お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

*

Crown shyness

【7466文字】
ザキ目線。バース的な意味ではなくただガブっと痛気持ちいいとか変態注意。でも濡れ場少な目。何も考えないでただ書きました。Crown shyness言いたいだけちゃうんか的なアレ。この現象なんだかゾワゾワしてしまいます。薄暗く怪しいくせに眩しくどこか健やかな、そういう感じが少しでも醸し出せてたらいいなぁと、拍手いただけたら嬉しいです(こっそり)

        ジノザキ

 彼はつい先ほどまで笑顔を浮かべ、僅かながらに呼吸を乱し、少し汗ばむ肌を合わせて、あまりに普通にそれをしていた。美味しいものを食べるというのも、怠くなって眠るというのも、そしてそれと同様に、まるで鼻でもかむかのように、王子は俺を抱く人だった。
「きつくなかった?大丈夫?」
終われば優しい声掛けをして、手早く互いの体を拭い、お愛想交じりに頬への口付け、剥いだ服を投げ寄越す。そこには微塵も悪意がなくて、心すらも見当たらなくて、終わるたびに不安に包まれ、そうして徐々にそれは始まる。
(王子……また……)
彼はもともと変な人だが、想像以上に変ではあった。その目はじっと俺を見つめて、なのに視線が漂っている。王子は俺が生み出す不安を見ていて、そのまま黙ってしまうのだった。
(ああ、またそんな顔……)
悪気はないのだ。確実に。俺のロジックは彼と異なり、それが軋んでみせるたび、何とも言えない表情をする。不可解なものに感じる困惑。それとも不快。もしくは官能。彼本来の次元の中で、それはあまりに伸びやかに、全てが溶けてしまったみたいに、王子がとても素肌に思えた。すっかり服は元に戻って、爪先ほどの触れ合いもなく、全てがまるで冗談みたいに、その上でなおこういう王子は、無防備なほど透明だった。
(んだよ、してる時よりよっぽど……あ、駄目だヤバい)
欲望はたった今昇華して、けれど服が肌の余韻を擽る。不安は飢餓感、渇望に似て、溢れて止まらず零れているのを、視姦されているかのよう。この時間帯の王子は不思議で、真顔でもなく、微笑でもなく、薄っすらほろ酔う乙女のように、なのに牙剥く獣のように、怪しげな空気でひっそりと、俺の不安(性欲)を噛みしめている。未知なるものへの好奇心。藪を突ける棒を片手に、不思議に自ら竦むが如く、そこに一切の悪意などなく、けれどあまりに悪趣味だった。

