楽しい、楽しい、3すくみ
バキ→ジノ→ザキ→バキの追いかけっこのお話。タッツミーは俯瞰で見て3すくみ把握済み。ジーノも把握済み。基本ジーノ現状を楽しんでいますが時々焦れるのでタッツミーはそれを見つけてはお説教します。「全員好きって言えないhtrちゃん」
バキジノザキはネタ系だと楽しいけど現実的になるとちょっと悲しい
赤崎→椿
「どうした?椿…浮かない顔してるな。」
「あ…ザキさん。」
自販機前でぼんやりしていた椿に向かって俺はなんとなく声を掛けた。世話の焼ける後輩は小さいことから大きなことまで年がら年中気持ちのアップダウンを繰り返しているような感じがする。口には出さないけれどこいつの才能は本物と思う。なのに心の有り方が問題だ。俺だって冷静さに欠ける様なところがあるから偉そうなことは言えないけれど、その分だけこいつのつらさと歯がゆさが生々しく感じられてしまう。
「す…すいません。」
「用もないのに謝るなって。いい加減その癖治した方がいいぞ?」
「…う…」
今にも泣きそうな顔をして項垂れている。やれやれと思う。俺はこんな性格だから、力になってやりたいと思っていてもいつもこうだ。こいつと俺は本当に面倒くさい関係だ。
「王子にもさっき、おんなじこと言われて…」
「…あの人またお前になんか言ったのか?ったく…」
この前から俺は椿の恋についての相談を受けている。こいつは素直なところと大胆なところがあって、こんな小動物の様な仕草をしていても意外と凶暴なところがある。こんなタイプがあんな宇宙人みたいな大物を狙うとか、相談された俺も困ってる。なんのアドバイスも出来やしないのに、俺はこいつのことが好きだからついつい話をきいてやりたくなってしまって。
「迷惑だし…俺はずるくて偽善者だって。でも同志なんだそうです…。」
「…なんであの人、お前には…」
「…嫌いなんだと思います、多分。」
「んなことはねーよ。あの人嫌いな奴のことは完全に無視するから。絡んできてるってことはなんかある。」
これは本当だ。王子は気に入らない人間がいたら彼の世界からその存在を抹殺してしまう。目にも見えないし、声も聞こえないかのように振る舞う。ニコヤカな笑顔をして暮らしていても、結構どす黒いところがある。最近はそういう極端な所も薄れてきてはいるけれど。
好きな奴の恋愛相談なんて、アホらしいことをやってるな、と思いながら。王子なんて諦めちゃえよ、なんて考えながら。それでも落ち込む椿の顔を見ていたら胸が痛くて、心にもない励ましの言葉が口をついて出る。こいつに対する俺の感情はいつも複雑だ。シンプルで単純なことを好む俺には珍しいことだと思う。柄にもない、座りの悪い状態に文句がでない。それほどまでこいつのことが好きだってことなのかな。
「…俺、王子のことが好きで。どれだけ嫌われてても、益々好きで。でも、壊れてしまいそうな繊細な人だから、ただアワアワとうろたえるばっかりで。それで嫌われて…。落ち込んで…。でも好きで。」
こいつが自らの恋を語る時の目はとても精悍だ。日頃の落ち着きのない姿とは雲泥の、頼もしい姿。相手が女性なら、こういうのを見せられればイチコロだろう。日頃は女性の我儘に優しく付き合い、いざとなった時にはこんな真摯な形で物事に立ち向かう。それも本人の自覚なしでやるのだから。
ああ、かわいいなぁ、と思う。いい加減さの欠片もなく、いつも真剣に生きている椿。少しでもいい笑顔の時間が増えればと、思わず抱き締めて守ってやりたくなる。こいつにはそんなものなんて必要ないことくらいわかってる。だから実際にはやりはしないけれど。
「お前ん中にいる王子って、いつも思うけど俺の思う王子とはまるで別人だなぁ…。俺はあんな頑丈な人間みたことねーって思うし。タチ悪ぃ。」
「違いますよ、きっとすごく…虚勢張ってるっていうか。強がってるだけで…。甘えるのが下手な人なんじゃないでしょうかね。」
「あんな言いたい放題やりたい放題の男が?あれ以上我儘言い出されたらこっちはたまったもんじゃねーよ。」
飽きれてしまう。俺はあんなに甘え上手というか他人を言いなりにさせる技術に長けた人間は見たことない。傍若無人、無礼、傲慢、身勝手、無精。全部王子の為にある言葉なんじゃないだろうかと。
