彼はその高い感性を
バキ→ジノ 終始、ETUのシャワールームで意地悪ジーノが黒田と椿相手に全裸でトゥルンな下ネタ話をし続けてるお話。もう使い古されてそうなネタで申し訳ありません。
高尚な人間をつくるもの。
彼はその高い感性をみずからの努力でずっと維持し続けてきて
今に至っているのだ。
by ニーチェ
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冬のキャンプが無事終了し、今日から再びETUのグランドでの通常練習が始まった。ジーノとここで一緒に練習を行うのは椿にとっては初めてのことだった。ジーノは終始キャンプ同様、まるで貴族のように優雅で、ちょっとした独特のユーモアがある会話をしつつ、2匹の飼い犬と見なした赤崎と椿を大いに振り回しながら練習メニューをこなしていた。
へとへとになりながらも一生懸命練習を終えた椿は、すぐにはシャワー室には向かわずしばらくロッカールームで時間をつぶす。浴槽もあることだし、カーテン付きのシャワールームが11台とはいえ、一般の銭湯などと同様、順番に使えばいいことだ。そんなに遠慮しすぎることも別にないのだが、自然と先輩達優先で使用してもらうために時間をずらすようにしていたのだ。ただ、若手と言っても赤崎だけは年功序列を気にせず普通に先に入っていた。別にそのことでクレームが来るとかそういうことはなかったが、椿はそういう赤崎のメンタルについて「うわー、すごいなぁ」と感心しながらも「俺には絶対無理」と思っていた。
もうそろそろいいかなと思ったころに、シャワー室に向かった。服を脱ぎ、中に入ってシャワーの空きを探す。案外沢山あったが、たまたま偶然すぐ側のシャワールームのカーテンが開いたのでそこを使わせてもらおうと思った。
中からでてきたのは王子だった。
「やー、お疲れバッキー。」
「あ、お疲れ様です、王…じ……??!!!!」
「おや?どうしたんだい?」
「あ、えと、その…な…なんでもないです!!」
「ん~?」
なにか思惑ありげな薄ら笑いを浮かべながら近づく王子を避けるように、椿は慌てて空いたばかりの個室に逃げこんだ。
「なんだよ椿、お前、ジーノの裸みて興奮しちゃったんか?それともチ○毛ないのみてびびってんのかw」
大きな浴槽につかっていた、まるで大きな茹タコにも見える黒田が椿の様子をみてからかった。
「クロだって最初はものすごく驚いてたじゃないか。王子がうちに移籍して来た時」
「黙れスギ!あ…それは、あれだよ、ふざけんな、余計なこと言わなくていいんだよ(汗」
「わかったわかったw」
「あぁ……あの時は散々だったなぁ。しっかり覚えてるよ?クロエ?」
ちらっと王子が流し目で黒田をみたので
「んなどーでもいいこと忘れろよ!」
「だって、クロエ、ボクのこと変態だ変態だってさ?」
「悪かったよ!だって日本じゃボーボーが当たり前だろ!こちとらそんなところ処理する文化なんてねーんだよ!」
「ボク、すごく恥ずかしかったし辛かったんだよ?移籍したててドキドキしているところで、いじめられて。クロエにあんなこと言われちゃってチームで果たしてちゃんとやっていけるのかなって」
「なんだよそれ!全然そんな愁傷なこと思うわけないだろ、お前が!お前ってなんか最初っから普通にしゃべっててもめっちゃ変人だったしよ。そんなとこ剃ってんのだって性癖かなんかだって勘違いしたって全然おかしくないだろうよ!!!」
「えー、またそんなこと言うの?あらためてそれひどくない?やっぱイジメ?」
「違うって!」
「じゃないの?じゃ、あれかな。前にも言ったけど、こういうエチケット的なことを瞬時に剃毛プレイとかすぐそういうのに結びつけちゃうんだからやっぱりキミのほうが変態だってことだよね。」
「だから!それも違うって言ってるだろ!俺は変態じゃねーって何度言えばっ!」
「まあまあ。ふたりとも」
「スギ!俺変態じゃねーから!」