*

 ある時、それが終わった後に、俺は目を開け漂う透明王子に、聞こえぬくらいにひっそり問うた。何故、俺を抱くのかと。
「何?嫌だった?」
苦笑しながら肩を竦めて、反応はあまりに漫然と。
「別に、そういうことを言いたいわけでは」
「じゃあ、どういう?」
そっと俺に寄り添うみたいに、王子は俺に接近をする。覗き込むのに揺れる毛先が、先の情欲を思い出させる。
「だから、ただ不思議で俺は……」
俺は自ら言葉を濁し、その濁りですら全て見られた。適切なもの、欲しいもの、それは察知されている。
「する理由……ん……したくなる、から?」
「……」
「したいからする、じゃ返事にならないか」
問うても詮無きことではあった。彼と俺とは仕組みが違う。王子は実に誠実で、ないものをまるであるかのようには、俺をフェイクで切りつけない。厳格、もしくは潔癖なほど、何故か俺にはそうだった。悲しくもあり、嬉しくもあり、騙されたくて、でも安堵して、突き付けられる切っ先はいっそ刺さっていくのもわからぬほどに、細く研ぎ澄まされていた。異様で、不可思議、残酷で、矜持で、俺への礼儀であった。
(ああ……呼吸が止まる……)
手近だから。逆らわないから。女に比べて楽だから。嫌な思考がグルグル巡って、自分の卑屈に反吐が出る。抱かれるたびに王子を覚えて、勝手に王子の巣に絡まって、たった一滴の蜜でいいから、口に含んで堕ちていきたい。そんな俺を甘やかさない、王子はとても澄んでいた。バクテリアさえ死滅する水。
「ねぇ、ザッキー。僕が好き?」
王子の問いは問いですらない。俺の中の弱さと甘さを、せせら笑って蹴とばして、それはほぼほぼ悪意ではなく、だからこそもう身動きですら。
「言って。好きで、だから断れない?」
俺の唇はわなわな震えて、その唇に視姦を受ける。凭れ掛かるのを許さずに、崩れ落ちるなと足蹴にされて、お前は誰だと俺に問う。問いですらない鋭利な問いを、俺の喉元に突き付けてくる。
「誘うとホイホイついてきて、そうして死にそうな顔をして、けれどうっすら幸せそうで、君にはとても矛盾を感じる」
「……」
「君はそんなに『好き』の奴隷?」
俺のロジックを愛撫しながら、王子は犯すみたいに耳に囁く。
「そんなに……奴隷でいたいのかい?」
王子がしげしげ俺の目を見て、耐えられなくて瞼を閉じた。それでも王子はさらに近づき、まつげでまつげを愛撫した。
「……っ」
「理解出来ない」
そのまま静かに抱き締められて、王子は俺に頬擦りをした。
「わからない。ザッキー、君ってどういう子?」
手はやんわり下がっていって、当たり前に尻を揉まれた。思わずヒクンと反応をして羞恥に体が熱くなる。
「可哀そうに。嫌なのに。また僕の玩具にされる」
「あ、う……」
「せっかく綺麗にしたのにな。またぐちゃぐちゃになっちゃうね」
差し伸べられれば手を取って、抱き締められれば抱き返し、服を投げられ身につけて、用が済んだらすごすご帰る。あまりに普通に日々が過ぎ、息の仕方を忘れてしまい、吸い過ぎだよと笑われて、キスと同じ深い交合、俺は毎回バラバラになる。
「あっ」
嫌なら嫌だと言えと言われて、言えば終わりと理解していて、どうして君はとうつ伏せにされ。
「痕つけてみようかザッキー」
一度軽く背中を吸われた。意味と意図をそうして示唆して、躊躇を知らない無垢なる王子は、じゃあ、と今度は本気の本気で。べろりとまるで獣のように、そして次は獣の甘噛み、追い詰められて口走る。
「許して?何を?意味不明」
「っぐぁ、!あ、あっ!」
食いちぎるつもりでいたのだろうかと、錯覚するほど強く噛まれた。四肢は完全に抑えられ、それこそされるがままだった。そうでなくても逆らえない、けれどあえての仕打ちでもある。
「痛っ、王子、あ、王子っ、待っ、あっ!」
しばらく王子にそうされて、あろうことか、想像通りか、じゅくじゅく染み込む痛みに飲まれて、いつしか静かに射精していた。
「おや、出してしまったの」
俺は消えてしまいたかった。いつもこんなにめちゃくちゃにされ、それがこんなに、泣きたいくらいに、俺を悦ばせてしまうから。
「見せて」
半ば無理矢理肩を掴まれ、とうとう堪らず手をはね付けた。
「良かった。やっと嫌がった」
言葉は怖気が立つほど軽やかであり、それが意味するところなどなど、心の中で嵐になった。得体の知れない絶望に、ベッドヘッドに寄りかかる。凭れさせてなどくれない、崩れ落ちるのを許されない、それでもすでに自分の力で自身を支えていられなかった。これできっと終わりが始まる。彼は俺を許さない。
「大丈夫だよ。痛そうなところを選んで噛んだ。痕は多分すぐ消える。まあ、我慢は数日必要だろうけど」
怖くて顔を上げられず、無言で、自分で、体を拭った。こういう時ほど王子は王子で、所在ない俺を放置する。
「こんな……あんたはどうして……」
マジで頭おかしいと王子に言えば、自覚は大いにあるようだった。さもありなんだと納得はした。そうでなければ擬態は出来ない。
「……痛そうな?異常だ……性癖、悪趣味過ぎるだろ……」
「えぇ?性癖?嫌だなぁ、誤解」
「……」
「信じない?いいけどね」
悪びれもせずに淡々と、王子はこういう人だった。人からの評価を意に介さない。自信が深く根を這っている。
(キスのうっ血の痕ではなくて、しっかりとした人の歯型……どうにも誤魔化しようがない……噛み癖だとか性癖だとか、そういう容易い話じゃない……)
彼は無邪気なように見せるが、決してそういうタイプじゃなかった。互いがどういう仕事であるのか、俺がどれだけ困るのか、わざわざそこをゴールと見定めて、理詰めでそれをやる人だった。特に口にしなくても、王子は容易く他人を暴いて、皮肉に笑っている人だった。けれど自重もないその姿に、悪意の気配も感じなかった。ただの遊びに過ぎない行為。彼はじゃれているだけだろう。飛びぬけた次元にいるせいで、逸脱しやすいケがあるのだろう。でも。
「ザッキー?」
「……」
「泣いちゃった?」
そう、けれど、と毎回思う。どうして王子なのにと思う。何故なら、物には折り合いというものがあり、彼はとても心得ていて、許容範囲のぎりぎりの端を、やんわり広げるのがうまかった。王子は”酷く”巧みな人で、だから促すことが上手な王子を、愛さないではいられなかった。みんなもそしてこの俺も、王子がとても好きだった。微笑みかけてくれさえすれば、自分も豊かになれる気がして。

