくに壊れていたので、とても嬉しくて幸せだった。俺は王子を激昂させつつ、愛に身悶える彼を味わい、動けなくなった王子に向かって追い打ちをかける真似をした。
「送り出せる力もないのに、無駄なプライドあるんスね」
俺のやることなすこと全て、王子はちゃんと理解していた。おかしくなるのはそのせいであり、それをすることは俺が王子を理解している証明だった。
「格好つける必要ないです。本当のことだけ言えばいい。俺はあんたが大好きだから全部見せればいいんスよ?」
愛され方すら壊れた王子は、ただただ心を閉ざしてしまう。そんなあまりに哀れな王子に、俺はうっとり頬を寄せ、大好きですとキスをした。愛を受け取りきれぬ王子へ、俺の真心をいっぱい詰めて、残酷として彼へと贈る。送り出したい。離れられない。彼の葛藤を煽りに煽れば、少しだけ王子は麻痺出来る。
「行ってきますね。すぐ戻ります」
「……」
「いつでも電話してくださいね。出られなかったら折り返します」
俺の受容は王子にとって、救いでありつつ災難だった。本当に辞退はしても良かった。その意味に王子は大いに傷付き、だから本来あるべき方へ歩いていくため部屋を出た。王子のために完璧になる。どんな矛盾が生じようとも、俺はどんなことでも出来る。二人のために血を流しあい、殺すみたいに王子を引き裂き、受け取る器が壊れていても、無限に愛を注ぐだろう。俺だけが入れる俺だけの部屋。なす術もなく住みつかれ、愛を注がれる絶望の中、すがるみたいに俺に甘えて、俺だけが知る素顔を晒す。彼にとってそれは堕落で、俺には衝動が愛の証明、俺が受容し、王子は否定し、何度もそうして繋がってきた。葛藤は王子を苛み続ける。可哀そうな王子のために、俺はなんでもしてあげる。痛めつけるように王子を煽れば、息絶えるように抜け殻になる。
 
 純粋な愛と愛故の衝動。罪の火の全てを消したいと、王子は自分ごと放棄する。王子は抜け殻になったまま、仮の完璧さで生き永らえた。無事を人づてで聞いて安堵し、俺も試合に集中出来た。会いたいけれど王子のために、世界に見いだされなければ。

*

「どうも王子。戻りました」
笑って王子に挨拶をした。不思議そうに俺を見つめて、抜け殻は葛藤を蘇らせる。その光景が大好きだった。人形が命を吹き込まれ、俺だけの王子になっていくのだ。あまりに甘美な味わいだった。嫌悪するように顔を歪ませ、俺の王子はソファで固まる。あまり無防備、そして無力で、暴力的な気持ちにもなる。だからこそ、そうっと空気のように、抱きつき彼の耳に囁く。
「王子、電話無理でした?ずっと会いたかったです」
王子が掛けられるわけがなかった。ある意味死んでいたのだし。全部知っていて俺は言う。
「俺を愛していますか?王子」
俺は王子の苦しみだから、手放してやるべきだとも思った。俺の側の葛藤だった。王子は選ぶ力すらなく、道筋は俺に決められていた。
「寂しくって、泣いちゃいました?」
おずおずと王子は俺を抱き締め、泣いてるみたい声で名を呼び、俺も彼の名を呼んで、互いのぬくもりに深く浸った。送り出したい。離れられない。それが王子の葛藤だったが、俺の方は似ているようでも、送り出すべき、離したくない、そんな形の葛藤だから、それを感じる王子はいつでも縛られるようにここにいた。それこそ本物の愛の受容。彼の思いはとても尊い。
「王子、好きにしていいですよ。なんでもしていい、甘えてください。俺には我慢しなくていいから。さあベッドに行きましょう」
葛藤の世界のオアシスになる。愛であろうと悪意であろうと、王子はいつでも渇望している。俺も王子も同じ弱さで、嵐の中で、求め抱き合う。衝動のまま。

 まるで恨みをはらすみたいに、その夜も狂ったように抱かれた。病んだ形ですくすく育てた、俺たちだけの大切な夜。
「もっと泣いてよ。聞かせてザッキー」
溢れんばかりの愛に溺れて、それでも全てを飲み干して、愛に渇く王子を抱き締め、壊れた器に思いを贈る。
「ねぇ、僕が恐ろしい?好きだなんて絶対嘘だ。いつもこんな目に合わされて、好きとか本気で狂ってる」
どんな仕打ちも耐えられた。壊れた王子が大好きだった。とっくにここに答えがあるから、いつか安心してほしかった。知りたいのなら全部見せるし、どんな秘密も暴いていいから、もう俺にひとつの嘘もないから、どうか王子も晒すのに慣れ、心でもわかってほしかった。
(でも、わからなくってもいいんです。どんな王子も好きだから。その苦しみすら愛おしいから。俺は悪い犬ですね)
散々王子に調教されて、自由自在にイかされる。恥ずかしいことをさせられて、泣いても、手酷く蹂躙されて。
「もっと怖いこと仕込んであげる。誰にも言えないような形で、気持ちよくなる子にしてあげる」
それを成す王子もある種完璧、闇深いほどに煌めいて、ああ、本当に好きだと思った。
「嫌って言ってもいいんだよ?僕のことが嫌いだと。こんなことをする僕を恨んで、逃げ出したって構わないんだ。僕以外愛せぬ体にしたから、逃げ出したってもう無駄だから」
こんなに愛してくれているんだと、彼の苦しみが嬉しくて、喜ぶ自分にまた泣いた。

*

 きっといわゆる割れ鍋、綴じ蓋。悪癖のような互いの性癖。薬物のように夜に溺れて、俺達は飽きることもなかった。プライドもなく、意地もなく、絡みつくように寄り添いあった。彼のためだけの楽器みたいに、丁寧に残酷に調律されて、彼だけのための音色を鳴らした。くまなく愛撫し奏でて欲しい、そんな恍惚過ぎる夜。二人だけで楽しみながらも、欲望は更に果てしなく、それがどうなっていくことなのかも、俺たち二人は理解していた。
「あんたのためにいっぱい走った。王子、俺っていい子でしょう?」
それは王子の欲望であり、けれど世界に行って欲しい王子の願いとあまりに真逆であった。だから俺は残酷なほど欲望を叶える選手になった。
「いいんですよ、そろそろ王子もわかってください。俺は世界を目指せるような、そこまでの選手じゃないですし。あんたもとっくに知っていたでしょう?これが俺たちの夢だって」
将来、世界に羽ばたきたい。日本を背負う選手になりたい。それは俺の願いじゃなかった。何かを成し得るために一番、わかりやすかっただけだった。王子はそれに固執していて、だから叶えてあげたくて、けれど現実は現実であり、彼にわからせるべきだった。
「ねぇ、俺をピッチで走らせるのは、すっごく気持ちがいいでしょう?」
「……」
「自分の手足みたいに使って。ねぇ、すっごくいいんでしょう?正直に言ってもいいんスよ?すっごく感じてしまうって。もっとそうして生きていたいと。ずっと一緒に。ねぇ?王子」
かけがえのない存在になり、誰かに深く必要とされ、俺だけにしか出来ないことを、求められるまま叶えたかった。
「俺が哀れで可哀そうなら、そうして絶望するんじゃなくて、沢山よしよししてくださいよ。偉いねザッキーいい子だねって、可愛がって欲しいんです」

      ジノザキ , ,