お花結び

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恋のノウハウ俺に教えろ

【7542文字】
絶賛片思いらしき番犬の話を聞きつけ、手玉に取ってからかう飼い主のお話。赤崎目線&台詞ばっかり。いっつも二人で飲み食いさせてますけど、一応少しずつ違う店のつもりではあるんです……
文学妄想お題ったーの太宰治「知らない人」が元ネタSS

        ジノザキ

「そっか、キミも人並みに恋しちゃったりするんだねぇ」
「茶化さないでくださいよ」
「茶化してないよ。なんだか不思議な気がしただけで」
「やっぱり茶化してるじゃないッスか!」
「だってそういう事には自覚が薄いっていうか疎いタイプに見えたからさぁ」
 王子がニヤニヤ笑っているので、俺は大層腹が立った。
「もういい!子供扱いしやがって、あんたとはもう金輪際しゃべんねぇから!」

*

「ザッキー」
「……」
「ねぇってば」
「……」
 王子の性格の悪さはわかっていたけれど、あれはいくらなんでも酷いと思う。酷いと言えば世良さんも世良さんだ。事情を知らないとはいえ俺の秘密を勝手にペラペラ、よりによって王子に言うとは。
(いや、わかってるよ。恋愛相談なんて世良さんには到底無理で、きっと達人に相談すればいいって感じで言ったんだろ?多分親切心だ。余計なお世話には違いないけど)
 あの夜、俺は酔って緩んで、うっかり悩みを口にしてしまった。自業自得の大失態にむしゃくしゃ、髪を掻き毟る。
(あー!イライラする!)
 そんな俺を横目で見ていた王子は、
「あ、そんなにしちゃハゲちゃうよ?」
なんて火に油を注ぐので、ますます俺は怒り狂って、
「うっせえ!」
と怒鳴りつける事しか出来なかった。すると何故か王子はニンマリ笑って、
「あーあ、ボクとしゃべっちゃったね。ざーんねん」
なんて言うので、俺は益々頭にきて、
「だあああああああ!!」
と叫んではいつもみたいに。

 王子は全くふざけた男で、殴りそうになる俺を椿が止めた。
(あー!!!腹立つ!)

*

「悪かったよ。ほら、お前王子と結構仲がいいと思ってたからさぁ」
「別にいいッスよ、もう」
「ならいい加減仲直りしてくれよ。もう俺みてらんねぇ」
 世良さんに他意はなかったのはすごく伝わる。その気落ちした姿を見れば怒りよりも寧ろ罪悪感で、でも困っているのは俺と世良さんで、当の王子は楽しんでいたので。
(全く、くそったれだよ、あの人は)
と、俺は渾身の憎しみを込めて王子を睨んだ。案の定王子はニンマリ笑って
「いいねぇザッキー、ああ、春だねぇ」
などとウインクに投げキスなど悪ふざけの限りで、
「ああああああ!」
殴りそうになる俺を世良さんが止めた。
(あー!!!腹立つ!あいつ悪魔だ!最悪だ!)

*

「ね、相談に乗ろうか?ねぇ、ねぇ」
 王子はそれから毎日うるさい。うるさくてうるさくてどうにもならず、破れかぶれに俺は言った。
「そんなに言うなら」
「♪」
「言っとくけど真面目な相談だから。ふざけた態度取るならぶん殴りますよ」
「わかってるさ」
 鼻歌が聞こえてきそうなお気軽男は、顔だけ神妙な表情を浮かべた。そうして俺はろくでもない事が起きる気満点ながらも、王子と約束を取り付けたのだった。一度はこの人とけりをつけなきゃいけないだろうと、丁度思ってもいたところだったから。