*

 何故彼は俺を抱くのだろうか。何故めちゃくちゃにするのだろう。許容範囲はとっくに超えて、悲鳴も全部聞いていて尚、その上で何故こうされるのか。声も出せずにポトポト泣くのを、王子はじっとそこで見ていた。とても変な人ではあるし、構造自体もまるきり違う。それでも彼は馬鹿ではなくて、恐ろしいまでに理知的で、だから俺を困惑させる。
「背中、撮らせてね」
(……は?)
今、こういう空気の中で、どういう顔でそれを言うのか。なけなしの力で顔を上げ、そうしてますます泣きたくなった。なんでそういう顔でいるのか。
「ああ、でもしばらく泣いていて。少し落ち着いてからでいい」
俺は王子が怖かった。彼は俺の理屈に沿わない。出来ることをほぼやらず、俺を独りぼっちにさせる。労わりのような形の言葉は、いつでも俺を突き放し、意図をこわごわ辿ってみせれば、明解なほどの実利を感じる。王子は俺から実利を得ている。でも何故それが実利足り得るものか、到底理解が及ばなかった。
「な、んで……、撮る必要が?」
終わりの記念にという意味なのか。王子の返事をこわごわ待てば。
「必要ないけど、なんとなく」
なんて言う。状況がうまく咀嚼出来ない。王子がわざと乱しているのか、俺が馬鹿なせいなのか。
「マジで、全然意味わかんねぇ……」
王子は俺が出会った中で、一番男を感じた人だ。軽口はあるが無駄口がなく、鋭く、時に豊かに、周り全てを包み込む。悪口は人格の否定ではなく、いわゆる溢れる愛がその根拠。なのにこんなに俺で遊んで、屈託のない残酷で、そのくせ俺をじっと窺う。笑っているのか、泣いているのか、とりとめもない表情で。
「……嫌だった?」
見透かすみたいな澄んだ目で、何度も王子は覗き込む。

 すべてはただの手段に過ぎない。

 それを彼の口から聞いたのは、一体いつのことだったのか。したいからだと王子は言った。ではそれも手段のひとつというのか。すべてが手段というのであれば、手段の向こうに何があるのか。無限に愛を振りまく人は、俺には何を振りまくつもりか。
「ねぇ、ザッキー。わからないのはこっちだよ」
目的があって、手段があって、行動による結果が生まれて、それを足場にそのまた先へ。
「嫌なのかい?撮られるの」
「じゃあ、さっきみたいに拒否すればいい」
全部わかっているくせに、それでも王子は俺に問う。
「ねぇ、僕と寝るの、好き?嫌?さあ、教えて黙ってないで」
逆らえないなど言い訳だ。彼は俺に強要しない。これは手段か目的か。それとも行動、もうわからない。
「本気でそうしてめそめそ泣いて、搾取にイっていたいの?ザッキー」
全てを手に入れる力があって、実際その気も時々匂わせ、揺れる心でそよそよそよぐ、風のような人だった。俺は王子を尊敬していて、だから揺れているのが少し不満で、だから、だから、密やかに。

