俺と王子と情熱と
時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。
Adventus 13
「ボクね、キミの事が好きなんだよ。キミが思うより、ずっと、ずっと」
それはとても深く、俺の心に沁みとおる声。
「ボクはね、いつもキミの事だけ考えてる」
本を読んでテレビを見て。俺の前でいつも上の空の移り気な男が、キミだけだよと愛を語る。その姿から先程のイタリア映画の場面が思い出された。言葉は殆どわからないながらも少しだけ映像から理解出来た事はある。つまり、あれは女が男の多情を知りながら愚かなままにその身を委ねる物語だった。騙す男、酔う女。二人の行く末がどうなったのか。タイトルもわからないこの俺には、恐らくこの先知る由もない。
「もうそれしか考えられないんだ。ねぇ、わかるかい?ザッキー。こんな気持ち」
高揚する心の片隅で俺は、王子のあまりにベタで心得た態度にほんの少しだけ呆れていた。
(場慣れし過ぎだろ王子。今まで何回こういう事やってきてんだか……まぁ、知りたくもないけど)
随分とこなれた、率直が過ぎる直球の。それでも彼がよどみなく言えば効果は抜群、その少し抑えた口調も相まって相手をいとも簡単にとろけさす。この幸せな夢はきっと悪意で出来ている。とても嬉しく、そして悲しく。自分の気持ちがあやふやだ。
「……ザッキー?聞いてる?」
「聞いてます、王子」
「よかった」
(あ、)
ゆっくりと王子の体が近づいてくる。
「ねぇザッキー、なんだかちっとも上手く言えない。こんなセリフ、物凄く陳腐だよね?でも、言いたい事わかってくれる?」
僅かに後ろに姿勢を逸らせば、彼は更に近づいた。膝と膝がコツンと触れて、なんだかまた少し体が強張った。
「ボクの心はキミだらけで、だからキミの心も体もボクで一杯にしたいと願ってしまう」
脳裏をよぎる王子の暗喩。心も、体も?気付けば膝が震えていた。気取られるのが怖くて身じろぎすれば、王子は触れ合っていた互いの膝に目を落とす。
「いや、これは、あの……」
隠しようがなかった。彼はそのまま黙ってしまって、その沈黙に震えが増す。
「そっか、……だね」
「……王子?」
小さくて聞き取れないその言葉に、俺は疑問を投げかける。
「あの……、今、なんて?」
「……」
「王子?」
「あぁ、怖いんだな、って」
仄かに物悲しい響き、その事が俺の胸を切なくさせた。これは紛れもなく罪悪感だった。これが彼の演技ならば大した千両役者だとあきれもし、その裏側で本当に彼が傷付いてしまっているとすれば、俺はなんて事をと自戒する。
「ねぇ、ザッキー。キミはそうやって、ただひたすら恐怖の中で現実から目を背けてボクの心からもキミの心からも逃げ惑うばかりで」
なんでもお見通しの王子は、まるで俺の心の中にある報告書を手に取って順に読み上げるようにゆっくりとそれを口にする。
「気後れと狡猾と猜疑心と、キミはあらゆるものにそうしてまみれて。キミらしくないようで、とてもキミらしいようで」
「……」
「なんていうか、」
彼は少し強めに手を握る。
「そうしてキミは……ボクも同じように、ボクらしいような、ボクらしくないような、そんな存在に変えてしまうんだよ」
繋いだ両手を彼の胸元までゆっくりゆっくり導いて、目を閉じ、まるで祈る様にこう続けた。
「本当にこんな事、ボクとしても初めての事で、」
「……」
「苦しくて……とても切ない」
シャツ越しに伝わる彼の心音は俺と同じにトクトクと激しく、抱き締めるように彼は俺の両手を包んで、そのままの姿勢で時が止まった。
「どうか、伝わって。こんなにもキミが好きだって事」
「王子……」
「どうか、知って。ボクもまた」
「キミと同じに様々な負の感情にまみれながらも、」
「逃げ出したいくらい苦しみながらも、」
「それでも、キミを心から大切に思ってるって事を」
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