お花結び

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幾久しく幸多かれと2

【3222文字】
続きのニーズが特になさげだったのといいお題がひけなかったのとで、本題に入る前の試合の場面だけ書いて放置状態で今に至るやつです。情けない(๑*д*๑) この先の部分、個人的には割と好きな話だったはずがお題にこだわったのがいけなかったかなぁ。これもオチは気が向いたらMEMOに。もちろんこの試合はあのカズがゴールを決めた震災後のチャリティマッチが下敷きになっています。感動しましたよねー。

 それは試合開始前のひとときだった。ありとあらゆる人々がそこに集まり、あちこちで大いに盛り上がっており、当然人だかりの輪の中心には、王子や監督もいたりした。
「赤崎、元気でやってたか」
「ああ、綿谷さん」
もちろん俺もまたそれなりだった。一緒にいる椿も同じ感じで、ひっきりなしに挨拶は続く。
(ああ、これじゃあ本当に王子に話しかける暇が……)
目端で追うあの人の姿はまた格別の美しさだった。初恋のウブな中学生よろしく、盗み見るだけで胸が一杯になる。
「!」
 そして、突然足が竦んだ。王子と目が合ってしまったのだ。固まる俺の様子に気付いたのか、あの人はおかしげにクスクスと笑う。
(やべぇ……王子、あの様子じゃもしかしなくても多分……)
失礼、と小さく周りに挨拶をしている。スマートな仕草が場慣れの違いだ。当たり前のようにさりげなく道は開いて、王子がこちらに歩いてくる。どんなにか、そう、どんなにか。俺はこの時を待っていたのは確かだったが。
「久しぶりだね、ザッキー。元気してた?」
「……ッス」
軽く頷くだけで精一杯だった。
「バッキーも。今日は君達に会えて嬉しいよ」
さらりと自然にそれを言う。俺が一番言いたくて言えなかった言葉だ。『君達』と王子は俺らをひとくくりにして、そうしてクシャクシャと椿の頭を撫でていた。俺は言葉詰まらせながら、ぼんやりそこに立っていた。
「王子、俺もッス。楽しみ過ぎて全然眠れなくて」
「あはは、本当だ。ほら目に酷いクマが」
「え、本当ッスか?そんなに?」
「いやだな、冗談だよ。ちゃんと朝には鏡を見てきたんだろう?」
その割には相変わらずこの辺の寝癖が、そんな風に王子が椿をからかっている。くすぐったそうにしながらも椿から無邪気な笑みがこぼれ落ちる。そんな二人をうらやましげに見つめながら、俺はただ、佇んでいただけだった。王子の前ではいつもこうだ。言いたいことほど伝えられない。気持ちが溢れかえるばかりだった。