 その時、俺は気付いてしまった。

 なるほどすでに終わっていると、この時俺ははっきり感じた。王子は全てを理解しながら、何度も何度も問うていた。耳を塞いで目を閉じて、そういう俺を労わりながら、それでも重ねて問うていた。僕を誰にしたいかと。奴隷がいいの?と穏かに、それでもそれは切実に。

 王子くらいがいいんだと、そういう彼を知っていたのに。

 そんな王子にぶら下がり、だから何度も手が千切れたのに。

*

 その森の写真を二人で見た時、王子は俺にこう言った。
「すべては手段に過ぎないよ」
神秘と美を見た俺とは違い、王子の視点はクールであった。
「日差しがないと共倒れる。だから木々は学習し、触れたら落ちる仕組みを作った」
シャイな樹冠と呼ばれる現象は、それだけだとは思えなかった。互いが互いを労わるみたいに、木々の枝葉が避け合う姿は、遥か高みの空間の中、愛や優しさで互いを包んで、共生し合う姿に思えた。鬱蒼とした高木林を下から見上げて撮ったその現象は、それほど光る輪の連なりで、シャイ(内気)な樹冠の名にふさわしく、とても穏やかな世界に見えた。

*

「王子……」
 俺はもうその名を呼ぼうとするだけで、わなわなと唇が震えだし、あの日の話の続きを思い、何度も何度も歯を食いしばる。王子は返事のひとつもせずに、それでも黙って俺を見ていた。いつもの、見慣れたあの顔だった。素顔と感じた王子の姿、ちゃんと見るべきだったのだ。これは彼に渦巻く躊躇。上にも横にも行ける王子が、必死にこの場に留まれるよう、息詰め耐える姿であるのを。

*

 あの日、俺は王子に言った。
「夢のない言い方をしますね」
と。

 王子は俺にこう言った。
「そう?だからこそ、夢があるんじゃない?そういう風に思うけど」

同じものを同時に見ながら、違うものを受け取っている。

「枝葉は落ちて、それは痛くて、けれど彼らはわざわざそれを選んだ。ねぇ、ザッキー、それは何故?」

言いたいことがわからなかった。

「それでも、触れ合いたいからさ」

とても淫靡で性的な目で、小声で俺に囁いた。

「ただの触れ合いは殺し合い。彼らは互いを切り落としてまで、他者を感じていたかったのさ」

*

「もう駄目だね。思わない?」
今、彼は綺麗なあの目をひっそりそばめ、何かに、違う、まさしく俺に、まるきり竦んでいるようだった。
「適切ではない、そう思うのに、時々……いや、ここ最近……かなりどうかし始めてる。君も感じていると思う。僕の変調はそれほど顕著だ」
強い人だと考えていた。固辞する必要すらないレベルで、柳のようなしなやかさ、折れずにいなす、王子の生き様。今こうしている瞬間も、微塵も弱さの気配がない。なのに枝葉は震えるように、まるで俺を怖がるみたいに、シャイネス、対人不安のように。
「僕に触られ、君だけ折れて、何も言えずにただ泣いて……それでもいいと。すでに結論なのかなザッキー」
これでは何の意味もない、そう言い王子は目を閉じた。もう何も見たくはないと、俺にはそういう姿に見えた。孤高、強靭、稀有、奇跡。溢れんばかりの才覚、天性。不思議なくらいに上を見ず、隣の何かを求める目線。王子は内包している空虚をちら見せ、魔法みたいに隠してしまった。何もかもがその身にあるのに、必要なものが隣にないと、意味がないと彼は言い、木々を消し得る力を厭い、絶望しながら王子を意志し、最早それすら疲れ果て、独り、隠し、閉ざしてしまった。