「うん、わかったから落ち着いて。変態だろうと変態じゃなかろうとクロはクロだよw」
「なんだよその言い方!」
「結局そういうのの処理一つで過剰反応しちゃうのが自分は変態ですって肯定してる意味になっちゃうんだよ」
「お前ちょっと黙ってろよ!!」
「別に変態だっていいじゃない、個人的な性癖否定するほどボク愚かじゃないよ?」
「黙れって!」
「なに?その言い方。クロエが意識しすぎちゃったらいけないから、ボク、あれ以来全部なくすんじゃなくて少し残すようなデザインに替える程度には歩み寄ってるというのに。」
「うるせぇ!!!俺のせいにすんなよ、単にお前が気分でそうしたくなっただけの話だろ!」
「ま、そうなんだけどね。」
「な?!!!こいつ!」
「いいからもう上がろう。王子、クロもこれで反省してんだよ、悪気ないから許してやって。」
「ふふふ、なんかクロエってかわいいんだもの、ごめんねスージー。勘弁してあげるかな」
「おめぇ、かわいいって俺年上だろうが!!!ふざけんな!!!」
黒田は真っ赤にのぼせて本当にかわいいタコみたいになっていたが、杉江が上手になだめるのでそのままなんとなく湯上りのシャワーを浴びて二人で浴室を去って行った。
ジーノは他チームにも大層評判の良い大きな浴槽に入り、ゆったりと体を伸ばしてくつろいだ。しばらくすると先ほどの騒ぎなどなかったかのようになにか聴いたことのないような鼻歌を歌いだしていた。多分イタリアの有名なラブソングか何かなのだろう。ありふれたシンプルで清潔なETUの浴室が、ジーノの裸体とハミングによって、まるで優美で豪奢な古代ローマの公衆浴場のようなムードを漂わせていた。それは映画のワンシーンのようだった。
ジェットバスですっかりリラックスしてご機嫌にしているジーノだったが、ふいにシャワールームの椿に声をかけた。
「ねぇ、バッキー?」
「はっ……はい!!!なんでしょう!」
「クロエと違って別にボクを奇異な目線で見てそういう態度になってるんじゃないよね?」
「!!!」
「ん?」
「いや、あの…」
「…そうなの?」
「!!あ、そうじゃなくてっていうか、いや、あの、そうじゃなくもないのかっていうかその…」
黒田がいなくなって次の遊び相手のターゲットを椿に向けたジーノの顔は大層イジワルでご機嫌な笑顔を浮かべている。その怪しい気配に椿と前後して入ってきた他の若手選手たちはとばっちりを恐れて慌ててシャワーを済ませ、そそくさと退散し始めていた。
その時、いきなり勢いよくサッと音を立ててカーテンが開かれた。
「!!!」
「なぁに?はっきりしない返事だねぇ。そういうのなんか気になるよ?」
とっくに体は洗い終わったであろう椿が籠りっぱなしでナカナカでてこないのでジーノはいつのまにか浴槽を出てシャワールームの中にいる椿に声をかけたのだった。
鏡の方を向いてしゃがみこんでいた椿の肩に手をかけて「ん?」と椿を鏡越しに笑顔ながらものすごい威圧感のある目で見つめた。椿はその乗せられたジーノの手の暖かさに一瞬にして真っ赤な顔になりすっかり硬直しつつぎこちない返事をした。
「すっすいません、あの!」
「なに?なんか謝るようなこと考えてたってこと?」
「えっ…!!えっと」
「こういうことってね?口先だけで謝って、誠実に答えないことの方が失礼だったりするよ?ボク、意外とそういうところデリケートだったりするんだよね。知り合ってまだ数日だし、君のことまだ全然わかってない…。なんか不愉快だった?気になるじゃない。」
「そうじゃないんです!そうじゃ!」
ドギマギして真っ赤になっている椿を(かわいいなぁ)と満足そうに眺めてジーノはフフフと笑った。
「やっぱり日本だとこういうあそこの毛の処理についてはクロエに限らずみんな過敏になっちゃう傾向があるのかな?欧州ではね?下の処理をするのは別に普通のことで、専用のシェーバー用意してる人も少なくないんだよ。」
「えっ!そうなんですか?」
