幾久しく幸多かれと2
【3222文字】
続きのニーズが特になさげだったのといいお題がひけなかったのとで、本題に入る前の試合の場面だけ書いて放置状態で今に至るやつです。情けない(๑*д*๑) この先の部分、個人的には割と好きな話だったはずがお題にこだわったのがいけなかったかなぁ。これもオチは気が向いたらMEMOに。もちろんこの試合はあのカズがゴールを決めた震災後のチャリティマッチが下敷きになっています。感動しましたよねー。
その日の試合は完全にエンターテイメントだった。それでもあちこちで真剣勝負も時にはあった。
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交代枠は無制限で、あり得ないシステムを適用したりもして、お祭り騒ぎの時間の全てが、今の俺には刺激的だった。サッカーには無限の可能性がある。それをこの年になってまたひとつ、知ることになる。
「大丈夫か?椿」
椿は呆れるほど走っていた。この試合が何のために開かれているのかも忘れるくらいに、完全に何かの覚醒の中にいた。そして興奮状態にいるのは俺もまた同じであった。そう、あの日の、あの時のように。
「ザッキー、そこサボらないでよ、いけるでしょう?」
(くっそ、簡単に言ってくれるよ相変わらず!)
後半、一人違うデザインの襟付きユニホームで入ってきたのが、俺達のかつての飼い主のあの人だった。何年も会いもしない関係のはずが、王子は一瞬にしてそれを忘れさせてしまった。王子は俺と椿の全てを掌握した。まるで昨日までチームメイトであったかのようにだ。椿も俺もあの頃とは違う。なのに意にも介さずあの人は。
(どうなってんだ?ブランク何年だよ、現役でもねぇくせに!)
体力的な問題もあるのはあるだろう。それでも落ちている運動量など全く感じさせず、王子は絶対者としてそこにいた。派手なプレイ、湧き上がる歓声、たった数分間の出来事ではあったが、俺は呆れるようにこう呟いた。
「ばけもんかよ。何なんだ王子は」
その悔しさが嬉しかった。まだまだ彼には敵わない、その、今なお続いていたこの事実が。
交代の際、椿が少し駄々をこねていた。皆思いは同じものだったらしい。ずっとピッチに立っていたいのだと、そう思わせる強い光が、このお祭りの世界の中に存在していた。選手がそうなら当然のことだが、観客やスタッフ、全ての人達もまた、何かをここで共に生み出しそして受け取っていた。これは、互いが力づけ合うために開催されたそのための試合で、こうして興行は大盛況のまま幕を閉じたのだった。
