お花結び

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飼い主 3

高校途中の渡伊→伊大学→再来日して大学編入まで。沢山チート設定。小学生の頃アンニュイだったジーノは大学では反転してアンチアンニュイに。原作にあるようなアクの強いジーノの個性は生まれつきではなく徐々にこんがらがって込み入ってきちゃった結果という解釈です。王子、医療関係者、両親、祖母、その他モブ、セリフない人も含めて大人数。

大学時代~ヴィラの原型

 笑わそうと冗談を言えば人は笑い、怒らそうと嘲笑すればプンプンと怒る。泣かそうと思えば簡単に涙を流し、甘やかせば身を委ねてくる。ジーノは人との距離を詰めるのがドンドン楽しくなっていった。こんなに簡単な話だったっけ?と笑う。

 そんな気持ちがエスカレートして、次第に自身の元々のセンスと知識を悪用することも覚え始めた。男女を問わず周りの人間を奴隷のように簡単に支配して、時に優しく、時に乱暴に、様々な形の罰と報酬を交互に渡して骨抜きにしていく。無意識にやってきたことを意思を持って計算してやるようになり、そうやって少しずつ少しずつ人の心を掌握し振り回す。意図的に戦略的に緩急をつけて人々を翻弄しながら絡め取っていくような、詐欺師のような技術を身に着けていった。ジーノの言葉は緻密な計算とそのセンスにより魔法のように相手を思いのままに揺らすことが出来るので、どんな形式で交流を楽しもうと関係が破綻することなどほぼなかった。最後の最後に優しい笑顔で笑えば大概のことは殆ど許してもらえた。嬲られたがっている人間を見つけてとことん嬲ってやることなどは、ジーノにとっても一番お気に入りの交流で、相手自身も気が付かない性癖を発見しては次々に開発して遊んでいくようになった。

 こんな風に、イタリアにいるジーノと日本にいるジーノは、まるで別人のように性質が変異していった。日本語になると途端に素直さがなくなってしまう不思議な癖を持つジーノは、そういうことに誤った解放感を感じた。ああ、ボクの言葉や知略はこの国で確実に通じてる、と。 

 昔大人たちに可愛がられていた頃の、憂いを帯びた優しいだけのひ弱なジーノ人形はもういなかった。美しくて優しくて上品さがありながら、その奥に騙されたいと願ってしまうほどに巧みな悪徳を感じさせる、人を強烈に惹きつける魅力あふれる奸智に長けた男。そんな典型的なイタリア風のプレイボーイがそこにはいた。

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 ジーノはその笑顔で自身が望めばどんな人間の隣にも座ることが出来る才能があった。その流れで怪しげな業界の人脈も次第に広がり、背徳的な夜を過ごす日も増えていく。この頃ジーノがよく入り浸っていた場所は、完璧に法から逸脱した世界。自分はそこで法に触れるギリギリのラインに慎重に身を置いていた。勿論一斉摘発などあれば一巻の終わり。でもそのスリルを、綱渡りのように楽しむことがやめられなかった。

 高級秘密クラブとでも言えるような会員制の集まりなどにも極自然に紛れ込むようになった。そこでは、ジーノの奸計によって様々な人間が企業のトップシークレットに近い情報なども無意識のうちに引き出されてしまったりもしていた。ブラックな集まりであればあるほどに、人には言えない悩みやストレスを抱えている人間が沢山集まっているものだ。彼らは基本的に人間不信でとても警戒心が強く、そういうタイプほどジーノはそそられた。

 人には言えない秘密ほど暴露欲に掻きたてられていることを知るジーノは、その欲望を煽る技術に長けていた。だから心を擽ってはいとも簡単にそれらを引っ張り出して、そうやって楽しく遊んでいた。知らぬうちに策略にはめられた獲物達は、次第にジーノの手をすがりつくように求め始め、ジーノはその手を一つ一つ手を取って優しく包み込んだ。ジーノは人のタブーに踏み込む行為が楽しいだけで、情報そのものに興味があるわけでもなんでもない。だから勿論秘密を口外するはずもなく、その傾聴の技術は重荷を背負う人々を軽くして安心させるだけの意味を持ち、その結果彼らの心を次々に救っていくことになった。でもジーノにとってはやっぱり小学時代のお人形遊びの中の性行為のような、中学時代のキス狩りの延長のような、そんな安易な行為の位置づけであった。

 怪しげな場所で知り合った人脈たちのところにいると、なぜか不思議とジーノの元に金が集まり、物が増えていった。受け取るのもなんだか本当に金銭目的の詐欺師みたいで下劣な感じがしていたけれど、受け取らないと話がおさまらない場面が本当に多かったのだ。そんなものに興味のないジーノは一番くだらない形でそれらを消費することにした。ジーノはそれらを一旦受け取っては捨て、受け取っては捨てを繰り返す。現ナマの消費に関しては金額にかかわらず欲しいものを見つけてはすぐに手に入れ、そして一過性の消耗品としてすぐ捨てる。そんな無頓着な浪費を繰り返した。こういう退廃的な行動にこそ深い快楽を感じた。

