飼い犬と飼い主 2
ジーノがザッキーの自主トレに時々付き合うようになって体調管理と称して色々からかい始めます。ザッキー入団からしばらくした頃のお話。今回の登場人物は二人だけ。ほとんどトレーニングルームで二人ワイワイやってる描写。
体調管理2
傷つき疲弊しきった状態であることに本人はさほど深刻さを感じないながらも、それは体調不良となってジーノを襲っていた。よく眠れず、起きてもスッキリしない。何もやる気がしないし、それと同時になにかしていないといられなかった。新しいターゲットに遊びを仕掛けるのももう疲れた。それでもやらざるを得ない焦燥感。矛盾。そうやって自らの手でスケジュールを過密なほど詰め込みながら、毎日、その消化に辟易していた。
初めて覚えた日からずっと大好きだったセックスの快楽は、ここ最近はそんなにいいものにも感じられなくなっていた。気が向けば簡単に寝る相手が見つかることもよくなかった。ここ数年はその気になればターゲットとその日のうちに寝てしまえるくらいで、そこに至るプロセスはあまりにも安易で安直なものになっていた。だから攻略の楽しみはすっかり失われてしまったも同然だった。お手軽なセックスからはお手軽な快楽しか生まれない。なにか工夫を、なにか刺激をと考える中で思いついたのが他者への不当にも思える支配だった。支配欲の充足はここ最近のジーノのお気に入りの遊びで、今ではセックスそのものよりもずっと強い快感になっていた。今や退屈にも感じ始めたセックスというものは、ジーノにとって支配のための道具でしかなかった。
退屈な、意味のあるようなないような、そんな悪い遊びのスケジュールを増やす中で、今一番楽しめていたのがルーキーとの交流だった。重い体でボールを蹴るのは不快だったが、彼を見るために出向くのは悪くなかった。最近では彼の自主トレに付きあう時間を確保するためその時間帯のスケジュールを空けるほどにもなっていた。
そう、ジーノはここ最近、目の前にいる美しいルーキーに珍しくも欲情していた。彼を支配し凌辱する。その思いが常に心をとらえて離さなかった。肉欲と支配欲の両方をかきたてられるようなラッキーな存在に、ジーノは夢中になった。彼を見て、彼と話し、彼に触れる。間合いを詰めるように日常生活の中で繰り広げられるそれらの行為は、ジーノにとってはセックスにいたるまでの長い長い愛撫の一種という認識であった。セックスが道具であり単なるプロセスの一部になっていたジーノにとっては、もどかしいほどに自然に手数をかけてしまえること自体が、なんとも言えない極上の快楽だった。それと気付かれないように相手に接近する。そうして徐々に彼の心の芯の部分をくすぐり、彼自身の意思で、男性であり先輩にあたる自分を乞うようにさせる。そんな妄想を繰り返すことそのものに愉悦を覚えていた。
欲求と背徳感に挟まれ苦悩する彼はとても美しいものだろう。
彼を煽るだけ煽っていきながら、
それに至る日を大いに想像しながら、
ボクには男性とは寝る趣味はないと強調をしていくつもり。
寝てしまえばおそらくまた退屈が始まる。
そういうことをボクは知ってる。
近いうちに目の前に差し出されることになるであろう、美味しそうなお菓子を前に、その香りを楽しむだけで口に運ぶことを我慢する。そんな自分を想像する。ジーノは彼を食べてしまうのがもったいなかった。香りを楽しみ、どんな味がするのか眺めて想像しているだけで今は十分満足だった。やり方さえ間違えなければ、きっと長く遊ぶことができるだろう。疲労し切った重い体を引きずる中にあって、このちょっとした遊びは紛れもなく彼の救いになっていた。
* * *
最近のジーノはスキンシップに関して警戒が薄れてきたお気に入りのルーキーに対して、少しずつ感じそうなところを撫でまわしていた。相手にそれと悟られないのが一番のポイント。そんな自分の中でだけ認識できる秘密の遊びをやっていた。
ボクの愛撫でイチイチ感じちゃってるね
一生懸命知らん顔をしているその姿
そんな大根役者の様な演技で
本気で気付かれていないと思ってる
ホント、キミってとってもかわいいね
あんまりにも自然に、とても時間をかけながらタッチの仕方を変化させていったので、赤崎はジーノの意図などまるでわかっていなかった。なんだか最近ちょっとくすぐったい。そんな程度の認識だった。ジーノはチャンスがある度に気付かれないように少しずつ赤崎を弄んだ。柔肌の上を触れるか触れないかの位置で手の平をすーっとすべらせてみたり、不意に爪先をツッと這わせてみたり。ごく普通の日常会話をしているふりをして近づいて、耳裏に吐息を吹きかけてみたり、自身の長い前髪で首筋をくすぐったり。ほんのちょっとしたことで赤崎がいちいちビクリと身を固くするので、ジーノは面白くて仕方がなかった。
けれど、そんなことが楽しいのもほんのちょっとの間だけだった。1か月も過ぎた頃にはもう少し強い刺激が欲しくなってしまっていた。彼の中のタブーを刺激するようなそんな誰も踏み入れていない新しいエリアに入り込みたい。そういう欲求が湧いてきた。ジーノは1週間くらいはそんな自分の欲望を抑えるジレンマを楽しんでいた。だが、今日の彼があんまりにもかわいかったので、結局我慢しきれずに罠にはめてしまうことにした。
素直な彼は、どんな出鱈目な話でも簡単にボクの口車に乗せられてしまう
今日の反応なんてホント、最高だった
全く単純でかわいくって、なんだかちょっと可哀そうなくらい
ボクも調子に乗ってあんまりやり過ぎないように
十分気を付けてあげなくちゃね
彼の為にも、ボク自身のためにも
* * *
今の赤崎との関係はジーノの傷を増やさなかった。赤崎は若くシンプルで、基本的にはとてもセルフィッシュで。わかりやすすぎて余計な気遣いなどまるで必要がなかった。強くて脆い赤崎は今までのどんな人間とも違っていてその精神がとても健やかだったので、ジーノのこの程度のからかいなら一つも傷を負わなかった。繰り返してきた支配欲の悪癖は、ほんの少しおさまった。
誰にもわからないままにジーノの世界が反転し始める。
知らないままに傷つき、疲弊しきったジーノの魂が
知らないままに癒され、救われ始めていく
赤崎の中の純粋で力強い熱風が今、傷だらけのジーノを抱き留めるように温めていた。
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