「全員かならず!ってわけでもないけれど、ある程度常識の範疇。むしろアジア系で無処理の人のそういうのを不潔だって嫌がられることもあったりするくらい。」
「へー…」
「ま、ボクなんかは剃毛じゃなくてサロンで脱毛だけどね。知ってる?ブラジリアンワックス脱毛」
「!脱毛って…・抜くんですか!?」
「だって剃ったの生えてきたらチクチクするじゃない?」
「はぁ…」
「なんなら、バッキーも今度行ってみる?将来海外移籍考えてるなら今から慣れておくことも大切かもよ?」
「あ…いえ!なんか怖いっていうか、なんていうか…・っていうか!!それよりもまず俺海外とか全然!!とんでもないっす!今すでに一杯一杯でそれどころの状態じゃないですし汗」
「そ?」
「そうです!問題山積みでむしろボーボーがどーとか全然問題以前の事柄っていうか…」
「そうかなぁ~…。
ボクとしてはちょっとはそういうとこ
問題意識持ってほしいなって気もするけど」
「…・え?…どういう…」
「いや、別にいいんだけどね。そっか…」
ジーノの表情は意味深なようでいて、でも飄々としていて、なんだか真意がつかめない。妙な居心地の悪さを感じて恐縮しながら椿はオドオドしながらも小さい声できいてみた。
「あの…やっぱ王子はそういうのって不快だったりするんですか?」
「フフフ、まぁ、やっぱり、あらためてそう言われたらあんまり好印象もつような感じではないよね。でもそれこそ個人的な性癖にうるさく口出すほど愚かじゃないし。気にすることはないよ。」
「あ!いや、その、なんかすいません。俺、別にこだわりがあってボーボーとかそういうんじゃないんですけど。」
「じゃやる?」
「それは……すいません、ムリッス」
椿はすっかりうなだれていた。あいかわらずジーノは飄々としながら笑っていた。
「でもさ、こういうことも知らないより知ってた方が断然いい。将来きっとなんかの時に役に立つと思うよ?バッキーはボクがハーフだからそうなんだって思ってるのかもしれないけれど、ほら、山形のケニー…」
「え?山形って…もしかしてケン様?」
「あの人ね、日本人だけど、ボクみたいにスクエアにカットして残してあるだけじゃなくて昔カラーも入れてたらしいよ?さすがにボクはカラーリングまではやったことないし、すごいなーって思っちゃった。でも確かに髪の毛染めてたら下もそうしたくなっちゃうよね。あの人やっぱおしゃれだね。」
「!!!」
「タッツミーも日本人だけどイングランドいたんだし処理してるんじゃないかな?監督って一緒にお風呂入らないからみる機会はなさそうだけど」
「…えっ!!!」
「でもなんか、つかみどころない人だからそういうの気にしないかな?周りもあの人のことだったらボーボーだろうとなんだろうと別に嫌がらなさそうかもね?バッキーはどう思う?」
「いや!!全然わかんないっす!汗」
ジーノも椿のうしろに同じようにしゃがんで耳元でニヤッと笑いながら意地悪そうにこう言った。
「バッキー、今度タッツミーに今はどうしてるのか聞いてみてくれる?」
「ムリっす!ムリっす!勘弁してくださいっ!」
「やだなぁ~、変なバッキー。男同士なんだし別にそんな大げさに考えることないと思うけど」
「いや、その手の話、苦手なのもありますけど、大げさとかそういうんじゃなくて一応監督ですし!!!」
としどろもどろと言い訳を繰り返した。
「ま、ETUにはあんまり処理派はいないっていうか今はボクだけなのかもしれないね。でもさ、ボクが言いたいのは、一般的に見れば結構そんな特異なことじゃないってことだよ。わかった?」
「……はいっ」
「ボクのこと、変な趣味持ってる人なんだとか思って怖がらないでね?」
「はいっ!!」
「はー、なんかすっかり湯冷めしちゃった。でも遅くなっちゃったからもう出るね。」
ジーノは椿の肩に置いた手をすっとはずして立ち上がると「ちょっと借りるね」といってわざわざ椿のいる場所のシャワーを使って体を洗い流すと、にこやかに笑いかけた。
