お花結び

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わたしを祝福しておくれ

完全に相思相愛なのに王子が絶対にそれを認めないお話。ホノボノ系?ラブチュッチュの次の日ザッキーと王子が喧嘩→後藤さんに相談→後日談という流れ。ジノザキ?ザキジノ?どっち?な空気感。

        ジノザキ

脱皮できない蛇は滅びる

脱皮できない蛇は滅びる。
意見を脱皮していくことを妨げられた精神も同じことである。
それは精神であることをやめる。

 by ニーチェ

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「一言いわせてもらいますけど。俺今まで王子に好きだって言われたこと無かったッスよ?」
「えー?そうだった?」
「ッス」
「そうかなぁ?言ってきたつもりだけど。でもいつも思いっきり可愛がってあげてるじゃない?すっかりそういうことは通じ合えてるって思ってたけど。」
「…ま、それは…。」

 甘い甘い夜の翌朝。重い体を引きずるようにダイニングの椅子に座った俺とは違い、王子は明るく元気にそう答えた。この人はこんなにスタミナあるのにどうしてピッチではあんなに王様プレイばかりしているんだ。

「こんなにキミを可愛がってる人間なんてこの世にいないよ?」
「…まあ、それでとりあえず一応確認なんすけど。…俺らって結局恋人同士ってことでいいんですかね。」
「恋人!?キミとボクが?何言ってるの?」
「え!だって昨日…!」

 王子が大きな声で本気で驚いたようだったが、驚いたのはこっちのほうだった。今までは重要な言葉を交わすわけでもなく単に体のやりとりをしていたけれど、昨日のあれはそういうものではなかったはずだ。王子は確かに俺を放さないと言った。大好きだとも。自分も王子に気持ちをやっと伝えられた。そうやって何度も互いに言葉を交わしたし、たまらなくなるような甘い愛撫を受けながら今までにない恍惚を感じた夜だった。
 あんなに二人素直になれたはずが寝て起きたらまたこれ。また意地っ張りの続き?いつもこの人は俺を苦しくさせる。この人は一体何を考えているんだろう。

「キミはボクの飼い犬だよ?言ってるだろう?」
「……」
「…うーん。これは本格的に深刻だねぇ。昨日はボク達すっかりわかりあえたと思ったのに。」

 大きなリアクションでため息をついているその姿は、いつもの冗談めかしたものではなく、少々ネガティブなものだった。わかりあえない辛さを感じているのは王子も同じなのか。いつものような混ぜっ返すような態度ではなく、ひどく真面目な表情で王子がじっと俺のことを見た。人を犬扱いすることがあり得ない侮辱であることなど微塵も感じていないようだ。つくづくこの人の発言は失礼で、でもあの時の手の感触はたとえようもないほど甘くて。あれは技術的な問題だけではない、気持ちのこもったものだと思うことは俺の勘違いなのだろうか。王子のこの目を見ているとこの人の何が冗談で何が本気なのか、本当にわからなくなってくる。

「…少々確認をさせてもらってもいいかな。まずキミってゲイなの?」
「え?…いや…別にそういうわけじゃ…」
「うん、そうだよね?ボクもゲイセックスを楽しむことはできてもゲイではないんだよね。」
「はぁ…」
「セックスそのものが好きだからね。相手が男でも女でも十分楽しめる。」
「まあ、アンタそういうとこありそうだなとは…」
「ボクに限らず気持ちいい事嫌いな人なんているのかな?キミだって現に楽しんでいるじゃない。男ってそういうものだよ。ま、ともかく恋愛にセックスは付き物だけど、セックスすなわち恋愛っていうのは違うよ?ザッキー。」
「…俺はその辺はよくわかんないッス。」
「もしかして、ちょっとショック?」
「なんていうか…そこまでぶっちゃけた話されると呆気にとられるっていうか。」
「ザッキーは思ったよりウブな子だったんだね。なんかそこんとこはボクの配慮が足りなかったかもしれない。」
「……」

 なんだか不思議な話だ。つかみどころがないとは思っていたけれど、こんなドライな考え方をしている人間だとは思ってもみなかった。率直すぎるほど生々しい言葉が今までになく王子を近く感じて嬉しい反面、内容がシビアすぎて俺を悲しい気分にさせていた。王子はゲイでもないし俺が愛されているのだと勘違いしてしまっているだけの話なんだ。もう、それがとてつもなくショックなほど俺はこの人のことを好きになってしまっていたんだなと心が抉れるように痛かった。
 それでも、こういう今まで見えなかった意外な王子の独特にも感じる一面が、益々俺を虜にさせてしまっていた。

