文学妄想お題ったー詰め 8
【16289文字】
文学妄想お題ったーで一日一ジノザキ。2017年8月の4本分。実際にはお題ったーのお題が重複ばかりなので、日本語用例検索とかから適当な単語を入力してチョイスしています。
あなたは三木清作「ゲーテに於ける自然と歴史」より「明瞭な、形態ある、限定された、体現的な直観が彼にとつては実在性の尺度である。ただ直観的なもののみが実在的である」でジノザキの妄想をしてください
<SS・1>
「バカンス、バカンス、って飽きませんか」
「そんなの、考えたこともないなぁ」
「行く度、相手が違うからですか」
「やめてよ、そんな遊び人みたいに」
「実際、そうじゃないですか王子」
「僕は恋多きタイプなだけさ。好きでとっかえひっかえしているんじゃない」
「物は言いようって言いますもんね」
「そういう言い方、君らしいね」
「何ンスか?なんか変なことでも言いましたかね」
「別に」
「バカンスは常に誰かと行くわけでもないよ?」
「へぇ、本当にそうなんですか?」
「どうして?一人旅も楽しいよ」
「そんなこと、今まで考えたこともねぇな」
「見たこともない景色を見て、見せてあげたいな、なんて思う」
「はいはい、結局のろけなのかよ」
「いやだなぁ、全然そうじゃないよ。まだ出会いきれない運命の相手を、想像しながら考えるんだ」
「言っている意味がよくわかりません」
「あの子が見たらどう思うかな?この子と来てたら泣いちゃうかな?そんなのも結構楽しいよ。自分の感動を共有する夢」
「……」
「どうしたの、急にそんな顔」
「いや、そういうの、いいなと思って」
「いいなって思っている顔には見えない」
「ちゃんと思ってますよ!俺だって!ただ」
「ただ……?」
「別になんでもありません。もともとこういう顔なんですよ!」
うらやましいな、と思ってしまった。そうやって旅先で思い浮かべられるその相手が。王子は、沢山の人と色々旅する。俺だって、そんな風に旅してみたい。ただの想像だけでもいいから。感動を共有したい相手だと、思われるような自分になりたい。
<SS・2>
「毎日、一人で走ってるんだ?」
「はぁ、昔からの習慣で」
「単調で退屈だとか、思わない?」
「思ったことは、あんまりないかな」
「覚えられちゃっているのもあるせいかな」
「来るのをあてにされている?」
「あてにって……そんな、まあそうかな。名前も知らない人らだけど、会釈くらいはする感じで」
「ふーん」
「おはようございますって水やりのおばちゃん」
「今日も頑張ってるなと、店屋のおっさん」
「公園でダンスの練習をする人」
「犬の散歩をしている人」
「いつでも慌てている女子高生。時々電車に乗り遅れている」
「周期的に出没する太った女性。絞るには継続がちょっと出来てないかな」
「晴れの日、雨の日、季節によって、メンバーが少しずつ違ったりもする」
「時間によっても、景色も、違う」
「走るのが毎日似たコースでも、色々あって退屈はしない」
「まぁ、人によっては退屈かな?」
「でも、俺にとってはそうじゃない」
「なるほど、トラックを走るだけとは違うんだね」
「そうです、そういうことだと思う」
「それなら、それなりに楽しいかも」
「本当に一人なわけじゃないですから」
「時間を共有してるんだね」
「そういうことになるのかな」
「王子のリアクション、意外でした。馬鹿にされるかと思っていたので」
「なんで?君って失礼だね」
「王子には、つまらないことかな、と」
「別にそんなこと」
「みたいっスね」
「人との出会いが楽しいんだ。僕がバカンスに出掛ける理由とよく似ている」
「規模が全然違いますよ」
「趣旨が一緒なら同じことさ」
「そんなもんスか」
「それなら、王子も走ってみますか?」
「あぁ、それはちょっとごめんかな」
「結局あんたはそうなのかよ」
「じゃあ、君はバカンスに付き合うかい?」
(え?)
「ほら、今、あり得ないって顔をした」
「いや、そんな」
「アプローチは自分の適性に合わせるに限るよ。僕は知らない街と人々と。君はいつものこの場所を」
「……」
「いつもの場所を、広げればいい。僕のバカンスが目じゃないくらい」
「君にはそういうのが似合っているよ。きっとどこに行っても大丈夫だ」
*
旅先で走る人を見かけて、君もそうするのかと考えた。僕もしてみるかと考えもしたけど、走るための靴がなかった。
砂浜に出掛けて靴を脱いだ。昔、足腰を鍛えるためだなんて走らされたな、と。
「熱血指導はなんとも苦手だ」
足先に波が冷たかった。
「君はそういうのが得意そうだね。それとも、科学的じゃないと鼻で笑う?」
勉強熱心で熱血漢、今日も街を走っているだろうか。
気の遠くなるような日の沈む海を延々眺めて、気づけば辺りが真っ暗だった。濡れた足はいつの間にか乾いて、さらさらと砂の感触が心地よい。
「早く帰りましょうなんて急かされそうだ。君は景色に興味なさそう」
なんだか怒っている顔が目に浮かんで、思わず顔を綻ばせ。
「いや、でも、結構好きなのかも?ロマンチストなところもある子だからね」
変わった色の貝殻を拾う。異国を思わせる綺麗な巻貝。買ってきたものを受け取らない強情なあの子に、お土産にあげようかとふと考えて、
「いらない!生臭い!とか普通に文句いいそう」
やっぱり想像の中でも君は賑やか。貝はそのまま置いて帰った。
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あまりに観念的過ぎる……(お題に沿うつもりが感じられない)