――枝葉は落ちて、それは痛くて

それでも、と彼はあの日に言った。他者を感じていたいとも。それは森の話でありつつ、彼の本心でもあるだろう。

 上へと、かつては願ったはずだ。今もそうだと考えていた。そんな俺を、威勢がいいと、彼は笑ってその手を広げ、水は豊かに、風はそよいで、木々はそれぞれ若芽を息吹き、レギュラー争い、勝ち点、選出、激動の中、無意識の底、徐々に毒が沁み込む如く。
(俺のどこかが壊死していくのを、王子はずっと知らせてたんだ)
俺が俺から乖離して、不安定さに不安になって、寄り添う王子の姿に怯え、彼はそんな凍える俺に、必死になって手を差し伸べた。

――適切ではない、そう思うのに

支えようにも俺は脆くて、だから彼は、寄りかかるのも、へたり込むのも、許さないまま、何度も重ねて問うていた。触れ合うことを希望しながら、俺の脆さで願いは乱れ、王子は何度も何度も必死に問うた。

――それでもいいと。すでに結論なのかなザッキー(本気で僕に君を殺せと?)

触れ合うことを諦めず、俺も王子に手を伸ばし、脆くて俺はその度千切れて、無力な奴隷、傀儡に近づく。
(ああ、王子、どんなにか……)
俺は自身の痛みに鈍感で、過剰なまでの感性を持つ、彼の共感(痛み)を無視し続けた。俺が折れる度、痛みに悶え、声なく叫ぶ彼の悲鳴を、耳を塞いで一人で逃げた。彼はそんな全てを見つめて、信じて、そして、裏切りすらも、どうかするほど受け入れて、ただただその手を差し伸べ続けて、消えゆく俺を必死に追った。すべては手段と嘯きながら、同じ口で目的を言い、感じていたい、触れていたいと、祈るみたいに俺を願った。当事者以上の痛みを抱え、それでもいいと言うならと。

*

(俺はなんて……)
自己嫌悪には慣れていた。でもこれほど自分のことを醜く弱いと叫びたいほど憎くなったのは初めてだった。こんな些末で惨めな俺を、どうして王子は?今こそ思う。どうして王子は、そんなにも?

*

 王子の指先があまりに白くて、躊躇しつつも触れてみた。初めて俺から触れた指は、白さ通りの冷たさで、それがとても悲しく思えた。俺に差し伸べる王子の指は、いつでもほんのり温かかった。

 俺の指先も冷えていて、自然に暖でも取るかのように両手を二人で重ね合わせた。随分長く手を取り合って、互いの肌を感じ合い、目を閉じたまま王子は言った。
「君は僕を恨んでいい。僕も僕を許さない」
それは先への覚悟であった。静かで、とても透明で、恨みつらみの内容ながら、ただの愛の囁きだった。俺は王子に言葉を返した。
「ああ、それでもいいッスよ。王子も俺を恨めばいいし、俺も自分を許しません」
同じ力で手を握り合い、自然に胸で組み直し、互いの言葉の真意を見つめて、その手に二人でキスをした。
「……君を恨むのは、嫌かなぁ」
ほどけるみたいに王子は言った。
「俺もです」
と俺も頷いた。
「王子、そんな必要ないかと思う。多分、大丈夫だと思う」
「……」
「さあ、だから触れ合いましょう。互いをうんと感じられるよう」
彼が何度もしたように、俺も王子を覗き見た。瞳の奥には空虚が灯り、けれど俺の姿も確かにあって、物理的には当然ながらも、そんなことが嬉しく思う。
「つまり、したいンスけど……出来ますか?」
頬や手先が火照っても、それを無視して王子に言った。
「撮るのも、噛むのも、ご自由に。その分、たくさんハグしてください?」
殺し合いみたいに、お互い必死に、そんな風に絡み合い、羽化するみたいに枝葉を落として、横へも、上へも、一緒に伸びよう。沢山の愛を地に生み落とし、それを糧に二人で生きよう。そんなキザが透けて見えたか、王子は笑ってキスをした。
「頼むね」
なんて、ウインクをして、光の輪よりも美しかった。

      ジノザキ