「女の子とそういう関係になるためにはロマンスが必要じゃない?建前上でも愛とか情熱とかを語る必要性がある。勿論、そういうことも含めて楽しいわけだけども。でもね。男同士でことに及ぶ場合には、そんなロマンス…いらなくない?そういう前提の部分なんて必要ないものだとボクは思っちゃってるところがあるんだよね。ましてやキミのこと、可愛いペットとのスキンシップの延長みたいな感じで捉えてるわけだし。そのあたりでボク達少しすれ違ってしまっているのだろうね。」
「…それ、冗談じゃなく本気?」
「え?」
「俺のこと、本気で飼い犬か何かだって思ってんですかってこと。」
「そうだけど?え?なんか不満?」
「当たり前でしょ?!侮辱っすよ?それ!」
「えっ??なに?よくわかんないッ」

 王子の目が白黒している。王子も動揺することがあるんだ。本当に考えてもみなかったことを言ったのだろうか。ありえない。この人の精神構造は本当によくわからない。

「なんで?不満なの?すごく特別な関係だよ?そうか…そこからもう認識が違ってきちゃってるのか…」
「異常な関係っしょ…」
「そうなの?」
「そうッス。」
「不満な意味がわかんないよ。」
「俺はあんたがわかんねぇよ。」

「どうしてこうなるんだい?ボク、キミのこと見てると可愛くって可愛くってしょうがないんだ。キミに触りたくなるし触れてると癒される。本来ならいつでも側に置いときたいくらい。ここ最近のキミはボクのペットとしてとても重要な役割を担っているんだよ?ボクはキミの側にいて、キミが成長してドンドン賢くなって、みんなキミの素晴らしさに気づいていく様を見守っていくのが楽しくて仕方ないんだよ。生き物の生育の楽しみっていうの?こういう息の長い経過を楽しむような趣味なんて、ボクサッカー以外では初めてなほどなんだし。今度こそわかりあえて、すっかり懐いてくれてると思ってたのに結局またこうして噛みついてくるし、本当にどうしていいんだかわからないよ。」
「…んだよ、生き物って」

 ちょっと困ったような顔をしながら王子の口から流れ出る言葉。昨日の感触が体中に残っていて、王子の言ってることは全部愛の言葉に聞こえる。一緒にいたいなんて、プロポーズの言葉そのままじゃないか。こんなセリフ聞かされたら、昨晩あれだけクタクタに抱き合ったのに、体が熱くなってきてしまう。この言葉は王子の言うロマンスとどう違うんだ?それに不自然に挟まる生育やペットという言葉。理解できない。本当に理解できない。

「いや…俺も一緒にいるの楽しいッス。でもそうやって一緒にいるのが楽しくて、セックスする関係を世間一般では恋人同士っていうんじゃないンスか?」
「えー?違うよ、ザッキー。恋人同士だと特別なロマンスが必要だって言ってるじゃないか。キミとボクにはロマンスなんてない。日常があるだけさ。」
「ロマンスと日常の違いとか、恋人とペットの違いとかホントあんたの言ってること意味わかんねぇ。」
「…ボクも何度も何度もこんなにも説明を強いられて、さらにこんなにも理解しあえなかった経験はないよ…。」
「王子って根気とか無縁っぽいですもんね…」
「あぁ…それは理解してもらえてるんだね…。なんかねボク…ほんと最近キミ、口にするのは不満ばっかりでいい加減頭痛がしてきてるのは伝わってる?」
「…頭痛してんのは寧ろ俺のほうですけどね。」
「うんざりだね。」
「そッスね。うんざりッスね。」
「そこもお互い分かり合えるんだ…」
「ッスね…」

はぁ…

 二人とも互いにこういうことを言い合ったり考えたりするのはもう本当にくさくさしていた。堂々巡りでキリがない。本当はこうして一緒にいるだけで幸せなはずなのに楽しい気分がすべて台無しになっていく。どうしようもない気まずさと、どうでもいいかというようなやけっぱちな気持ちが部屋中にただよっていた。
 こんなにうんざりなのに、またここに王子に呼ばれ、俺もまたホイホイと来てしまうんだろう。

なんかめんどくさいけどそろそろ用意しなきゃね?と王子に施され、二人でノタノタ練習に出かける準備をするのだった。

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