飼い犬
15日なのでザッキー過去編をば。沢山の人達に愛されながらサッカー一筋に生きてきたってイメージで書きました。家族設定がっつり捏造。登場人物は赤崎、王子、同級生、家族、チームメイト、彼女(H有)。変な時間にジーノがフラフラあらわれてたのは後藤氏と飲みに行く為。このシリーズの後藤さんはお母さんでタッツミーはお父さん的役割。
小学時代~情熱の継承
この頃の赤崎の家族が一番はまっていたのがETUの達海選手だった。ジュニアの練習に行くと時々見かけることもあったので、家族に頼まれてサインなんかも貰ってきてやったりした。カタカナで「タツミ」って書いてあるだけのシンプルすぎてアホらしい一歩手前の達海のサイン。家に持ち帰ったら案の定偽物認定されてしまって家族に叱られた。本物なのに理不尽だと、赤崎はヘソを曲げた。
達海選手は他の選手とは全然違っていて、軽食食べてたらちょっとちょうだいとかやってきてヒョイっと食べてしまったり、時々「ほら、とってみろよー」とか言って俺らに一対一を挑んで来たりすることがあった。遊ぼうぜ、といいながら持ちかける勝負は、いつもあんまりにもガチで全くもって大人げない男だった。
でも、そんなあの人と一緒にボールで遊ぶのは結構楽しくて。もう少し早く生まれてたら一緒にピッチに立てたのかな?でも現役長く続けたいって言ってるし、ちょっとでも一緒にやれるチャンスはあるかもしんないな、などと赤崎は思っていた。とっても変わった人だったけれど、達海選手のことを実は結構好きだった。
* * *
達海選手がプレミアで怪我をしたのは赤崎が小学生の高学年の時のこと。
彼を英雄扱いしていた奴らは悲劇に泣き、悪者扱いしていた奴らは天罰だと言いながらもやっぱり泣いていた。勿論赤崎一家は悲嘆に暮れて真っ暗で、父親は仕事を休んでふて寝するし、ご飯を作る気力も失せた母親の為にみんなで出前を食べたりもしていた。本当に陰鬱な生活をしていたあの時の思いは、赤崎には忘れられない思い出だ。
赤崎も勿論布団に篭って号泣していたのだが、悲しみというよりも強い怒りのような感情にまかれていた。絶対に世界に立ってやると、本気で決意したのはこの時だった。
待ってろよ?
そのうち見てる奴等みんなに
この俺が思い知らせてやる!
赤崎の中に憤怒にも似た、身もだえするほどの情熱の嵐が沸き起こった。ただし彼自身、なにを思い知らせてやろうと思ったのかはよくわからなかったし、また今でもよくわからないことではあるのだけれど。ただ、それほどまでに達海選手の怪我というのは赤崎にとって理不尽な出来事だった。
そしてこの頃から赤崎は、ETUはステップの一つにしか過ぎない、としょっちゅう口に出して言うようになった。無意識ながらも移籍後夢半ばに倒れた達海の情熱のすべてをその身に受け、その後ろ姿を追いかけていくことを想定した発言だったのかもしれない。なぜならETUずくめの家族に育てられた影響で、赤崎は自分自身がETUの一部なのだという感覚があったから。同じ土壌で育った選手が巧まずしてピッチに置き去りにせねばならなかった情熱すらも、すべて自分自身のものだと感じてしまっても不思議ではなかったのだろう。
* * *
この出来事があってから、赤崎は益々遠慮のない率直な意見をしていくようになっていった。
一日でも早く大人になりたい、そんな思いを胸に抱えて。持って回った言い方ややり方などロスだと考え、最短の距離で意識合わせを行って結果に繋げていくようになった。ぶつかることも多かったけれど、その意味が情熱からくることを周りのみんなは不思議と理解してくれていて。そういった交流を通して貪欲に周りと一緒に成長を続けた。次第にジュニアのチーム内では発言力のもっとも強いリーダー格となり、その統率力から学校では当たり前のように応援団長や児童会役員をこなすような人物になっていった。
そしてまた、大きな声で将来の夢を語ることをやめることはなかった。今までも本気だったけれど、この出来事がキッカケで夢を追う意思と情熱ははっきりと変化した。より熾烈で、より苛烈で、より真摯な形になった。これ以上ないほど、とどまることを知らないほどに熱い塊となって赤崎の心そのものと融合を果たしたのだった。もはや赤崎の存在そのものが情熱と言ってもおかしくなかった。
その姿を見て、この頃にはあからさまに赤崎の夢を馬鹿にできる人間など、もはや周りに誰ひとりとして存在しなかった。もう誰にもなにも言わせない。そんな鬼気迫るものを感じさせる存在に赤崎は成長し始めていた。
赤崎はやるだけのことをやりきるということについては絶対的な自信に満ち溢れていたし、その道を進めば自分の夢が叶うことを信じて疑わなかった。ただ。この頃赤崎の周りにはもう馬鹿にする人間はいなくなったけれど、残念なことに共感者もまだ見当たらず。そのことによって強い情熱の陰にさらなる深い深い孤独の傷を刻み込んでいくことになった。けれど、赤崎は寂しさを抱えつつも、まるで生き急ぐかのように前だけを向いて、すべての事柄を振り切るかのごとく真剣に取り組むようになっていった。
素直で情熱的な夢を見る自由な心と、人並み以上に大人びた実直でリアリストである理性が、赤崎の中で常に交錯していた。
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