お花結び

Just another WordPress site

*

飼い犬と飼い主 6

ジーノご乱心アワワで色々踏み外して幸せ飼い犬生活がぶっ壊れます。やっとこR-18 な時期に入りました。(ほのぼのエロなしから一転、バトル展開!というよりウツ展開?) 5と6で落差激しいです。王子、赤崎、黒田、夏木一家、村越、モブ女で、ジノ→←ザキ、ナツ+ジノ、ジノ+コシなどなど。

夏かけて、夏賭けて

 絶好調で浮かれてるモジャモジャ頭は、今日もいつも以上にご機嫌だね。

 バタバタとピッチを必死で走り回って、ホント醜いとしか言いようがない意味不明なプレイスタイルの男、ナッツ。その動きに理論やプランが一つも感じられないから、本当にいつも合わせにくい。だから心底ボクは彼とプレイするのが苦手。
 でも、なんだかとっても気さくで愉快な男で。彼はなにを言おうが結構平気だからボクも随分気楽。そう、クシュンとした顔をするけれどなんかタフなんだよね、ナッツって。だからついボクも気が緩んでしまうから、珍しく家族ぐるみのお付き合いなんていう柄にもないことをやってしまったりする。壁がないっていうか人懐っこいっていうか、たまにボクって彼に翻弄されちゃってるかも、と思うことがある。

 実際、変な男なんだナッツって奴は。彼はガサツだからボクの微妙な精度不良にも全く気が付かない。で、わけのわからないうちにいつも勝手にゴールを決めてしまう。そうなんだ、あの男にはパスが合おうが合うまいが全く関係のない話。連携ミスをすべて自分のテクニックの低さと受け止めて、反省し、ボクにペコペコと頭を下げ。そうしながら腹ただしい程のあの打開力でここ一番の土壇場で、一人で必要な勝ち点をもぎ取っていく。ボクの存在なんかいてもいなくても、全然彼には関係のない話なんだよね、いつも。本人はそう思っていないようだけどさ。

 彼の打開力はサッカーに限ったことではない。彼の心根の美しさが、優しい家族を育んでいる。彼特有の醜く感じるほどに不器用でかつ誠実なやり方で、結果的にはもっとも効率よく目的を達成しながら自由に生きている。すべてボクには無縁の世界だ。

 ナッツとボクは同じ年。

 あまりにも違う二人の人生。彼はボクに素直な羨望と嫉妬の目を向けることもあるけれど、ボクは彼に対してそんな気持ちをおくびにも出さない。ちっぽけで馬鹿馬鹿しい憐れなプライドが許さないからね。そんなところからしてまるで違う。二人並べると傲慢と謙虚がそれぞれ服を着て歩いているかのよう。彼の生き方を見ていると自分の器の小ささを痛感する。

 この低迷に喘ぐチームにおいて、彼のカラッと乾燥した夏のような明るさはとても貴重。彼は単に能天気な愚者ではなく、とても繊細で優しく、そしてとてもクレバーな男。より自分に厳しく、冷静に自分の力をジャッジして、出来ることは出来る、出来ないことは出来ないと、一つ一つ時間をかけて整理をしていく。その上で克服していく努力を惜しまない。自分で出来ることは自分で打開しつつ、それが無理なら他人に相談する強さもある。そういう頼れる人材だって心がオープンで素直だからいとも簡単に手に入れてしまう。そうして時には人の力を借り、時には己の力を磨き、着々と自分自身の二つの足で歩く。だから今、ボクには見通せないほどの遥か遠くの美しい世界の中にいる。

   *  *  *

 本来、ザッキーの飼い主にふさわしいのは彼のような人間だと思う。自分を伸ばし、他人を守り、支えて支えられて生きている。まさに、理想の主従のないパートナーシップ。従が欠落したボクには、飼い犬が主になるなど耐えられない。これでは主従のない関係性を構築するのは無理な話。全く不健全な関係だ。

 もう少ししたら適切な状態に移行させよう。そう、あとほんのちょっとだけボクの気が済んだら。あと少しだけ満足出来たら。ボクはナッツという新しい飼い主にボクのかわいい飼い犬を少しずつ引き継いでいくつもり。そうすればきっとザッキーは幸せになれる。おそらく彼が一番手に入れたいであろうストライカーとしてのパッションを、賢い彼はナッツから呼吸をするかのように自然に学び取ることが出来ると思う。

 だって、ボクの手にあるものなんて、百害あって一利なしのくだらない技術ばかり。かわいい飼い犬に誇らしく渡せるものなんて、なんにもありはしないから。無理矢理思いつくものと言えば、マリーシアくらいかな?でも、ボクのマリーシアはズルすぎて、上手過ぎて、卑怯過ぎて。きっと誰もそれを察知することすら出来ないレベル。だからきっと盗めもしない。大笑いだね、ボクの持つ一番の滑稽な技術。

