お花結び

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愛情たっぷり?酒酔夢

お花見三部作の続き。泥酔して勢いのままエチーしてるだけのジノザキ。ふざけたり、真顔になったり、喧嘩したり、二人とも自分だけはシラフなつもりですが、おんなじくらい頭のネジぶっ飛んでます。

        ジノザキ

 ついさっきまで赤崎をからかいながらケラケラと楽しげに笑っていたジーノが、今はその時とは全く違う色艶を以って赤崎に対峙していた。冗談めかしたジーノのあの時の台詞は、少しずつ言葉通りの意味を帯び始める。

   (ボクの全てをキミの 全身 に教えてあげるよ)

 赤崎は今まで知らなかった“夜”の世界を少しずつ体に刻み込まれていた。初心な男は小刻みに震え、時に跳ね、自身でも恥ずかしくなるような甘えの喘ぎをこぼしながら己を追い詰めている張本人の首元に力なくしがみつく。するとこれ幸いとジーノはそのまま沈む様に身を寄せて首筋に顔をうずめにかかるので、その長い前髪がさわさわと弱い肌をくすぐり赤崎は更にジーノに追い詰められることになってしまった。

「ふ…ぁ…」

 最初こそ激しく抵抗してみせた赤崎だったが、睦言を繰り返される度に思考は散る花のようにフワフワと散逸を続け、今はもう自身の無防備を惨めなほどさらけ出していた。ジーノはそんな酔夢の甘露を足指の先の先まで堪能している瀕死の獲物を観察しながら、さも愉快そうにクスクスと笑った。

「駄目…待ッ…」
「…ここ弱いの?…てかさ、なんかキミって変な色気あるねぇ?フフフ、いいかもしんない」

 耳を舐る。軽く食む。囁きと笑い声が熱い吐息となって耳元を舞う。そんなジワリジワリとした行為は続く。とどめたりえない浅い細かい切り傷のような淡い刺激が何故か時折ズクンと陰部に響いたりもする。それもまたジーノの計算しつくされた所業のせいだった。あらゆることが偶然ではなく意図であった。

「やだな、もうそんなに興奮しちゃって…まだだよ?…もう少し遊ばせてくんなきゃね」

 一般的にアルコールを摂取すると基本的に様々な感覚が鈍麻する。人が飲酒を好むのはこの麻痺の作用により肉体的なそして精神的な緊張が一時的に弛緩し、一種の癒しを体感出来るからだとも言われている。

 飲酒の際、こうしたリラクゼーションの他にモヤモヤとした欲情も同時に高まるケースがあるが、それは判断能力が鈍ることで現実と幻の境界が曖昧になりイマジネーションの世界が深く広がっていくためだ。脳思考所以の快楽はもっとも強烈に人間の欲情を補填する。散漫が興奮を呼ぶ。偶然の積み重ねで結果的にそんな皮肉を生む場合もあるわけだ。
 一方、射精のメカニズムで重要な役割を果たしているのが集中と覚醒だ。これは鈍麻の対極のもの。つまり泥酔した状態で行う性行為というのは最初から大きな欠落を持っていることになる。ようするに思考起因の欲情そのものは思考の鈍麻により日頃以上に強烈になるものの、同じ鈍麻が反対に物理的な性機能を著しく阻害し達することが困難になる。この大きな矛盾した二つの結論が赤崎を身悶えするジレンマの中に閉じ込め続けていた。

「く…」

 快とも不快ともつかない感触が肌を這う。計算ずくの謎の刺激だ。鋭敏な部分、鈍い部分、その一つ一つをしつこく念入りに滑らせる嬲りの指先は赤崎の中に想定外の強い波を作り出す。

 女性のようなまろやかさのない体。硬質な筋肉。浮き立つ血管。感じれば負けだと思っているかのような強情で偏屈な態度。今回のこの風変わりな獲物の見せる様々な特性がとても新鮮で面白く、ジーノは時が進むにつれて必要以上にドンドン遊びに夢中になっていった。酔った勢いとはいえ思わぬ楽しみを手に入れたと上機嫌だった。

 岸壁に強く打ち付けられ砕けてしまいたくなるような衝動が襲う。なのに肝心なその瞬間を迎える直前にジーノの指先はいとも簡単に対岸の果てまで赤崎を連れ去ってしまう。イきたくても、イきたくても、ジーノとアルコールによる翻弄の責め苦はそれを許さない。ジーノの軽い戯れのはずの所作によって、赤崎の理性は根こそぎ食い荒らされていくばかりだった。もどかしい、もどかしい。赤崎の頭はもうその瞬間を迎えることで一杯になっていた。それでもご機嫌なジーノは解放を待ち望む赤崎のソレを一切触れようとはしなかった。ただそこ以外の箇所を、やはりジワリジワリと堪能し続けるだけの、長い長い前戯だった。

 赤崎はジーノに性的な欲情を感じる度に、男同士のセックスの意味について想像と考察を続けていた。精神的な成就とはまた別次元の部分として。
 形は男女のそれによく似ているがそこにはただの排泄があるだけで、疑似的な生殖行為は何一つ物を生み出しなどしない。排泄の快楽は愛も生まない。何も起こらないそんな行為の中の愛撫など所謂愛撫という呼ぶことすら厭われる。繰り返そうとも生み出すもののない衝動的な欲情は自慰行為に酷似した単なる欲情の解放でしかなく、赤崎にとってみればそんなものは無価値に思えた。そもそも花粉と花粉同士で受粉を願うなど全く馬鹿げた話で、実ることのない摩擦と接触の繰り返しの世界は建設的な想像を試みようとも必ず最後に虚無感を以って終了した。

 男同士のセックスとは愛すべき相手をちっぽけな性玩具のようなものに貶める行為。これが赤崎にとっての結論だった。

 だが今はどうだろう?自分とジーノの行っているそれは、たかが排泄行為と呼ぶにはあまりにも大変な作業と化していた。射精を許さぬ拷問に近い愛撫は酔いとともに四肢を痺らし、無意味なはずの行為が嬌声とともに赤崎の未知なる個性を生み出していた。寧ろ欠落を感じる物足りない肉体的な欲情の数々は反対に精神の溢れかえる充実を体感させ、想像の枠を超えたこの世界がジーノの言うところの「キミの知らないボクの中にある愛の世界」であるならば、あまりに壮大でもはやそれを受け止めるどころか受け流すことすら出来るものではないと感じていた。このままでは壊れてしまう。いや、もう壊れ始めている。王子を、そしてその彼を相手にするセックスというものを甘く見ていた。完全に身の程知らずだった。そんな風な思いが浮かんでは消えていくので、自尊心はズタズタになり一つも今を楽しむことが出来ない状態になっていった。

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      ジノザキ