俺と王子と情熱と
時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。
Adventus 16
目の前にはさも美味しそうなディナーが並ぶ。それを差し出す王子は平気で他人に毒を盛れる男で、でもこの甘い香りがたまらない。
「惹かれあったら求め合うのも当たり前だとは思わない?普通の事だよ。余計な事なんて考える必要はない」
踏みとどまる為の言葉をかき集めながら、俺はもうすっかり彼のディナーに涎を垂らす。目を見て話せば飲み込まれる。でも目を逸らしても言葉が嬲る。嘘つき村の住人は全員、自分の事を正直者と保障する。そんなのわかりきった話だった。
「キミは額面通りボクの言葉を受け止めればいいだけだ」
「好きでもない相手に愛を囁くなんて馬鹿げてる」
「好きでもない相手にならね」
「そんな事言われても全然嬉しくなんかありません。だってあんたはそもそも馬鹿げた人だから」
「ザッキー」
「あんたは馬鹿げた事でも平気な顔してやれる人だ。いや、馬鹿げた事が好きな人だ。違いますか?」
「まあね。そういう性分だって事は否定しないさ。でも、それとこれとは話が違うだろう?」
「一緒ですよ」
「違うよ」
「違いません……誰かとセックスしたいってんならこんな馬鹿な真似しなくても王子ならいつでも出来るじゃないですか。ちょっと街に繰り出してニッコリ笑顔の一つでも投げつければ、それこそ簡単に何人でも」
「そんな事よく言えるね。たった今こうしてキミに不自由させられてるボクに向って」
「!」
「なら、ザッキー、どれだけでもキミに笑ってみせるよ。そうしたら今すぐボクの事受け入れてくれる?」
「いや、だから違うそうじゃなくて!王子、もうやめましょうよ、こんな下卑た遊びなんか」
すると王子が俺に隠れて、小さい溜息をついたような気がした。もううんざりと言わんばかりのその態度が、俺の心を寂しくする。
「んだよ」
「そんなにボクと寝るの、嫌?」
「い、嫌に決まっ」
「静かに。駄目だよ、即答しないで。これもさっき言ったね?ややこしいのはもうゴメンだし、黙ってボクの話を聞けって。よく考えるんだよ?賢いボクの番犬ザッキー」
抑えたとても静かな口調。けれどその言葉は絶対的な服従を要求する強い命令のそれだった。
「今からボクが話をする。その後でザッキー、もう一度聞くよ?これで最後だ、よく考えて答えるんだよ?」
「全部聞いた上で、それでもキミが本気でボクとキミの事丸ごと全部否定するつもりなら、」
「キミの愛は嘘だと言い張り、ボクの愛も踏みにじる気なら、」
「どうしても嫌なら、絶対駄目だと拒絶するなら、」
「王子?」
「……それなら、潔くこの気持ちを処分する為の努力を始める」
「しょ、処分?」
「仕方がないものね。失恋なら。難しいけど、頑張るつもりだ」
「でも……こんなボクの辛い体験ですら、キミは嘘にするのかな」
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