 不健全な飼い主であるボクがやっていることはといえば、今まで選択の誤りばかり。間違いルートばかりを選ぶから、嘘ばかりが上手になってしまった。ボクはかつて現実から目を逸らし、次に完全に目を閉じた。あの時、やりたくてやったのかも、やらざるを得なかったのかもわからないけれど、結果としてはそういう選択をした。あれ以来馬鹿なボクはすっかり棒立ちになって、なにもかもを見送るばかりの“嘘つきでくの坊”になってしまった。それはどれだけ誤魔化しても自分が一番よくわかっている。

   ボクの選んだルートは失敗だ、ことごとく
   おそらく、もうこの先はないくらいどん詰まり

   でも仕方がない
   愚かなボクにはこんなことしか出来なかった
   嘘を付いて誤魔化すことしかやれなかった

   自由に駆けるあの快感なんて、とっくの昔に失っているくせに
   仲間のふりして紛れ込んでいる、ただの偽物なくせに

   ボクのサッカーへの思いは愛でもなんでもない!
   一種の逃げられないオブセッションでしかない!

 馬鹿馬鹿しい遊びでごまかして、もうなにもかもが八方塞がり。なにが悪かったかなんて、理由なんぞ唸るほどある。この愚かなボクに今からでもやれることは?真剣に考えれば考えるほどビジョンが見えない。手立てがない。その強さがない。これもまたいつも堂々巡りだ。頭だけで考えて、体は一歩も動けないままにあとは疲れて眠るだけ。ボクは目を閉じることだけはとても上手だから、すぐに闇と仲良くなってその世界に埋もれていく。ナッツ、ザッキー、自分で光ることのできない月のような偽物は、キミ達を見て目を細めるばかりだ。その日差しを見て、ほんの少しこの世界に明るさを取り戻すだけ。単にそれだけだ。

   ナッツに彼の家族に会いたいと頼もう。
   身を切るほどに痛いのに、
   キミ達家族と過ごす時間はまぎれもなくボクを救う。

   ザッキーにボクのカーサにおいでよと言おう。
   心がざわついてたまらないのに、
   キミと過ごす時間はまぎれもなくボクを救う。

   もうすぐお別れだけど、それまでのほんの少しの間
   ボクは卑怯者だから知らん顔してキミたちの力を借りる

 キミ達はきっと、そんなボクを知ってか知らでか、笑って、いいよ、と請け負ってくれるだろうと思うんだ。

   本当にキミ達には感謝の気持ちで一杯だ
   そして、妬みで一杯だ
   そして、謝罪の気持ちで一杯だ

 キミ達がいるからとても届かない遠い世界をボクも少しだけ感じることが出来る。感じるからこそより一層惨めになる。

 キミ達の世界と自分の世界の差を痛感することで、偽物のボクはボクの惨めな欲望が少しずつ消えていくことを願おう。サッカーへのこの止まらない情熱に似せて作った模造品の感情が、身の程知らずの嘘っぱちの夢だと思い知らせていこう。笠野さんのおかげでほんのちょっとだけボク自身にアディショナルタイムが生じたことに大いに感謝をして。ママゴト遊びを充分堪能できたと納得して!

 そして、ナッツはナッツで幸せに。ザッキーはザッキーで幸せに。ボクは…試合終了のホイッスルをきいて最後のあがきを諦めて、ゆっくり水分補給なんかしながらボクなりの本来の人生の戻っていって…。

   でも、ザッキー、ボクは今穏やかなはずなのにどうにもならないほどに苦しいんだ

   だって、ボクはボールに触れてないと息が出来ない!
   なのに触れていても息が詰まるから!

   だからザッキー、ボクが息をするためにキミにはずっと傍にいて欲しい

   でもボクはやっぱりキミに近付くだけで息が詰まる!
   なのにキミがいないと息が止まる!

   なんでなんだ?ボクはどうしてこんなことに?
   ねぇ、ザッキー、キミには何故なんだかわかるかい?

 ボクの大切なボクのためのかわいい子。フラフラになりながら危ない橋を沢山渡って、今はキミのためだけにETUの王子をやっている。あれから、駄目そうな時は合わせに行くけど、直接狙いに行ったFKは絶対にはずさないと心に誓った。すべては一日でも長くキミの良き飼い主でいられるように。キミの夢を少しでも長いものにしてあげたい。そのためだけに。だから、こうして有り余るほどのおもちゃを用意もして。だってキミがいなければボクはもうとっくに選手として立ってすらいられないくらいに消耗してしまっていて…。

   もともと何も持たないボクが手にした幻の数々を
   一瞬にして失う日はもうすぐそこまでやってきている
   気分良く体が動くなんてもう稀なことで、何もかもがもうギリギリだ

   それでもザッキー、苦しくもこの穏やかな生活をもう少しだけ続けたい
   たとえそれがキミにとってなんのメリットもない日々でも

   そんな馬鹿な夢が止まらない

   キミが大事なボクなのに自分のことしか考えないボクを
   キミは許してくれるのだろうか
   なにもかもわかったような顔をして
   指導をするふりをしてキミに甘える愚かなボクを

   体が重たくて上手に動けない
   ボクの未練が重たすぎて、やっぱり辛くて目を閉じる

   ああ、また堂々巡りだ

[maroyaka_webclap]