*

 行ったのはホテルの最上階にある飲食店で、軽い仕切りでプライベート空間を演出していて、しっとりと落ち着いたクラッシックの曲がムードをシックに彩っていた。大きなガラス窓の外には、宝石のように煌めく夜景が一面に広がり、密室っぽい息苦しさを緩和させる。そんな中まるで我が家のように寛いで座る王子は、俺の正面に鎮座ましまし、大人しく聞き耳を立てている。
(いつもうるさいくらいにくっちゃべってる人が、こうも聞き上手になれるものなのかな。まるで胡散臭い占い師みたいだ)
なのにこの奇妙なシチュエーションにもかかわらず居心地がよくて、なんだか俺の調子は狂ってしまった。だから、そんなつもりはなかったというのに、
「この気持ちがなんなのかっていうのは俺にもよくわからなかった」
と、いつしか本当にお悩み相談が始まってしまった。だって部屋の雰囲気と慣れない酒と、そしてこのよく見知った王子の、見慣れぬ姿と、この表情が。
「でも、一度そんな風に気になりだしたらもう駄目だったっつーか。頭の中そればっかになっちまって、ああ、もしかしてそうなのかなぁと」
 内心、かなり深い悩みだった。俺は気付いたところでどうにもならないこの気持ちを、一日も早く精算したいと思うくらいには、きつくて辛い日々を過ごしていたのだ。
「報われない恋に踏ん切りつけるには、一体どうすればいいンスかね?」
 日頃のふざけた調子とはまるで別人の王子はといえば、とても真摯な目のまま見つめて、一呼吸おいて口を開いた。
「終わらせるのが前提の恋なの?」
「はい」
「報われないから?」
「……はい」
「よくわからないなぁ。キミは報われるためだけにサッカーをしている?違うよね?」
「?」
「そりゃ両想いになったり成果が出たりするのは楽しいよ?報われる事目指して走るのも当然。目指せないのは辛いし、でも……」
 突然王子が、
「キミはタッツミーを見て惨めと思うかい?本当の願いが報われないなら、踏ん切り付けてこの世界から去った方がいいと?」
と言うので、俺は焦って否定した。
「違う!それとこれとは」
「自分の人生の情熱を傾ける。恋もサッカーも同じ事だよ。片思いも両思いも恋は恋で、ボクはどちらもかけがえのないものだと強く思うよ?キミは目に見える成果だけを欲して努力の前に既に挫折し、その恋を自分に誇れず、諦める為だけの相談をこのボクにするのかい?」
「……」
「踏ん切りつけるにはどうすべきか?そんなの他人に聞いてどうするの?」
冷水を浴びせられるとはこの事だろうか。王子は単純な部類の自己コントロールだと呆れ顔で、馬鹿馬鹿しい悩み相談の相手をさせるために自分を選んだのかと溜息をついた。
「やめたいならやめればいいし、やめたくないならすればいい」
そう簡単に言ってのける王子は確かに正しく、迷う弱さがない人だからこそ、こんなにもすっきり身綺麗なのだと知った。
「ガッカリだな。真面目に聞けって言うからちゃんと聞いたのに。時間の浪費だ」
 潔くて雄々しい王子にとって、今の俺は卑屈で惨めで、踏み付けられても当然と思った。どんな時にも動揺のない王子は、己の全てを掌握して、完璧に気持ちの整理が行き届いている。
(そうだ。王子の言う通り、こんなもの悩みの内にも……俺は王子みたいに強くないけど、なんだか凄く恥ずかしい……)
「傷付いた?でもボクは謝らないよ?」
と王子は事もなげに、
「酷い言葉になってしまったかもしれないけれど、自分が言ってる事は全部正しいと思っているから」
と自信を持って胸を張った。
「わかってます……別に酷いだなんて俺は」
「そう?」
 当たり前の事を当たり前に言うこの潔い態度に、俺は傷付くよりも寧ろ感動をおぼえた。
(すごいな。やっぱ王子は王子だ。物凄く強い)
「少しは何か得るものはあったという事かな?」
「……」
「ならいい。時間の無駄じゃなかったって事だし」
 王子はスラリとした仕草で、残り僅かだったグラスを空けて、
「じゃ、そろそろ相談会はお開きでいいかな?」
と言った。けれど頼んでいた料理は全然まだで、
「あとはあれだ。違う話でもしながら楽しもうか」
と、厳しい表情がガラリと変わって、王子はふざけた王子に戻っていった。余計な事や我慢は一切しない。とても王子らしいと強く感じた。

