お花結び

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大丈夫!まかせといて!

タッツミーが大好きだと言う王子にザッキーがやきもちを妬くお話。ジノザキ、シリアス偽装の変態ギャグです。まあ、ラテン系王子がペラペラ意味不明なことしゃべりだしたらその裏で大概ろくでもないことを考えてる感じ。この話の長台詞は読み飛ばし推奨w

        ジノザキ

 時々二人で昔のETUの試合の動画を見たりする。彼が編集したスペシャル達海全タッチ集とか。彼が昔熱烈なETUサポなのは聞いていたけれど、実際にこうして彼のコレクションを見せられると……。一体どれだけ熱狂的だったんだと半ばあきれる気持ちになるのも確かだった。

「あんた、ホント達海さんのこと好きなンスね。」
「ん?」

 練習の時も試合の時も王子が監督と話しているのをよく見かける。まだほんの数か月だというのに随分打ち解けた様子で、楽しそうなその姿が苦々しい。これって多分独占欲。王子のああいう顔を見ることが出来るのは自分だけだと思っていた。

「だから、監督のこと、好きなンスねって言ったんです。」
「だって、ボクにとってはタッツミーとサッカーは同義だからね。そりゃもう昔から虜さ。勿論今でもずっとずっと大好きだよ。あ!ほらココ!おっしい!…そこタッツミーにボール戻すの遅いんだよ!こうワンタッチでさー…もう、これ録画なのに見てたら悔しいね!」

 そういって屈託なく笑う。王子が監督に熱狂していた頃、俺はチンケな小学生だった。こんな顔をして目を輝かせて監督を見る彼を見ていると否応なく生きてきた時代の違いを感じてしまう。俺にとっては監督はある意味レジェンドみたいなものだったけれど、王子にとってはまさしく同じピッチに立つことを夢見る憧れの選手だったんだ。

 俺は王子とETUのピッチに立つことがここ最近の目標で、彼のプレイが好きで。好きがこうじて彼そのものが好きになってしまって。今ではもう、彼なしの人生などは考えられないほどで。それを思うと、王子の監督への気持ちが一体どういうものなんだろうとどうしても気分がざわつく。

「ボク、今まで試合観戦以外では彼と会ったことなくてさ?ホントはキャンプ初日に握手したときは心臓が飛び出るかと思うくらい緊張してたんだよ!」

すごく楽しそうに笑いながら話す。

「実際に会ってみれば、思った通り魅力的で!」

気持ちを表現したくて身振り手振り。

「ボクは、今本当に幸せで。」
「そッスか。」

嬉しそうな顔。監督のプレイを見ながら幸せを連呼している王子にイラッとした。

「監督を手に入れたら他はなんもいらないとか思ってそうですよね。」
「え?なに?どういう意味?タッツミーを?ハハハ!いきなり何言ってるんだい、恐れ多くて触れもしないさ。第一欲しいなんて考えたこともないよ?」

笑いながら。あの王子が俺がつっかかってるなんてこともまるで気付かないくらいに。幸せを語る。王子は監督に対して異常なほどのリスペクトを持っている。恐れ多いという言葉も癇に障った。
 よく浮気はプラトニックと肉体関係のみとどっちがショックかって雑誌とかでも書いてあるけれど、正直こんな親愛の情が深すぎる彼を見てるとイライラする。

「なんていうかさ。彼って存在はボクにとっては観念的なものなんだよね。ハハハ、さすがのボクでも観念と寝るなんてできっこないだろう?」
「意味わかんね。」

 サラサラと俺の頭を撫でている。王子は俺の髪の毛をいじるのが大好き。優しい撫で心地にうっとりしてしまう。監督の現役のプレーはエキサイティングだけど、なんだか今日の俺は王子とこうしていたい気分。自分の方がこの人の傍にいるって感じたい。

「創発って言葉、知ってる?」
「なんスか?ソウハツ?早発って早く出るみたいな意味?」
「いや、倉編にリットウの創るに、発進の発で、創発。」
「聞いたこともないッスね。」

横目でちらっと顔を見ると、王子が目を少し伏せ、しばし黙り込んでいた。説明のための言葉を探すときの彼の癖。

「ある時サッカー戦略の本を読んでね?その時にこの言葉を知ったんだ。ボクはこの創発という現象を愛するがゆえにサッカーに狂っているといっても過言ではない。タッツミーに心酔するのもそこが原点。ボクにとっては創発とサッカーとタッツミーはすべて同じものなんだよ。」
「全然わかんねぇ」
「ん~、そうだねぇ~、こう、ほら~」