「じゃ、バッキーはごゆっくり。」
「はい!ありがとうございました!お疲れっス!!」
「サロンに興味が湧いたら声かけてね?その時は付き合うよ。」
「あ……は…はい!そのときはよろしくお願いいたします!」
前を向いてしゃがんですっかり硬直していた椿はやっとこ上半身だけ後ろにふりむいて、立ち去るジーノの背中に大きな声で挨拶をした。
気が付けば選手全員がいなくなって静けさに包まれている浴室に一人取り残されていた。大きくため息を一つついて浴槽にむかい、椿はジーノとは違って浴槽の中で小さく小さく縮こまって体操座りをして浸かった。誰もいない広い浴槽にもかかわらずこじんまりと。
椿は王子が立ち去ったあとでも心臓が飛び跳ねるのをちっともおさめることができなかった。
(王子…)
びっくりしていたのは下の毛の話ではなく。
あまりにもジーノの肉体が美しいからだった。
(貴族みたい。わかってたつもりだったけどホントに美形なのは顔だけじゃなかったんだ…)
ジーノの美しさに真っ先に目が奪われたのは長いまつ毛を持つ印象的な目から鎖骨にかけての首筋のラインだった。烏の濡れ羽色のように少し青みがかって見えるほどに真っ黒いジーノの濡れた髪は、ぬけるように白い透明な肌に無造作に纏わりついており、垂れた前髪のぬれぼそった先端から水をしたたらせては頬から首筋にかけて美しいラインをつたって流れ落ちていた。
そしてその流れに沿って目線を見下ろすと上半身は服の上からは細身で華奢にさえ見えるのに、まるで彫刻のような美しい鍛え上げられた筋肉の陰影がまぶしく刻まれており、くびれた腰のラインを経てしっかりと筋肉の張った黄金のジーノの両足につながっていった。その硬質な曲線は、女性のそれとはまたまったく違った魅力の、これ以上ないくらいに美しい調和を保っていた。
(すごいきれいだった…)
たった一瞬のできごとだったのに、しっかりと記憶に刻まれた王子の裸体を執拗に思い起しながら椿は気が付かないうちに声に出してつぶやいていた。
「肌だけじゃなくて乳首とかあそことかも全部色素薄いんだな…」
はっと我に返って顔を真っ赤にしながら周りを見回し、ああそうだった、もう誰もいなかったと胸をなでおろした。
(…王子…きれいなだけじゃなくって、なんか…)
それらの色は、日本人とまるで違っていた。
ジーノのいつも笑みを浮かべている唇のあの美しい朱色にも似た、あざやかな桜色をしていた。
青味がかって見えるほどの真っ黒な髪
透けて見えるかのように真っ白な肌
その下に流れる血を連想させるほんのりとした暖色
これらの強烈なコントラストが、一つの完成された芸術作品のような感じに見えた。見惚れて目が離せないくらいなのに、逆に見てられないくらいにまぶしかった。
(なんか、王子がすごいのはそうなんだけど、みんなはどう思ってんのかな?なんか、俺だけ、変なのかも…。なんか、わけわかんない。いくらなんでも…こんな…男の人の裸見てこんな反応しちゃうなんて…誰にも…誰にもいえないよ…。絶対変だ。変態なのは俺だ…。)
頭にその姿を思い浮かべるだけで、収まりかけていたものが再びまた反応し始めようとしているのを感じて、椿は体操座りをした両膝を両腕でぎゅっと抱え込み、ぶくぶくと顔をうずめた。
(こんなのダメだ。絶対。)
(明日から…練習のあと、ちょっと延長して一人で練習して。もっと遅くにシャワー浴びよう。)
もう二度とあんな姿の王子と鉢合わせしたくない。でも、本当は穴が開くほど見つめてみたい。椿の心の中は二つの気持ちがせめぎ合い、心臓はずっと飛んだり跳ねたり、落ち着く気配がなかった。すっかりのぼせてしまっているのに、椿は浴槽の中でずっと上の空で今日見た王子の残像を思い浮かべ続けていた。
(王子がヘアヌード写真とか出したら買っちゃうかも。俺、そんなもん買って、どうするの!それ! >< )
などとあらぬ期待と不安を抱えながら…。
[maroyaka_webclap]