「それは…多分、王子がザキさんには上手に甘えられるからだと思いますよ?」
「何言ってんだよ。そういう意味なら王子の使いっぱナンバーワンのお前に一番甘えてることになるだろ?」
「…俺は、もっと王子に色々言われたいッス。なんでもやってあげたい。あの人が俺に頼むのはどうでもいいことだらけで。ザキさんに言うのとは全然質が違うから。」
「俺はあの人の言うことなんてきく気ないから最低限のことしか言わせてないだけだ。」
「羨ましいッス。俺、ザキさんみたいになれたらいいのに。優しいし、しっかりしてて。俺みたいに臆病じゃないし。」
「俺はそういうナニナニだったらいいのにって考え方大っ嫌いだけどな。不毛だ。願うんだったら願う前にやりゃいいだけの話。」
こいつがこんな顔をしていると何度でも話を聞いてやりたくなるし、力になってやりたくなる、元気づけてやりたくなる。でもうまくいかない。イラッとしていつも結局嫌な事しか言えない。矛盾しているなぁと感じる。
「ですよね、ザキさんはそうだと思います。羨ましいとか、自分が情けないとか。無縁ですよね?きっと王子も。」
しょげてる。椿は人に裏表があるなんていつも考えもしない。俺なんてコンプレックスの塊だ。虚勢を張ってるのも、強がってるのも俺。甘えるのが下手なのも俺。そして、本当は壊れてしまいそうなほど繊細なのも俺だ。椿は俺を見ない。見る気がないから、俺を理解しない。悲しくなる。でも知られたくない。俺はこいつにリスペクトされたいなんて邪心があるから、バレたくない。でも理解して欲しい。矛盾だ。
「あー、また落ち込みやがって。ともかく王子はお前虐めて遊んでるフシがあるから、気を付けた方がいいぞ?そんなツラばっか見せてたら益々図に上る。」
「そんな言い方しないでくださいよ、王子は…」
「んだよ、お前がいつも二人でいるとアタリが強いって愚痴ってたんだろ?もう弄られなくないって話じゃネーのかよ。」
「…虐めて遊んでるとかそういうんじゃなくて、俺がダメな奴だからです、言われて当然で。そんな自分がいやだって話をしたかっただけなんです、ザキさん。」
「なんだよ、結局ノロケみたいな話だったのかよ。心配して損したゼ。」
「あ。いや、あの…」
結局王子をかばって自分が悪いんだって言い始める椿にイラつく。そんなに王子が好きなのかよ、とこれはヤキモチだ。キレて傷つく物言いをしてしまった。
「すいません、せっかくザキさん俺のこと心配してくれて…。俺、どうしようもない馬鹿で。いつも嫌な話ばっかに付き合せちゃって…」
自分にうんざりしてため息が出ただけなのに。そんな俺の姿に椿は誤解を重ねる。このお人よしが。
「別にいいけどな。まあ、あんま駄目だ駄目だ、嫌だ嫌だ、なんてやんねぇほうがいいぞ?お前を信頼したり、お前が好きだったりする奴等に失礼だろ?もう少し客観的に考えれば?お前がそんな駄目で嫌な奴じゃないことなんて明らかじゃネー?」
「…ザキさん、前も俺にそれ教えてくれてましたよね?俺、馬鹿だからすぐ忘れちゃって、そういう大事な事。」
「人間、片恋慕してりゃ普通以上に不安定になるし自信もなくなるもんだし。しゃーねーけどな。」
「え?もしかして、ザキさんも片思い…とか?」
「っるせー…。誰にも言うなよ?」
「あ…じゃあ、ある意味同志ですね?ザキさん、お互いこの戦いに勝てるように、精一杯頑張りましょう!」
「俺のことはほっとけ、好きにするから。」
笑ってしまった。お前の勝利は俺の敗北だ。
「ハハハ、まあ、俺、助言とか応援とか、とても出来そうにないですしね。心の中で祈っときます。俺、ザキさんの事好きですから幸せになって欲しいッス。でもザキさんなら大丈夫!いい男だから。」
「いい男?言われなくてもわかってるよ、バカキめ。舐めてんのか?」
「そんなことッ!ホントッスよ!俺が女だったらほっとかないッス!」
「ハッ、俺はお前みたいなめんどくせー奴タイプじゃネーわ。」
「ハハハ、そうッスよね?」
少し椿に元気が出たみたいでほっとした。また傷つけたまま話が終わって気が気じゃない夜を過ごすのはつらかった。椿の頭をポンポンと優しく撫でて、俺は帰ることにしたのだった。
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