「いや、あの……」
そして俺はふわりと消えていく強靭の王子の姿を一人追いかけ。
「ん?何?」
「スイマセンでした……俺が間違ってた。王子のおかげで、少しすっきりしました」
「そりゃ何よりだね」
「気持ちの整理の付け方が間違ってたから苦しかったんだって理解出来たし……報われる報われないじゃない。例え世間的に間違っていても、所謂成就が訪れなくても、俺はこの気持ちを大事にしていけそうな気がする」
「よかった。結果も世間体も最終的にはどうでもいい事だもの。自分に嘘をつかないのが大事で……だって無理矢理曲げると大怪我しちゃうし」
「……」
「ん?」
「つまり王子は」
「?」
「……王子もかつては自分に嘘を?」
「え?」
「そういう事ですよね?過去、自分を曲げて大怪我をした経験を?」
「おやおや、少し余計な事を言い過ぎてしまったかな」
「なんだか王子の恋の話を聞いてみたくなりました」
「別に大した話ではないよ……どこにでもいる男の平凡な」
「聞きたい」
「うーん……」
「少しでいいです、教えてくれませんか?王子は自分が報われないをわかっていながら恋をして?そんな時どうして過ごしていたんですか?嘘付いて辛くなったり?間違いに気付いて自分を変えようと思ったり?」
「……」
「今もその恋をしていますか?それとも今はまた別の恋を?」
「酔ってるね」
「別に酒の勢いなんかじゃないです王子。せっかく王子のおかげでこれからどうあればいいのかわかりかけてるんだ。今聞いておかないともうこんなチャンスはないかもしれない」
その間王子は、店員から待っていた新しい酒を受け取り、小さく礼を言っていた。その態度で理解したのは、話す気が一つもないと言う事だ。でもどうしても聞きたく思った俺は、懇願するように王子に言った。
「お願いします。教えてくれるならなんでもしますから。まあ、俺が出来る事なんてたかが知れてるけど」
 すると王子はプ、と噴き出した後、酒を飲んだ。
「駄目、か……そりゃそうだ」
 チャラけた王子はチャラけたままに、クスクスと笑いながらウインクをして
「そうだねぇ、今日のこれがキミの奢りって事なら考えないでもない。かなぁ?」
「は?」
 王子はシラフな顔をしていたが、結構酔っているのかもしれないと思った。
(つか、この顔からして、酔ってるっつうか、シラフでも真面目にとりあう気持ちはゼロで、そもそもからかう気満点なのかも?)

*

 話半分に聞けばいいのか、それとも真剣に聞けばいいのか。そんな王子の話が始まる。
「ボクは胸に秘めるなんてガラじゃないからね。キミの恋とは結構違う」
心の定まらない俺を無視して、王子は朗々と話を続けた。
「気付いたら常にGOだ。こう見えて意外と好戦的だから」
「いや、全然意外じゃねぇけど」
「あれ?そうかい?」
楽しそうに笑う姿に、不思議な誠実さが感じられる。
(もしかしてこれ、真面目に話しているのかな)
「……ボクは怖がりだからね。待つなんて恐ろしくてとてもとても」
それは意外な一言だった。
(待つのが恐ろしい?何がだよ。だってあんたは……)
 王子がどんな人間かはプレイスタイルを見ていればなんとなくわかる。
(そうか。待つ恐ろしさを知る人だからこそ?)
王子は、誰よりもそれに耐性があるように見えた。サッカーはスピードを競うスポーツで、けれど待つのを競う事もある。時々王子は根競べをして、じれったい程相手を見定め、あざ笑うように敵を躱す。
(怖いからこそ。王子は戦略的にその怖さを利用するのか?そういう事なのか?)
 意味がわかるようでいてわからないような、でも全てが引き込まれてく話は続く。

*

 俺はその頃かなり酔っていて、何度も王子に同じ事を繰り返していた。
「王子の恋って素敵ですね」
 沢山の話をしてくれていた。映画の中のような素敵な恋に、陳腐で笑える失恋の話。縁がなくて心が離れてしまった恋も、大切な思い出として全部心に残してあると王子は言った。時には裏切りも愛憎の苦しみもあっただろうに、それでも王子は。
「全部かけがえのないボクの一部だ。それの一つでも誇れないならば、ボクは今のボクではない」
 繰り返し繰り返し、呟いていた。
「王子の恋って、すっげぇいい」