 ただ、本人はそんなつもりでありながらも、趣味やセンス、嗜好といったものがかなり個性的で洗練されていたので、ジーノが欲しいと欲求する物には深い意味を持ち合わせていた。受け取りたがらないジーノに無理矢理物を受け取らせるためには、必ずと言っていいほど手を入れ市販品にはない独自色を出さねばならなかった。受け取りたくないがためのジーノの「せっかくだけど~が~じゃないから。ゴメンね」と言う様々な面倒臭い難癖は、商品開発における重要なヒントになることも多かった。人々はこぞってジーノに貢ぎたがり、そしてその過程で自然にビジネスチャンスをものにしていくことになった。

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 そうやって本人が意図しないほどの人と金がジーノの周りを取り巻くようになった。

 ジーノの先を見通す目は特殊な情報を沢山手に入れることで世の中のあらゆる戦略や動向を見抜いていったし、また人間の本質を見通す目は見抜かれた人々の持つストレスの根本への干渉と解消へと繋がることも多かった。ジーノにとっては遊び半分の彼らへのそうした気軽な助言や行為は、結果的に窮地に立たされていた彼らを救いだす、とてつもない力になった。小さい頃から変態性癖も含めてなにもかも笑いながら受容してきたジーノにとっては、本当にたわいないことだったのだけれど。
 そんなジーノにしか出来ない様な相手のすべてを包み込んで一方的に甘やかすような働きかけは、過酷なこの世にあってあまりにも特異な現象であり、救われた人達は皆当然のように彼に心酔していく羽目になった。ジーノは相変わらず人肌は人肌であり、女社長もキャバ嬢も、政治家もチンピラも、すべて同じようにフランクに且つフラットに分け隔てなく扱う。勿論受け取ったものは手作りの料理でも桁が違うような不動産でもその心根にある気持ちを受け取る意味で完全に同等に扱っていた。看板やポジション、レッテルの重圧に負けそうな彼らは、そんなジーノの前ではすっかり素顔になって裸になってしまって、ゆったりとした時を過ごすことになった。すべてを脱ぎ捨てる優雅な時間がそれらすべての人達を自身の本質に立ち返らせて、過酷な世界に向かっていく明日への活力を得る仕組みになっていった。

 ジーノから得られた特異なギフトに対する、彼らの深い深い感謝の現れである財の荷物。捨てても捨てても増えるそれらは、この時すでにジーノが一生遊んで暮らせるほどにまで溢れかえっていった。そんなものが欲しくてやっているわけじゃないんだ、とジーノが言う。でもそう言えば言うほどに、彼らは無欲な男に心酔し、ジーノの為ではなく自分の為なんだとプレゼントを用意する。結局最後には彼らのそんな願いを叶える為にジーノは受け取り続けることになったのだった。意識なく沢山のモノを引き寄せる、そんな磁石のような力を当たり前のように持つ男だった。天性の人たらしと言えた。

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 こうして、ジーノは砕け散った夢のあった場所に、ヒステリックで自身を吹っ飛ばすほどの苛烈な刺激を詰め込むようになっていった。

 今手にしている快楽は目が回るほどにエキサイティング。心と知略を使って人を嵌め込み、体だけになって人々を貪り続け、その時間に深く酔いしれ、息つく暇もなく次々に獲物達を手中に収めていく。この遊びはやれどもやれども飽き足らない。そんな自分をジーノは自身で笑いながら、さらに止めどもなく人を狩り続けていた。群がる獲物達に不足する日などなく、体がいくつあっても足りないくらいの日々を過ごしていた。

 これらの行動もまたサッカーに関するありとあらゆる知識欲が生じたのと同様に、砕けた夢のカケラが背中を押すサッカーへの情熱が変化した形の一つだった。本人が気づきもしない、ピッチ外で行われる疑似的なサッカーのプレイの表現体のひとつであった。あらゆる世界に飛び込んでは無意識にミラクルのカケラを探していただけだった。

 ジーノの周りには感謝と愛が一杯だったけれど狩り遊びがただ楽しいだけでジーノにはなんの意図もない行動。ジーノは感謝と愛を受け取ることなく、目に見える物質のみを見つめて一過性の消耗品としてなにもかもを使い捨てていたのだった。そうやって何を探しているのかも自覚のないままに外ばかりを見続け、一人になって己の現実に立ち返る時間など一寸もないほどに自身も知らない何かを求め続けていたのだった。

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