お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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アシンメトリー

【15682文字】
ほのぼの告白のすれ違いから、転げ落ちるように虐め愛へ。二人とも属性持ちではあるものの最初は完全に真っ当。破壊を以て相手を自分専用機に改造していくSM調教ジノザキ。ジーノは赤崎に導かれる形で悪質な性的虐待を、赤崎はジーノに大義名分を与えるために精神的虐待を繰り返します。無邪気に飼い主の性癖を引きずり出している飼い犬のほうがタチ悪い。

        ジノザキ , ,

 俺は王子に全身染められ、今では驚異のスタミナを持つ、得点王になっていた。これは夢にも思わなかった。こんな舞台に、アワードに、俺が立つ日が来るなんて。スーツを着込んで、トロフィーを持ち、マイクでしゃべる日が来るなんて。
「なんかいろいろ悔しいですけど、全部王子のおかげです」
表彰のために一人で来たから、会場の中に王子はいない。見ているのかもよくわからない。悔しいことは本当だ。王子は何一つわかってくれず、俺の気持ちを取りこぼすから。だから彼に注ぐかわりに、みんなに、この愛を伝えたかった。
「王子、人ばっか走らせないで、来年は自分も来てくださいね。横着しないで頑張って、MVPでも目指してください」
きっと記事にすら残らないだろう。けれど人づてで聞くだろう。何の反応もしなくったって、俺がどんなに王子が好きで、尊敬していて、愛しているかを、世界に宣言してみたかった。
(さあ、早く帰らなきゃ)
最初からかけがえのない人だった。それに気づかぬ馬鹿だった。王子を傷つけ、こじれてこじれて、今でもこじれたままだけど、気付けばこんな未来になった。まだまだ過程でゴールじゃないし、日増しにあの人を好きになる。まあ、今日は今日で一つ満足。これからも満足を増やして進む。
(王子、あんたに今すぐ会いたい)
きっと家で居眠りしている。ビシッと決めた俺を見せつけ、半ば無理やり目を覚まさせて、そんな王子にキスしたかった。

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 式典が終わり会場を出て、走るみたいにロビーへ下りたら。
「……王子?」
「全く本当に可愛げがない。わざわざこうして出向いた僕に、あんな悪口聞かせるなんて」
いるわけのない人がいた。豪奢なロビーの飾りより、人目を引き付ける華麗な姿。
「走る姿は君が似合うし、頑張るのだって君の仕事だ」
サプライズ過ぎて度肝を抜かれた。こんなことをする人じゃない。衝動的にキスしたくなり、けれど彼の目に制されて、そして目配せの意味に気付いた。手には一枚のカードキー。こんなこともする人じゃない。
「横着だなんて失礼しちゃうよ。僕がどれだけ献身的か、君が一番知ってるくせに」

 エレベーターに二人乗り込み、カメラが気になりジリジリとして、ようやく二人きりの部屋、俺は王子に飛びついていた。
「来るなら来るって」
「別に来る気は全然なかった」
「ほんとは?王子、本当は?」
「色々思うところはあるけれど、君の素敵な姿は見れたし、まあ、それなりに良かったよ」
本音を言わせるようにするまで、本当にたくさん時間がかかった。まだまだ夢への固執はあるけど、それはそれとして今を受け止め、喜んでくれているようだった。幸せを願う人だから、俺は幸せと何度も伝えて、王子も幸せになって欲しい。罪に苦しむばかりではなく、これが答えで正解なのだと。
「お疲れザッキー、少し休もう」
するりと俺のジャケットを剥ぎ、言葉裏腹、首筋にキス。いともたやすく組み伏せながら、俺の名を呼んで抱き締めてきた。俺は静かに目を閉じて、王子の首に腕を回した。

 一見仲睦まじく思える。けれどまだまだ薄氷の上。それでも沼に沈むでもなく、地上でなくても氷の上に。
「ステージの上の誰よりも、君が一番素敵だったよ」
「そうでしょ王子、惚れ直すでしょ?なんせ得点王ですし」
「……」
今に納得しきれなくても、伝わらなくても伝え続ける。
「あんたのおかげでここまで来れて、俺の晴れ舞台見てくれて、今ね、最高に幸せです」
リーグの関係者が集まるホテルで、それに目もくれず二人抱き合い、二人だけの世界に浸って、二人きりで今を祝った。
「いっぱいいっぱい、褒めてください。そしたらなんでも出来るから。どんなことでも望んで欲しい。もっとください、あんたの欲望」
もっと俺たちは愛し合えるし、きっといつか分かり合えるし、きっと心から笑い合えるし、そんな未来を信じて待てる。
「今日は君の日だからザッキー。君にいっぱいおねだりされたい。どんな風に抱かれたい?具体的に教えて?ザッキー」
その一言にゾクゾクとして、それだけで甘い吐息が漏れた。今すぐめちゃくちゃに犯されたくて、それを素直に口にした。王子はうっとり笑って頷き、
「わかった。いっぱい焦らしてあげる。どんなに乱れてもいいからね。全部見ていてあげるよザッキー」
と、俺のネクタイをゆっくり解いた。
「これ使おうか。今日の記念に」
そのネクタイを指に絡ませ、俺のベルトに手をかけた。何をされるかすぐにわかった。ネクタイは駄目になるだろう。
「せっかちだねぇ、もうこんな……可愛く飾ってあげるからちょっと大人しくしてようね」
「……っ」
ネクタイをぶら下げゆらゆら揺らされ、サテンの生地がそこを嬲った。よく見えるように揺らされるので、期待感だけで昂っていく。すぐに痛いほど屹立し、ひくんと腰がせり上がる。すぐにこうなる駄犬をたしなめ、王子は俺にお仕置きをする。
「僕の話、聞いてた?ザッキー」
子供のように俺は頷く。
「じゃあ、なんで歯向かうの?僕のこと本当に愛してる?」
愛していると、好きだと言った。
「本当は?ザッキー。言ってごらん?」
いつも執拗に愛を確かめ、けれど受け止めきれない王子。
「ねぇ、こんなの愛じゃない。愛があったらこうならない」
拷問のような王子の愛に溺れる夜がやってきていた。
「ねぇ、好きなら言うこと聞いて?好きならなんでも出来るはず」
俺は幸せで幸せで、本当になんて幸せなんだと、恍惚としながら喘ぎを奏でた。蹂躙を愛の手段に使って、王子が地獄へ落ちていく。こんな苦し気に俺に縋って、一言だって嫌と言ったら、殺されてしまうかもしれない。彼の絶望はそこまで深い。そこまで愛を渇望するのに、やっぱり器が壊れているから渇きは癒えることがない。悲劇的で愚かな恋だ。王子は俺に恋してる。

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      ジノザキ , ,