口元に手を当てて、ドンドン顔をしかめていく。反対の手で俺の短い髪の毛をクリクリと巻きながら弄んで。こうして二人でいると、文法がめちゃめちゃになったり、こうやって出てこない言葉を一生懸命探す時がある。ズケズケとした物言いの癖に本人は日本語が難しいから言いたいことの半分も言えないなっていってたっけ。こういう姿を見ていると失礼だけどちょっとかわいい。

「アリストテレスの“全体とは、部分の総和以上のなにかである”って言葉があるんだけど、まあ、そういう感じかな?個人個人の相互作用が積み上がっていくことで個人的な視野では想像できないような現象が生じるっていうか。サッカーってそんなとこあるじゃない?」

考えて選んで出てきた言葉がアリストテレスってあんた…。俺は言いたいことの半分も言えないのは日本語が下手なせいじゃなくて思考回路が普通と違うからだと思う。

 そうだ、昔なんだっけ、王子のサッカー哲学は他人に説明するのは難しいからとか言ってたことがあったっけ。前に説明しかねるからと言って出してきたのは厚さ4cmはあるスペインのサッカーの研究書。ちょっとだけ日本語に訳しながら読んでくれたけどさっぱりだった。

「う~ん、ダメ?でも、多分キミも同じことを思っているよ。創発という言葉は知らなくても、理解してるし、その理想が心の中にある。ボクの中にあるあの世界。まあ、バッキーもかな?そう言い始めるとみんなそうなのかもしれないけどね。」

そういって王子は優しく俺の手の甲にキスをした。

「よくわかんねぇけど、あんたがサッカー好きなのは知ってる。」
「興味あれば本読んでみる?」
「どうせ外国語でしょ。」
「そうだねぇ。簡単なものならサッカー誌でも違う表現で説明してたりするのあるよ。でもスペインとかイタリアとかあっちの方がバリエーションがあって面白いかな?」
「王子が簡単って言ってもいつも全然簡単じゃないッス。」
「う~ん、そうかなぁ?ともかくね、ボクが言いたいのはタッツミーがその創発を起す力を持っている人間なんだってことだよ。」

王子は俺の頭をクシャクシャと髪の毛を梳きあげたり撫で上げたり。いい笑顔。

「やっぱ王子が今調子いいのって達海さんの影響力大きいンスね…。」
「そうだね確かに。なんかタッツミーはすごいよ。取り繕うのも無理だしスタンスも置かせてくれない。勝手に入り込んでかき回されちゃうからお手上げさ。」
「どっちかっていうと王子の方が入り込みたがってる感じありますけど?」
「ん~、そう?でも、なんとかしてあげたいって言うのはあるね。」
「なんとか?」
「あの人苦労多そうじゃない。まあでもボクじゃ力不足は否めないけどね。」
「…ホント、好きなンスね。」
「うん好き。ねぇ楽しいね?ザッキー。これはまわりのすべてを巻き込んでいく不思議で独特でエキサイティングなビジョンだよ。彼がボク達を使ってみんなを連れてってくれるんだ。そしてそれと同時にボク達が彼を連れて行くんだよ?素晴らしいね。サッカーをやっててよかった。ボクはこんなにもサッカーが好きだったんだ。こんな大事なことすっかり忘れてた。」

うっとりとしながら俺の頭を撫でている。

 自分がサッカーを好きだという今更のようなことをサッカー選手が繰り返し繰り返し楽しそうに話す。なんというか普通はどんなに好きでもプロになれる人間も少ないのに、この人のプロセスは出鱈目だなぁと感じる。

「達海さんのことホント好きなンスね。」
「ねぇ、さっきからなんか気になるんだけど。やけにそこ、こだわってない?」
「王子がそんなに好き好き連発してるのって見たことないっすからね。」
「なに?いじけてんの?」
「別に。」
「タッツミーだけじゃなくてプールとかサッカーとかも好き好き言ってると思うけど?」
「プールもサッカーも人間じゃないでしょ。」
「人間相手だとダメってこと?」
「……」
「なんで?」

 なんでこんな単純なことがこの人にはわからないんだろう?人間のこういう心理の揚げ足を取るのが趣味みたいな人なのに。

「王子ってサッカー好きですか?」
「大好きだよ?」
「監督は?」
「大好き!」
「じゃ、俺のこと好きですか?」
「……うん。」
「でしょ?これですもん。なんでそう無口になるンスか。」
「……」
「極端なンスよ!なんスカ!それ!」
「……」
「…こんなこと言いたくないけど。そういうとこ、少し考えてくれてもいいのにって思いますよ?他の奴のこと好きだ好きだって毎日毎日聞かされてて、愉快な気持ちになるわけがないでしょう?」
「え?ザッキー、いやだったの?ボクがタッツミー好きなこと。」

どうしてこの流れでそんな驚いた顔ができるのか、この男。

「思いつかなかった。言ってくれたことがなかったから。」
「何が」
「もしかして…キミはボクの気持ちに信頼がないの?ちょっとでもキミを不安にさせてしまったということかい?ボクのタッツミーの話。」
「え…」

