絆に結ばれて 1
渾身のイチャ甘ジノザキになる予定。「仲良く遊ぼう」はゲス顔で書いた「沢山遊ぼう」と対。ジーノ長いトンネルを抜けた結果、中からぴょこんと子供が出てきてしまいますが、心を痛めた人は回復期に悪化→赤ちゃん返りすることがあるそうで一応それを踏襲しています。ジーノの回復とザッキーの成長はまだ始まったばかりです。
それは恋のやり直し
カウチでグダグダ、退屈なテレビ。CMに入ると絡みつくように凭れかかって王子が言う。
「ねぇ、言ってよザッキー」
最近、いつもこの調子。
あの思い出すも壮絶であった夜の俺の言葉、所謂俺の王子への思い。それが彼の凍り付いていた心をゆるませたのは現実なんだろうけれど。そういうものは緊急事態だからこそ火事場の馬鹿力的に発動したものだったわけで、日常でそれを口にするのは大変恥ずかしいし結構辛い。なのに王子はそれを問う。溢れて問わずにいられないという感じでありながら、もう一方で困惑する俺の姿を見ては楽しんでいる気持ちもまたあるんだと思う。
「ボクのこと、好き?」
困ったことに、聞かれるのが正直ウザいと思いながらも、それを問う王子の姿とそれを欲しがる王子の言葉が、こんなにも蕩かすように俺の心を擽る。だって彼は注目を浴び慣れている男。そして注目されるその理由、自身のもつ絶対的な人的魅力をしっかりと自覚している男。なのに、そんな王子がこんなにも他者の、いや、俺相手だからこそそれを問いたいんだ、我慢できない、と、そんな目でこんなにも言葉を欲しがっている。もう既にわかりきっていることを求める理由は、俺からの言葉に触れることで彼が大きな喜びを実感出来るからで、何故王子が嬉しくなるかと言えば、そこに彼からの俺への溢れんばかりの思いがあるからに違いなかった。
かつて、王子は俺に何度となくこう言った。
「キミは本当にボクのことが大好きなんだね」
当然のことだと、あまりにも高慢な態度で、しかも半ばうんざりといった風情で彼はそれを言った。ともあれ、それは彼の中で、そして現実的にも、“他人から愛される”という現象は飽き飽きするほど確定的なものであり、だから普通に俺からの言葉など彼は必要としなかった。俺は確かにその当たり前のこの心理状態について、彼同様当然だとは理解していたが、そんな風にさも当たり前のように言われることは少し悔しかった。でも、それが彼の中で当たり前であればある程、極自然に彼が俺の気持ちを把握して口にせずとも普通に受け入れてくれていることが実は嬉しくもあった。
つまり、彼は相手が男だろうが女だろうが関係なく愛を受け入れ慣れており、随分昔から俺の彼への思いを普通のことだと認知していた。俺が彼に対して欲情してしまうことすら拒絶感を持たないままに理解し、ご褒美だと言っては行為し、そしてそのことに関して特段俺からの言葉など不要という一貫した態度でやってきていたのだ。それが今は。
「ね、好き?」
愛の言葉を欲しがる女はウザい。正直、昔から友達の彼女とかの話を聞いたりする度に常に思っていた。邪魔臭い。面倒臭い。関わりあいたくない。そういう感じの話をしたことはもはや数限りなく。当然、当の王子本人ともこの話で盛り上がりすらした記憶もあるほどで。辟易するように笑った、それを言われ慣れ過ぎている彼の表情を、俺は今もなお鮮明に覚えているくらいで。
でも、その辟易王子が今、これを俺に問うのだ。二人にとってあれだけ困り事であったはずの行為が、何故か面倒な事ではなかった。返事をしなければならないことが恥ずかしいし辛いけれど不快じゃない。クルクル変わる王子の矛盾、知れば知るほど、俺は彼の魅力の虜になってしまう。だってこんなにこの言葉を発するのが似合わない男はいないと思う。愛を受けるのが当然な男が愛を問う等、まるで気の利かないコメディのように陳腐、でもそれが不思議に愛おしい。
「だー!もう、王子、しつこい!」
「だって」
「昨日も、さっきも言ったでしょう?」
「さっきはさっき」
「今もさっきと一緒だろ!30分も経ってねぇし!」
「そりゃそうだけど」
「ったく、どうしようもねぇっつーか、はぁ……」
溜息交じりに窘めるように王子を見る。けれど彼は昔も今もとても我儘で、俺のいう事なんて聞いてくれない。カウチで俺に絡まりながらポフンと俺の胸に顔を埋めて、しょぼくれたような態度をとりながらも、暫くするとめげもせずにまた
「でも、好き?」
チロリと俺の胸元から目だけで見上げるようにキョトリとした視線が、何度言われても全く自重しない小さないたずらっ子のようでタチが悪い!何をしても許されることを知っている目だ。これは。
だから、ムッとして俺が意地悪返しに、
「じゃ、王子は?」
と問えば、ふわりと身を起こして返事のかわりに俺の唇をパクリと噛んだ。
「痛ッ」
「嘘、痛くしてないよー?」
キュッと口を尖らせた後にすぐさま王子は楽しそうにクスクスと笑い出し、やはり愛の言葉を囁くかわりに啄むようなキスを5回、そしてうっとりと悩ましい表情を浮かべたままにねっとりと長く深いキスを続ける。
「ずりぃよ、王子」
俺がもうあやふやになってきてしまった意識の中でそう呟けば、王子はまたクスクスと笑いながら、そうだねゴメン、と返事をした気がした。その続きの言葉はもう聞こえなかったけれど、でも、俺らにはそんなもの必要ないくらいに深く甘く絡みついてしまっていたので、しつこい王子の質問はようやく打ち止めになったのだった。取敢えず、今日のところは。
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