*

やがてその言葉は変わっていった。
「俺も王子みたいな恋がしたい。その全てが自分の糧になっていくような」
 もう何杯目かわからないグラスを片手に、俺は子供みたいに呟いていた。そして。
「自分の恋を誇りたい。だから王子、王子の今の恋の話が凄く聞きたい」
「流石にそれは勘弁してよ。リアタイの恋とか、随分生々しい話になってしまう」
「やです。今日はトコトン俺に付き合ってくれますよね?」
いつになく甘えて駄々を捏ねる俺が珍しいのか、王子はずっと笑顔だった。
「貪欲だねぇ」
「は?」
「ボクの今の恋はまだ誰も知らない。ボクだけの秘密なんだけれど?」
 まるでバラが綻んでいくような艶やかな姿に、俺はもう目が離せなかった。
「すごい。誰も?王子、尚更聞きたい。俺誰にも絶対言いませんから」
図々しいにもほどがある。でも酔いに任せてドンドンねだった。
「告白するつもりは?」
「ん?勿論あるよ。言ったろう?ボクは気付いたら常にGO」
「そうなんだ。じゃ、最近気付いて?」
「……」
「告白するって、どんな風に?」
「どんなって、うーん、そうだねぇ」
 ツンと澄ましたその表情はまた、今度は菖蒲のように凛としていて、俺は初めて王子の中に『男』を感じる事となった。
「なんだろうなんか今日の王子、滅茶苦茶イケメンだ。やべぇ、ガチでカッコイイわこれ」
ぽかんと口を開けて呟く俺に、王子は鼻で笑って、
「馬鹿。からかってるのかい?」
と。
「いや、マジで。すげぇビビった。今」
「今更だけど、そりゃどうも」
「王子のイケメンの一番の秘密は今聞いた沢山の『いい恋』だったンスねぇ。そうかー。そうだよなー?リアタイでしてる恋を思う王子ってマジやべぇ」
やべぇやべぇと繰り返す俺は、全く馬鹿丸出しだった。

*

「告白する時の王子もめっちゃイケメンなんでしょうねぇ?ちょっと真似だけでもやってみてくれませんか?」
「えー?やだよ。何でそんな事」
「いいからいいから」
「ザッキーにはあんまり飲ませない方がいいって事がよくわかった」
「王子、場所は?お店で?それともどこか外で?」
 引き気味の王子の言葉も意に介さないで、俺はガンガン話を進めた。
「大事な話があるからとか言って呼び出すんですか?それとも普通に会ってて突然のサプライズ的に?」
「あんまりこだわりは……なんていうの?潮目?いつもそういうのが見えたらって感じだから、そういう意味ではサプライズ派なのかなぁ」
「へー、潮目。じゃ、王子の中で、今だ!みたいなタイミングが来るって言う事かー」
「そうだね。言いたくなっちゃったらすぐ言っちゃう感じかな」
「どんな風に?」
「どんな風にって、普通に……」
「例えば?」
「やだよ、本当にキミ、ボクに実演させるつもりなのかい?」
「当然」
「あんまり飲ませないっていうより、もうキミを飲みに誘うの自体、やめた方がよさそうだな」
 言葉は腐しながら、でも王子は俺に手を差し伸べて、
「?」
「わかったから、手。ちょっと出して?」
「あ、ああ、はい」
 そうして俺がテーブルの上に出した右手を両手で握って、
「ボクは本当に気持ちを伝えたいと思った時は、必ず相手に触れるようにしてるんだ」
「成程……」
「なんか照れるなぁ」
「大丈夫大丈夫、相手俺ですよ?」
「……」
「さ、どんな風に?」
「そうだねぇ、例えば……」
 そうして王子は大息をついて、ジッと俺を見つめてこう言った。