 王子の顔がなんとも悲しい顔になって。目端の効く人がこれほどまでに鈍感で。俺がこうやってヤキモチを妬いていることを知って大いに傷ついてしまったようだった。まるで彼の愛が足りないとでも、俺がつきつけてしまったかのように。

「王子…あの…」
「結構ショックかも…」
「だって、普通あんなに大好き大好き、虜だぞっこんだとか言われたら普通に。」
「…そんな程度のことで?」

言い方にカチンときた。そんな程度のことで?この人にはヤキモチとか嫉妬心とかそういうものの概念がないんだろうか。監督のことにしても、椿のことにしても。俺が卑屈に思えてみじめだ。

「ヤキモチとか…独占欲とか。好きだったら普通に。そうなるでしょ?」
「そういうのは相手に対する自信と信頼がないから出てくる感情じゃないの?」
「あんたは自信家ですもんね。」
「そんな…。ボクは今、二人はすっかりそういう時期を過ぎた関係だと思ってたんだよ。でもまだまだボクはキミの信頼を得るに足りない存在だということだね?」

そういうと体を覆いかぶせて俺を押し倒し、キュッと抱きつき肩に顔をうずめ、ゆっくりと後頭部を撫でる。知ってる。これは彼が心理的に少し弱った時にやる安心のためのおまじない。これが始まると結構長い。自分はデリカシーのないことばかり言ってるくせにこんなにナイーブで、不公平なものを感じる。

「日頃の行いのせいかな。ボクはとても不誠実な男だから。ボクが“何人の女と寝ようとキミとの関係とは別のものなんだよ”と言っても、それは確かにボクだけの欺瞞だしね。」
「え?ちょっと待って、あんた今何言った?おい!」
「ん?」
「あんた、今でも遊んでんの?」
「ん?」
「ちょっと!」
「どう思う?」
「マジかよ!」
「…やっぱ信頼がないんだ。そんなことありえないって思わないんだね。」
「え?冗談ってこと?」
「というか、キミの性格上の問題なのかなぁ。あのね?ボクの話をまともに聞き過ぎていると時々疲れない?嬉しいけどさ。」
「また俺のことバカにしてんの?」
「見たままを感じてくれればそれでいいのに。ボクの口からはホントもウソも色々出てきちゃうから。ボクも悪いんだけどね。」
「あんたウソうますぎるから全部ホントにしか聞こえないんだよ。」
「そう…かな。」
「達海さんは違うんだろうけどね。気楽でいいでしょ、ああいうの。」

言いたくないのに変な言い方をしてしまう。

 王子は今ちょっと傷ついている。俺に抱きついて離れない。こういう時こういう言い方はよくない。でも嫉妬で苦しくてどうにかなりそうで。そう思った瞬間、その感情に気付いたかのように不意に体を離して俺を見る。

「ねぇ、ザッキー。じゃあ、試しにボクとタッツミーで一度寝てみたらいいかな?その結果を見ればキミは納得できるだろうか。観念と物理的に寝たって思いは成就しないってことをさ。」
「なッ!」
「別にそうなったからってボクもタッツミーも今と何一つ変らないよ?とてもボクの手には負えない人だけど、チャレンジしてみても」
「いや!考えなくてもいい!考えなくて!」
「遠慮しなくていいよ?」
「遠慮じゃない!」
「だってそういうほうに、そういうほうに話振ってない?それでキミの気が済むなら答えを提示すべきだろ?なんにも得るもののない空っぽな行為でもタッツミーにそのあたりきちんと説明したら協力してくれるかもよ?」
「どうしてそうなるんだ。あんたまたからかってんのか?それともつっかかってきてんの?」
「違うよ、違うよ。ボクは…よくわからないんだよ、どうするのがいいのか。キミは確かに苦痛を感じてる。そうだろう?ボクがタッツミーを好きなのは本当のことだよ。そのことを口に出さないことだって実際に可能さ。でもそれでキミが救われるわけでもない。ならどうすれば?苦痛も好意も感情的なもので理性でごまかすことはできても制御は不可能。これはひとつひとつは小さい出来事でも、積み重なっていけば結構深刻な問題になる。ボクはこの手の出来事に関してはかなり真面目に考えるタイプなんだ。」
「……」
「ゆるぎない安心感も、信頼感も、どっちも感情の部分で。やっぱり理性でどうこうしようとしてもどうにもならないものだから。キミがそれを手に入れられないことに関しては残念に思うし、やっぱりショックは大きいね。それがボクの性格上の問題が大きく作用しているとすれば尚更ね。最悪その苦痛から逃れるためにはキミはパートナーの選手交代をするしかないじゃないか。」
「ちょ…ちょっと待ってよ王子、何言ってんだあんた!」
「別れるのはボクには苦痛だけど、キミの苦痛を見る方が辛いじゃない?キミには楽しく生活してほしいんだ。まだまだメンタルにプレイが左右される選手だから。ボクとの生活でキミのなにもかもが潰れるなんて、ボクには耐えられないよ。」
「別れるとか、俺全然そんな話してないだろう?」
「だから兆しだよ。大切なことだよ?こういう部分は辛くてもちゃんと考えを擦り合わせて気持ちを合わせていかないと終わるのはあっという間。ちょっとしたことで済ますことじゃないんだ。ゲームの流れを変える重要なターニングポイントだよ。」
「俺は…そんな別に…ちょっとあんまり王子が監督の話ばっかするから。」
「キミとサッカーの話をしたいんだよボクは。別にタッツミーじゃなくてもいい。ただ二人とも彼が身近な存在できっとキミにもボクにも親和性の高い内容だから。それでこれを選んでこうして二人で映像をみているんだよ?わからないかい?キミにはボクと一緒になってクレバーな彼のプレイを見て欲しいのに。違うところばかりをみていると迷子になってしまうよ?」
「王子…」
「わかるだろう?彼はボクなんかよりもずっと上質な選手。しっかり見て吸収すればキミはもっといい選手になれる。そう思うからボクは……」
「……」
「…こういう話を口に出して説明するのはすごく苦手なんだ…ちょっとしんどい。少し休憩させて…?ごめんね。」

そういうと王子は俺に抱きついたまま黙ってしまった。言っていることは正論だ。俺がバカなんだ。自分に対して卑屈だから。そして彼は本当にデリケートで。そういう他人の弱い部分を見つけては先を見通す。その目は特に暗い方向をよく映してしまう。俺のこんなたった一言で、この人の安心感と信頼感がこんなにも簡単に揺さぶられてしまうなんて。こんな彼を見ることで、今王子が一体どんな心境であるのかを理解した。一緒にいるのが当たり前という自分の感覚を相手に当たり前と思ってもらえない。確かにこれはショックだ。

   *  *  *

「ザッキー。キミがボクを見たいのは嬉しい。でもゴールはこっちじゃないよ?」

ぽつんと王子が言う。

「以前ボクはキミにボクをちゃんと見て欲しいと言った。でも今は違う。そこの説明が抜けていたね。悪かったよ。出来れば今はボクと同じ方向を、ボクと同じものを見て欲しい。そういう話なんだ。」
「王子…」
「こっちを見ていなくても、ボクはちゃんとここにいるよ?目を離すのは不安かい?キミはボクの傍にいてくれる。ボクはそれを実感できている。だから不安じゃないんだ。そこが違うみたいだね?」
「いや…」
「ねぇ、一つ協力してみてくれない?ボクとタッツミーが寝るより効果があると思うんだ。」
「なにを?…ッ…」

首元をいきなり舐められて驚いて体が跳ねた。

「ちょ…!な…ん…」
「キミって正常位とか騎乗位とか好きじゃない?女の子ならきっと対面座位とかも好みそう。多分そういうところが根っこの部分だと思うんだよね。」
「な…ハァ…なんの…話…」
「しばらくさ、バックとか立ちバックとかそういうのでしようよ。」
「!」
「キミ嫌がるから遠慮してたけどボク好きなんだよね、特に着衣有りの立ちバック。すっごく気持ちいいの。たまにはそういうのも、ね?キミってボクと身長もちょうどいいし、ずっとしたかったんだ!ほら、そこのダイニングテーブルってちょうどいい高さでしょ?」
「そんな……あぁ…ん…」
「いい案だと思わない?ボクが見えない状態でもそうやってキミが何度でも溶けてくれればきっとボクが言いたいことを全身で体感できるよ!」
「いや…その流れ…おかしいでしょ…ねぇ!あ!」

王子が俺の体のあらゆるスイッチを押して俺のテンションをドンドン上げていく。どう考えてもその発想おかしいでしょ!あんた単に好きな体位でやりたいだけじゃん!ダメだ、話がしたいのに流されて…

「ナイスアイディアでしょ?口で説明するよりきっとこっちならボク得意だから!」
「王子…!だから!ねぇ!ンッ…あぁ…」
「大丈夫!まかせといて!」
「ん…待ってよ、王子!」
「平気平気!」

ダメだ、この人もう、話聞いてない。

「何事も練習だから!これから何度もこうして意識を擦り合わせていこうね?ザッキー?」

どうしようもない人だ……
どこがデリケート……

……ま、いっか。

愛とは見つめあうものではなく、お互いが同じ方向を見つめること
by サン・テグジュペリ

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      ジノザキ