「好きだよ」

 深く沁み込んでいくような声が、耳や手だけでなく全身に響く。その時まるで麻痺するみたいに、体中が痺れて動けなくなった。
「こんな感じ?単純だろ?なんだかひねりもなんにもなくて全然面白くないよね」
「……」
「でもあんまりゴチャゴチャ言ってもね。結局本気で伝えたい気持ちってシンプルにするのが一番なのかなってボクは……あれ?ザッキー、聞いてる?」
王子は色々お茶を濁していたが、当然それはもう俺の耳には届く事がなかった。とてもとても酔っていたので、手を解こうとするのを拒むみたいに、ただギュッと握って固まっているだけだった。

*

……ザッキー、ねぇ、ザッキーったら
(え?)
「大丈夫?ボーっとして」
 今自分がどこで何をしているのか、俺にはイマイチわからなかった。全部夢かと思った途端、繋がれた手が繋がれたままな事に気付いてしまった。
「うわッ!」
慌てて自分の手を引っ込めてみれば、王子は呆気にとられて溜息をついた。
「まあなんにせよさ、ザッキー?あんまりゴチャゴチャ考えないのが一番かと思うよ?」
「……」
「なんにも後先なんて考えないでさ。どうやったらかっこいいかとか、恥ずかしいとか全部なしに、言いたくなったら単に伝える。それだけで十分だと思わない?」
「そ……ッスかね」
「そうだよ。ボクみたいな恋ってキミは言うけれど、そもそもどんな恋でも縁があれば結ばれるし、縁がなくてもその喜びや悲しみは確実に自分を彩る思い出になるものさ」
「成程……」
 王子の話には説得力があって、クヨクヨしてきたのが馬鹿みたいだった。でも王子は俺の恋を知らないのだ。知らないから簡単にそんな事を言う。だから。
「でも王子」
「ん?」
「やっぱりなんでもかんでもは言わない方がいいんじゃないッスかね?例えば相手に迷惑だったりする時なんかは……」
「やっぱりキミの考え方はよくわからないよ。迷惑かどうかを考えるのは言われた方の人間の範疇だろ?言う人間の側が考えるべき事じゃないとは思わない?」
「……」
「もしかして人はそれを思いやりと呼ぶのかもしれないけれど。ボクには相手に尊重と信頼のない、単なる越権行為にしか思えないな」
俺は今まで、ただの一度もそんな風に、考えた事などなかったのだった。
「起きた事象に迷惑を感じるか感じないか。それはその人の選択に任せるべきだし、どれだけ想像しても本当にはどうなのかなんて自分にわかるわけもないし」
「そ……ッス、ね」
「だよ」
目から鱗の俺を見ながら、王子はニッコリとチャーミングに笑った。
「ホントだ。全部単純な話ッスね。本当に俺が頭抱えてた色々なんか、全部余計な事ばっかりだったッつーことか」
「……」
「言いたければ言えばいいし、言いたくなければ言わなきゃいい」
「そうそう。判断できる範疇は自分の事くらいだもの」
「……ッスね」
「ん」
「こう……」
俺はテーブルの上の王子の手を再びとって。

「こんな感じ?気持ちを伝える時は相手に触れて……?そんで」
「相手の目も見て」
「こうッスか?」
「そうそう」
「で……」
「……」
「好きって言えばいい」
「うん」
「好きです王子って……ただ素直にそう言えばいい」
 まるで暗示にかけられたみたいに、俺は王子に打ち明けていた。
(ヤベ、今俺何言った?)
 急に心臓がバクバクし始め、でもまた硬直して動けなくなった。
「うん、そうだよ、やっと言えたね。良かった、どうなる事かと」
「え?」
「ボクも好きだよ、ザッキー」
「は?」
「ただ素直に。それだけで十分だとボクは思うよ?」
「え?あの、王子?」
 王子はそのまま身を乗り出して額にチュッとキスをしたので、俺はそのまま息が詰まって、死んでしまうかと眩暈までした。

「ね?単純だろう?悩む事なんてなんにもないのさ」
「……」
「ボクに恋するキミって凄くいい。とても素敵だと感じていたよ?キミがボクにそう思う前にね」

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